
沖縄電力
- 【業務内容】
- 沖縄県全域への電力供給を中心とする総合エネルギー事業、ほか
- 【利用用途】
- 各種申請ワークフロー、資産管理、労務関連の申請管理、基幹システムとの連携 など



沖縄電力株式会社では、長年利用してきたグループウェア(Notes)の刷新を機にkintoneを全社導入した。全従業員が日常的に使う「ワークフロー(申請業務)」を入り口に浸透させ、現在は市民開発基盤として根付いている。導入当初は情報システム部門がアプリ作成を主導する厳格なガバナンスを敷きつつ、社内勉強会の開催や仕組みの整備を通して、段階的に市民開発を推進していった。その結果、現在では現場の担当者が自ら業務改善のアプリをつくる文化が広がっている。この取り組みについて、経営戦略本部 デジタルイノベーション推進部 企画開発グループ 主任 宮城久俊氏に話を伺った。
■お話を伺った方
経営戦略本部 デジタルイノベーション推進部 企画開発グループ 主任 宮城 久俊氏
沖縄電力株式会社(以下、沖縄電力)は、離島を含む沖縄県全域に対し、台風の常襲をはじめとする厳しい自然条件のもとで、電力の安定供給を担い続ける総合エネルギー事業者である。同社は近年、中期経営計画に掲げるデジタル化の考え方「まずやってみる・変えてみる」のもと、DXの推進、業務プロセスの見直しにより、経営基盤の強化に努めている。同社では社内の情報共有基盤として、Notesを長年利用してきたが、運用やデータ活用で課題が顕在化し、そして何よりサポート終了が控えていることから、2017年ごろから新しい基盤への刷新を進めた。
「Notes上に各部門が自由にアプリを作成してきた結果、その数は100個以上にまで膨れ上がっていました。似たような名前のアプリが乱立し、機能も重複している、ということが珍しくありませんでした」と宮城氏は当時を振り返る。このような状況に至った背景には、社員一人ひとりの「自分たちの手で業務を改善したい」という強い意欲があった。Notes上のデータベースやExcelのマクロ、RPAなど、そのときどきに手の届くツールで現場は工夫を重ねていたが、その意欲に対してツールが追いついていなかったのである。

経営戦略本部 デジタルイノベーション推進部 企画開発グループ 主任 宮城 久俊氏
新たな情報共有基盤への移行にあたり課題となったのが、各部門が作り込んできた数多くの独自の業務アプリケーションをどう再現するかであった。既製のグループウェアの機能だけでは、こうした作り込まれた業務を再現しきれない。 そこで同社が選定したのは、業務に合わせてアプリを柔軟に構築できるkintoneだった。
もう一つの理由は、純国産ならではの親和性だ。宮城氏は「細かい部分まで日本語でフォローされ、ドキュメントも充実している点は、現場に展開するうえで大きな安心材料でした」と語る。 新情報共有基盤kintoneへの移行は、2019年に完了し、従来と同じ機能を実装するとともに、いずれ求められることを予見して「ワークフロー」アプリも開発した。あらゆる手続きに使えるように「件名・本文・添付ファイル」という3項目だけの、極めてシンプルかつ汎用的な設計とした。
宮城氏は「kintoneは、複数人が順を追って確認・承認し、必要に応じて差し戻しや分岐も細かく設定できるため、日本的なワークフローによく馴染みます。海外製のツールは決裁者が一度の判断でイエス・ノーを出す、というシンプルなワークフローを前提にしているものが多い印象です。段階的に承認を重ねていく当時の紙文化に慣れた社員にも受け入れられると感じました」と語る。
その展開方法にも配慮した。それまで存在しなかったワークフローをいきなり全面展開すれば、業務に支障をきたしたり、抵抗感が生じたりすることが予想された。そこで、あえて大々的に打ち出さず、“おまけ”と位置づけて忍ばせ、利用を一切強制しなかった。
リリース当初、現場でのアプリ作成は許可しておらず、新たなアプリの要望を受けて、“プロ”である情報システム部門とシステム開発を担うグループ会社である沖電グローバルシステムズが開発にあたる体制を敷いた。Notes時代にアプリやデータベースが乱立してしまった反省を踏まえた判断である。
その方針を転換し、現場でのアプリ開発を解禁したのは2023年。コロナ禍でテレワークや電子申請の需要が高まったことやkintoneの利便性が広く認知されたことから、現場からの開発依頼が相次ぐようになり、アプリをタイムリーに提供することが難しくなったのだ。解禁にあたって同社は、統制との両立を重視し、大きく2つの対応を実施した。 一つは、宮城氏自らが講師を務める社内勉強会の開催だ。希望者のみを対象としたが、延べ約400名が受講した。これは日常的にパソコンで業務を行う社員の約半数にのぼる。「最低限のガバナンスを確保するため、アプリのアクセス権については徹底して教えました。また、機能面の説明は基礎的な内容に限定しました」と宮城氏は話す。もう一つは、技術的なガードレールの設置だ。扱う情報の機微に応じて使用領域やアクセス権を厳密に分離できることは、重要インフラ企業にとって欠かせない要件である。同社では、業務領域や情報の性質に応じてアプリの作成領域を分け、市民開発アプリは設定を誤っても意図しない範囲には情報が公開されないようにした。 また、アプリ作成は申請制とし、リリースには情報システム部門による既定アクセス権の設定範囲内とすることで統制を効かせている。そのため現場の試行錯誤もよく把握しているが、あえて口を挟まない方針だという。宮城氏は「失敗しそうだと分かっても口を出せば意欲を削いでしまうこともある。助言を求められるまでは邪魔をしない、というスタンスです」と理由を語る。「ガチガチに統制した状態から少しずつ緩め、現在は一定のバランスに落ち着きました。もしルールの整備をせず、最初から自由に誰でもアプリをつくれるようにしていたら、今ごろは“廃墟”と化していたでしょう」
ワークフローの効果は、活用の入り口にとどまらなかった。承認のリードタイムは多くのケースで半分以下に短縮され、紙の書類が出張中の上司の机で止まっているといった停滞も解消。年間6万件の書類業務がゼロになり、1万5,000時間の業務時間削減を実現した。こうした汎用ワークフローの定着を土台に、厳格なルールを持つ正式な稟議手続きまでもがアプリ化され、全社に受け入れられた。さらに同じ仕組みはグループ会社にも水平展開され、グループ全体の業務効率化と一体感の醸成にもつながっている。
市民開発の解禁によって、パッケージ製品では対応しづらい“現場ならではの業務”のアプリ化が各部門で相次いで進み、現場主導の業務改善がさらに広がっていった。
こうして生まれた数々のアプリに目を通してきた宮城氏は、kintoneを「台帳管理に適したツール」であると評価する。「紙やExcelではデータが構造化されていませんでしたが、kintoneはアプリとデータベースが一体化しているため、ユーザーが意識することなく構造化されます。この点が市民開発のツールとして優れています」。データが構造化されることで、検索や集計が容易になるだけでなく、将来的なAI活用の土台としても活かしやすくなる。
総務部門の担当者によると、これまで電話と紙のカレンダーで管理していた共有車両(約30台)の予約・運行管理をアプリ化したという。利用者がアプリに記入すれば予約が即時に確定し、運転日誌も自動で蓄積されるようにした結果、電話対応や集計に費やしていた時間を年間に数百時間規模で削減できている。年間6,000件を超える予約をさばきながら、利用状況をデータで可視化したことで、車両台数の最適化にもつながった。
また、労務担当者によれば、休暇・短時間勤務などの申請管理をアプリ化し、申請のステータスを“見える化”したという。期間が長く担当者の記憶やメールに依存しがちだったが、期限が近づくと自動でリマインドが飛ぶ仕組みにしたことで、属人化や対応漏れが解消された。なお、個人情報を扱う領域であるため、申請者・所属長・担当部門といった細かい単位でアクセス権を設定している。
配電部門における社外事業者との工事調整業務でも、情報へのアクセス権をコントロールした状態でkintoneの活用が広がっている。具体的にアプリ化されたのは、電柱の建て替え工事における進捗調整だ。電柱には沖縄電力の設備だけでなく、他事業者の設備が共架されているケースが多く、建て替えの際には双方の工事タイミングを一つひとつ調整する必要がある。従来はこの調整を電話で行っており、日々数百件規模で発生する現場作業の中では、伝達漏れや行き違いによる手戻りが避けられなかった。そこで、kintoneの連携サービスである「FormBridge」と「kViewer」を採用し、社外の関係事業者にkintoneアカウントを持たせることなく、進捗を共同で確認・更新できる仕組みを構築した。電話でのやり取りを介さずに最新の状況を把握できるようになっている。これにより年間300時間程度の削減につながり、「電話しなくてよい」「やり取りの記録が残る」と現場からは好評だ。
「手取り足取りすべてを情報システム部門が担わなくても、現場は現場でしっかりと考え、自分たちでどうにかしようという覚悟を持っています。その力を信じて少し任せてみる一歩を、kintoneによって踏み出すことができます」と宮城氏は語る。 同社には基幹システムをはじめ多くのシステムやITツールが存在するが、kintoneはそれらと競合するのではなく、共存しながら独自の価値を発揮している。たとえば刷新に数年単位を要するレガシーな基幹システムには手を加えず、その手前にユーザーインターフェースやワークフローとしてkintoneを挟み、データを連携させる。これにより、刷新を待たずに、働き方改革のような待ったなしの取り組みに先行して対応。そうして空いたリソースを本格的なレガシーシステムの刷新に充てるという、kintoneをつなぎとした二段構えの戦略をとっている。
今後同社は、kintone環境の最適化や整理整頓を進めることで、シンプルさと保守性を保ち、誰もがExcelのように自然に使えるサステナブルな環境へと育てていく考えだ。あわせて、業務を通じて自然に蓄積される構造化データを生かしたAI活用も視野に入れる。 ワークフローという小さな入り口から始まった沖縄電力のDXは、現場の力によって、着実に進化を続けている。(2026年6月取材)
・FormBridge(トヨクモ株式会社)
・kViewer(トヨクモ株式会社)
※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます
本動画に関する著作権をはじめとする一切の知的財産権は、サイボウズ株式会社に帰属します。
kintoneを学習する際、個人や社内での勉強会のコンテンツとしてご利用ください。
データを変形 ・加工せず、そのままご使用ください。
禁止事項
ビジネス資料や広告・販促資料での利用など
商用での利用は許可しておりません。