奥羽興産
- 【業務内容】
- 不動産
- 【利用用途】
- 売上実績の集計、顧客管理
株式会社奥羽興産は熊本市で1998年に創業し今年で25年目を迎える不動産会社だ。社員数は42名。不動産の管理・賃貸・売買から土地開発など幅広く手掛けている。kintoneは2014年に導入されていたものの、データを入力するだけの状態で、業務改善まではいたっていなかったという。そこで業務改善推進の役割を担う経営企画部に異動し、kintoneを担当することになった河邉氏に話を伺った。
河邉氏は入社当初、不動産賃貸・売買を担当する営業部署に所属していた。顧客対応の際、アンケート用紙に記入いただく。対応が終わると、それをkintoneアプリに入力するという業務フローになっていた。
「『アンケートを取ったらkintoneに入力してください』と言われるので、なんとなく使っていましたが、なんのために入力するのかは分かりませんでした。でも入れていないと店舗に催促の電話がかかってくるんです。面倒くさいなと思いながら、仕方なく入力していました」
営業の現場では申込みを獲得し売上を上げるために日々活動している。当然ながら営業活動に重きを置いているので、利用目的のわからないkintoneアプリの運用や使い勝手など正直どうでもよかった。入力を求められることに不満を持っていたが、その不満を伝えることすら面倒に感じ、まさに腫れ物のような存在だったという。
そんな彼女が入社4年目で業務改善を担う経営企画部に異動となり、kintoneの担当者となる。前任者が退職していたため、欠員状態での異動。わからなくなったパスワードを探すところからのスタートだったという。しかし担当になったからにはそもそもなぜkintoneが導入されたのか知りたいと考えた河邉氏は、奥羽社長や経営企画部の櫻庭部長にkintone導入の経緯とそこにあった想いを聞いた。
「社長の奥羽はもともと、現場の負担を最小限にし、事務作業を減らしたいと考えてkintoneを導入したそうです。そして上司の櫻庭部長には、『kintoneで社員全員で情報共有して、見やすいグラフやデータで会議をしたい』という構想があったことを知りました。kintoneでこんなことができるのかと感動しました。そして、資料作成の手間が減る!と思いました。
その後、河邉氏は社外のkintone勉強会やセミナーに参加する機会が増えていった。他社など外の世界のkintoneを知ることではじめて「これまでの奥羽興産の運用方法は効率が悪かったのだ」ということに気がついた。「kintoneを使って奥羽興産の業務を改善したい」と考えた河邉氏は顧客アンケート業務の改善に着手する。
奥羽興産で実施していた従来の顧客アンケートは、手書きでアンケートに回答してもらい、それを営業担当がExcelとkintoneアプリにそれぞれ入力し、さらに会議用の報告資料を作成するために また集計用のExcelを使用していた。紙、データ入力用のExcel、kintoneアプリ、そして会議報告資料用のExcelというまさかの四重管理だった。
河邉氏はまず転記作業をなくしたいと考えた。「フォームブリッジ」(※株式会社トヨクモ社が提供するkintone連携サービス)を使ってアンケートフォームを作成し、kintoneアプリに回答データを直接登録できるようにした。店頭ではお客様に手書きではなく、タブレットでアンケートに回答いただくようにした。
続いて会議報告資料だ。会議は毎週開催されるため、各店舗の店長が資料作成のために残業していた。そこで河邉氏は「krewDashboard」(※グレープシティ株式会社が提供するkintone連携サービス)を使って会議で使用する集計データをkintone上で表示できるようにした。集計や資料作成の手間がなくなったのはもちろん、リアルタイムでグラフのデータが更新されるようになったのだ。
「アンケートの紙からフォームへの切り替えに店舗のスタッフはとてもスムーズに対応してくれました。一人1台ずつiPadを支給しているので『持ち歩けるし、便利だね』ととても好評です。会議資料の代わりに導入した『krewDashbord』のグラフには『こういうふうにアップデートしてほしい』『こういうデータ出せる?』といった要望まで来るようになりました。業務改善したことで、kintoneに対して社内の関心が高まって、声があがるようになったのがとても嬉しいです」
誰もが口出しするのを避ける腫れ物のような存在だったkintoneを活用して業務改善を実現した河邉氏。同氏が考えるkintone運用の3つのポイントを聞いた。まず1つ目は「その課題はシステムが解決できるのか」を考えること。河邉氏が経営企画部に異動してきた当初から上司の櫻庭部長に繰り返し言われてきた言葉でもある。
「要望はたくさんあがってくるけれど、すべてをいきなりシステムで解決しようと思わなくていい。業務フローの見直しが必要な場合も多い」
河邉氏自身も営業の現場経験から、システムがすべてではないという意識があり、これをいつも念頭において考えるようにしている。
2つ目は「100% を目指さない」。kintoneのアプリをどんなに作り込んでも現場で使ってもらえなければ意味がない。100%完成の状態でなくても「改善していきたいので、使ってみて意見をください」と伝えてリリースする。こうすることで現場の要望を反映しながらアプリを改善していくことが可能となる。
最後に「なぜその項目に入力するのか」を明確に伝えることだ。入力のような事務作業は営業にとっては優先順位が低く、後回しになりがちだ。また目的が理解できないと適切に入力してもらえないケースも出てくる。「入力したデータが集計グラフに反映されることで、店舗や自分自身の売上の可視化ができて評価にもつながりますよ」というように、目的をしっかり伝えるよう心がけているのだ。
「最近は現場から業務改善について意見が寄せられるようになってきました。kintoneのスレッドでコメントを受け付けていますが、内線電話がかかってくることもあります。アプリの使い方や設定方法について相談に乗っているうちに『自分でやってみるね』と言ってくれるメンバーも出てきて、とても助かっています。これからも業務改善を続けて、奥羽興産を働きやすい会社にしたいです」
さらに奥羽興産がkintoneを活用している評判を耳にした聞いた同業他社から見学したいという声も寄せられているという。奥羽興産の業務改善が不動産業界に広がっていくことを期待したい。
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