大原学園 様の導入事例

大原学園

【業務内容】
資格取得と就職をサポートする専門学校
【利用用途】
講義アンケート、就職活動報告、ポータル、職員や受講者・講師間の情報共有など
  • 職業訓練に役立つ教材としてIT未経験者にも親しみやすい学習環境を提供
  • 講座全体のコミュニケーション基盤として欠かせない存在となったkintone

簿記や福祉をはじめとした各種専門学校を数多く運営している学校法人大原学園では、社会人向けのデジタル人材育成講座における学習コンテンツの1つとしてkintoneを採用し、職員や受講者、そして講師間のコミュニケーション基盤としても活用している。その経緯について、教育事業部 情報処理・パソコン講座本部 課長 細田 勇介氏および社会人講座事業部 情報処理・パソコン講座 舟橋 克弥氏にお話を伺った。

【課題】新たな教材として注目したノーコード・ローコードツール

1957年東京・水道橋に開校した大原簿記学校が元となり、現在は専門能力と社会性を身につけ、将来への希望と自信を持って活躍できる人材を社会に輩出することを目指している学校法人大原学園。簿記などの会計士・税理士系から、国家・地方公務員系、情報IT系、医療事務など、さまざまな学科が設置された各種専門学校を全国に展開しており、2022年4月時点で法人として87校、グループ校総数が114校を超えている。専門学校生を対象とした専門学校教育とともに、社会人や大学生を中心とした資格取得教育やデジタル人材育成講座などを展開している。

そんな同校において社会人向けの情報処理に関連した講座を担当しているのが、教育事業部の細田氏だ。情報処理国家試験に関する講師としてだけでなく、講師陣のマネージメントも担当している。情報処理・パソコン講座本部では、IT関連の資格取得講座をはじめ、離職者対象の訓練講座なども運営している。

そんな細田氏が新たに検討したのが、ノーコード・ローコード開発に関連したカリキュラムの構想だ。「WordやExcelといったものは講習や授業で取り入れるのが一般的ですが、実際の職業訓練に役立つ内容として、多くの企業が取り組むDX推進に大きく貢献するノーコード・ローコード開発というキーワードが浮上してきました」と細田氏は当時を振り返る。新たな時代に適した教材の1つとして、ノーコード・ローコード開発を学ぶためのソリューションを選択することになったのだ。

教育事業部 情報処理・パソコン講座本部 課長 細田 勇介氏

【選定】市販の教材があり、外部講師に経験者がいたことでkintoneを選択

市場に展開しているノーコード・ローコードツールを調査しながら、新たな教材として適したものを模索しはじめた細田氏の目に止まったのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「女性をターゲットにした再就職支援のためのコースに適したツールを検討していました。IT市場においてkintoneはよく名前が上がっており、当初から候補の1つに考えていたのです」。実際には、他の類似ソフトも候補に挙がったものの、対象となる受講者のレベルから操作性の難易度を考慮すると、kintoneのほうが扱いやすいと判断したという。「今回設計したコースでは、WordやExcelの初歩から始めていく想定だったため、専門用語がメニューに出てくるようなツールではなく、マウスで直感的に操作できるkintoneは初めての受講者にも馴染みやすいと考えたのです」。

また、今回新たに設置する講座については、すでに市販の教材が揃っているものが望ましかった。「パソコン操作スキルを履修する講座を新設する際には、市販の教材を利用して講義を進めるということをベースにしています。ガイドブックなどが教材として書店で入手しやすいkintoneは最適でした」と細田氏。さらに、外部講師のなかにkintone経験者が複数おり、使いやすいと評判だったこともkintone導入の後押しとなったのだ。「他の類似ソフトの利用経験者がいないなか、直接繋がりのなかった外部講師の数名がkintoneを使ったことがあると聞き、kintoneがビジネス現場に広がっていることを実感したのです。小中学校において担当者間のコミュニケーションツールとして活用されているなど、教育現場での活用実績があったことも安心材料でした」。

せっかく新たなツールを学びの教材として活用するのであれば、受講者と講師側のメンバーとのコミュニケーションを一括で管理できるツールとしての活用も検討。同法人の事務局メンバーとともに、外部委託の講師と受講者との間でやり取りされる連絡や提出物を提出する手段など、コミュニケーション基盤としてもkintoneを活用することを決断する。「これまでは、職員同士はMicrosoft Teamsでやり取りし、外部講師や受講者とはメール、ファイル共有が必要な時はクラウドサービスを用いる等、三者三様のツールで情報が分散していたのです」と細田氏。講座を1つのプロジェクトとして捉えた上で、そのプロジェクトにおけるコミュニケーションプラットフォームとしてkintoneを活用することになったのだ。

【効果】教材としてだけでなく、講座を円滑に運営するための基盤として重宝したkintone

わずか2ヶ月で環境整備を実現、受講者や外部講師とのコミュニケーション基盤に

今回新たに設置されたデジタル人材育成講座では、1クラス10名の参加者が数ヶ月かけて再就職支援としてのIT知識を学ぶものとなっており、時期をずらしながら30クラスほどが同時並行で運用されている。実際には、講義のための教材としてだけでなく、職員と外部講師、そして300名ほどの受講者がkintoneを利用してコミュニケーションを行っており、受講が終了したクラスではフォローアップも含めてkintoneにてやり取りを継続、最大で300ライセンスほどが活用されたことになる。2022年度に実施した講座は一旦終わっているが、2023年度も新たに同様の取り組みが進められる計画で、利用状況に応じてkintoneのライセンスを増減させていく流れとなっている。なお、アクセス権限の設定含めた管理は全て細田氏が一元管理しており、アプリ制作からデザイン含めて、わずか2ヶ月程度で環境を整備することに成功している。

▼ポータルを活用して情報をkintoneに集約

kintoneポータル画面

実際の使い方としては、閲覧権限を設定したうえで講座に関連したお知らせを通知する掲示板をはじめ、クラスごとに用意されたスペースを活用して、各種情報を通知したりお昼の情報など受講者が主体的に発信したりなど、様々な情報がやり取りされる基盤として運用されている。「クラスの中での情報共有スペースでは、自己紹介に使ったりランチのおすすめ情報をやり取りしたりなど、使い方はクラスによって様々です。講義内の練習課題として上司と部下の承認プロセスをシミュレーションするようなシーンでも、スペースを1つの職場のように活用しています」と実際の講義で活用した舟橋氏は説明する。

社会人講座事業部 情報処理・パソコン講座 舟橋 克弥氏

メールの代わりとして1対1でのコミュニケーションにおいてもkintoneを活用しており、講義で使う補修用の映像などを外部で用意し、kintoneからアクセスできるようなリンク集も用意。出欠確認アプリやアンケート機能を活用して自身のスキルチェックができるアプリなども用意している。

▼講義動画のリンク集を用意

kintoneスペース画面、講義動画のリンク集

▼各講義のスキルチェックアンケートアプリ

kintoneアプリ画面、スキルチェックのアンケート

▼受講者の就職活動報告もアプリで管理

kintoneアプリ画面、就職活動報告


外部講師と職員とのやり取りでは、給与の申請や交通費に関するやり取りをはじめ、受講者に関する引き継ぎの情報など、業務上必要な情報のやり取りも専用の掲示板にて行っている。


IT未経験者にノーコード・ローコードツールの学びを提供、運営負担の軽減も可能に

学びの教材としてkintoneを採用したことで、IT経験のない受講者にもノーコード・ローコードツールの魅力をしっかり伝えることができたのは大きいという。「わずか1週間程度でアプリケーションとして入力画面や結果の出力画面を作ってもらおうとすると、Wordなどの基本から学ぶ受講者の多くは不安を感じるものです。それが、図形を配置するようにドラッグ&ドロップしていくだけで必要な情報が配置できるkintoneであれば、簡単にアプリ作成できることに驚きます。多くの受講者から面白いと感想をいただくなど、講座としても意義あるものになったと思っています」と舟橋氏は評価する。しかも、実際の仕事現場を想定しながら、実用的なアプリが自分の手で作成できるという初めての体験だけに、受講者にとっては衝撃的で、自信にもつながったはずだと振り返る。

管理側の視点で言えば、kintoneにてクラスごとの情報やコミュニケーションが集約できたことで、複数クラスを並行して担当している外部講師や職員の情報管理負担が大幅に軽減できたという。「関係者との情報共有は、従来ならメールで行う必要がありましたし、LINEでグループを作るというやり方も可能かもしれませんが、情報を整理して公開することは正直難しい。もしkintoneがなかったら、そもそも情報の伝え忘れや漏洩リスクに配慮しながら複数クラスを運用していくことは大変で、運用できなかった可能性も。間違いが起こらないようメール送信時に複数人でチェックしながら運用することを考えるだけでもゾッとします」と細田氏。

情報をkintoneに集約することで、情報通知の抜け漏れを防ぐだけでなく、リスク軽減にも大きく貢献しており、受講者にとっても何かあればkintoneを確認してもらうだけで済むなど大きなメリットになっていると評価する。「効果を時間換算するのは難しいところですが、例えば受講者から職務経歴書の添削依頼などもあるため、300名とのやり取りを全てメールでやるのは気を遣いますし、どの情報が最新のものなのか把握するだけでも大変です。それらの情報が全てkintoneで集約できたのは、運営上とても助かっています」と細田氏。

新たな講座への取り組みとともに、外部とのコミュニティ形成に今後も活用

現在は、講座という1つのプロジェクトにおける外部との情報共有基盤としての活用が中心で、法人内での情報基盤としては、Microsoft 365などがベースとなっている状況だ。「職員だけでも1800名を超えており、すでにMicrosoftで基盤が整備されているため、これを一気に切り替えることまでは考えていません。ただし、外部の人がその基盤に入ってこれないため、今回のような外部講師や受講者とのコミュニティを形成したいというニーズがあれば、kintoneが大きく役立ってくることは間違いありません」と細田氏。

その意味では、新たな講座を企画する際の情報共有基盤としての活用が期待されているところだ。「新たな講座を作る際には、それに係る関係者の属性が多い場合にこそkintoneが生きてくると考えています。特に、今回のように小規模人数のクラスがたくさん存在する、小規模コミュニティが乱立するような時に、きちんとセキュリティやガバナンスを確保したうえで円滑に情報共有できることが我々からすると画期的。そんなシーンにkintoneがはまってくるはずです」と細田氏に今後について語っていただいた。(2023年3月取材)