小田急不動産 様の導入事例

小田急不動産

【業務内容】
土地建物販売業、土地建物賃貸業、仲介斡旋業
【利用用途】
顧客管理、案件管理、CRM、売上管理、契約管理、物件管理
  • 顧客や物件などのマスタや日々の案件情報を一元管理して業務の効率化を実現 不動産仲介事業におけるCRM基盤として採用されたkintone

小田急グループの総合不動産会社である小田急不動産株式会社では、仲介事業におけるCRM基盤を刷新し、汎用性に富んだkintoneを新たな基盤として採用。顧客情報や物件情報などのマスタ管理の基盤としてだけでなく、Webサイトに寄せられた反響の管理やDMの送付管理、案件情報の管理、成約後に管理する取引台帳との連携などに活用している。これらCRM基盤としてkintoneを採用した経緯について、仲介事業部 営業企画グループ グループリーダー 二本松 敏氏、同上席チーフ 渡邊 裕介氏および同グループ チーフ 大森 祐輝氏にお話を伺った。

【課題】不正確な情報が蓄積されたCRM基盤を汎用的なツールで刷新したい

長年のカスタマイズによる属人化されたCRM基盤

1964年に小田急グループの総合不動産会社として創立され、小田急沿線を中心に50年以上の長きにわたって不動産事業を展開してきた小田急不動産株式会社。小田急グループの中核企業として不動産関連事業を手掛けており、「LEAFIA」ブランドなどを中心に2万3000戸を超える実績を持つマンション・戸建に関する分譲業をはじめ、都内を中心に100ほど運営管理するオフィスビル・マンションの賃貸業、土地・建物の仲介業という3つの事業を展開しており、多くの顧客に上質と感動を提供しながら、愛される企業づくりに邁進している。なかでも、小田急沿線全域に広がる20の店舗網を生かして、高品質な不動産関連サービスを提供している不動産仲介業では、売買仲介や賃貸仲介、買取り、法務・税務・相続相談など各種サービスを通じて、顧客の課題に応えるソリューションを提供している。

そんな仲介事業部では、15年ほど前からFileMakerを用いてCRM基盤を構築し、顧客管理や物件管理を行ってきたが、カスタマイズを繰り返すことでシステムが属人化していたと渡邊氏は当時を振り返る。「委託先の特定の人物に依存した形でCRM基盤の構築や運用を行っていたため、以前から事業リスクとして課題感を持っていたのです」。そんな折、Windows10への入れ替えの時期を迎えたことで、課題のあったCRM基盤を別の仕組みに置き換えるべきだという議論に。「これまで長年関わってきた社内メンバーも異動になり、仕組みも運用も属人化している状況でした。そこで、全体的なCRM基盤の見直しを図っていくことになったのです」と渡邊氏は経緯について語る。

仲介事業部 営業企画グループ 上席チーフ 渡邊 裕介氏

情報連携の不備で不正確な情報が蓄積、二重管理も大きな負担に

CRM基盤については、情報の二重管理についても大きな課題として顕在化していた。「営業がCRMに入力する案件情報の精度が十分でなかったこともあり、営業日報の情報をもとに業績管理用の別の仕組みに営業企画のメンバーが手入力せざるを得なかったのです」と渡邊氏。また、成約後の処理で追記した情報が当初に登録した顧客情報へ反映されないなど、情報が一元的に管理できていない状況だった。「それぞれの仕組みが連携されておらず、店舗サイドからすればCRM基盤には“不正確な情報が多い”という感覚でした。せっかく入力した情報が生かされていないことへの “もやもや”した感情も現場に渦巻いていたのが実態です」と店舗での経験も豊富な二本松氏は説明する。そこで、現場の業務負担を軽減しつつ、正しい情報がきちんと一元管理された基盤への刷新を目指すことになったのだ

仲介事業部 営業企画グループリーダー 二本松 敏氏

【選定】kintoneが持つ汎用性の高さが大きな魅力に

CRM基盤の刷新に向けて模索するなか、不動産関連の展示会で出会ったのが、サイボウズが提供するkintoneだった。当初は不動産仲介支援に特化したパッケージも検討した同社だが、自社独自の運用を取り込むためのカスタマイズが必要で、改修コストも含めてパッケージでは対応が難しいと判断。ある程度自由に作り込める汎用的なソリューションとして、kintoneに白羽の矢が立ったという。「汎用的に作り込めることが前提ですが、システム部門でない我々が運用していくためにも、クラウドサービス活用を視野に検討を進めました。初期コストを抑制しながら、各店舗からのアクセスも可能な環境が容易に整備できる点も考慮し、kintoneが最適だと判断したのです」と渡邊氏。

汎用性の高さを重視したのは、分散している店舗に所属する100名を超える営業担当者の要望や抱えていた課題をうまく吸収する必要もあったためだ。「現場にはITに対して抵抗感を持つ人もいるため、新しい仕組みへ刷新していくのは大変な作業が伴うもの。だからこそ、現状の操作性を残しながら、これまでの課題が解消できる仕組みが必要でした。汎用性の高いkintoneであれば、既存の業務フローを踏襲しながら、情報の一元化など現場へのメリットがきちんと提示できると考えたのです」と大森氏は力説する。

仲介事業部 営業企画グループ チーフ 大森 祐輝氏

結果として、従来運用してきたCRM基盤の使い勝手を維持しつつ、情報の一元管理による業務の効率化に寄与する新たな基盤としてkintoneを選択。Excelにて運用していたダイレクトメールの送付管理アプリを作成するなど、事前に使い勝手を確認したうえで、kintoneにてCRM基盤の刷新を行うことになった。

kintoneなら顧客情報、物件情報、案件情報を一元管理できる。

現場の操作性を重視し、移行前の製品の仕様に似せるカスタマイズを実施。

【効果】情報が一元管理されたCRM基盤が業務負荷の軽減を可能に

案件登録から成約後の取引台帳連携まで、30を超えるアプリを運用。二重入力の撲滅と情報精度の向上を実現

現在は、自社ホームページや外部の不動産情報サイトに問い合わせが発生した段階でkintone上に案件登録され、対応店舗が自動的に振り分けられたうえで店長が営業担当者を指定、電話やメール、アポイントなど実際の営業活動が登録されていく運用だ。案件情報は、内部で管理している顧客情報や不動産物件情報と紐づけて管理できるようになっている。そして成約に至った段階で入力済みの顧客情報、物件情報を基にkintone内で取引台帳を作成できるようになっている。

複数のアプリの情報を呼び出せる「メイン画面」をカスタマイズで作成。

kintone内では、駅情報や郵便番号、市町村コード、路線といった各種情報がマスタとして管理されており、案件情報アプリ以外にも、取引で得た仲介手数料以外に提携企業から得た雑収入を管理するアプリや各店舗に設置された金庫の入出管理を行う金庫日報アプリなども日々運用されている。店舗への来店時や契約時に付与する、グループ全体で運用している小田急ポイントサービスの管理アプリのほか、街の情報を営業担当者が記録していく街アプリなど、トータルで30を超えるアプリが運用されている状況だ。

利用しているアプリの一例。トータルで30を超えるアプリが運用されている。

新たな環境に刷新したことで、情報の二重入力がなくなったことによる業務負荷の軽減に加えて、情報が一元管理されたことで精度向上が実現したという。「法律で定められた仲介手数料の上限や営業担当者に振り分ける手数料割合など、事前に入力制御や整合性のチェックが可能になっています。その結果、成約後の取引台帳作成時に本社側で行っていたチェックが不要になるなど、業務の効率化によってお客さま対応の時間をこれまで以上に確保できるようになりました」と渡邊氏は評価する。

仲介手数料の上限や手数料割合などは事前に入力制御や整合性のチェックが可能に。

また、登録された情報がアプリ間で連携されるため、意識せずともアプリ内の情報が最新の状態にアップデートされるなど、情報の信頼性が格段に向上したという。さらに、今では機能拡張の声も寄せられるようになっている。「CRM上の情報が正しいという心理的な変化はもちろん、改善要望に対応できることが現場にも伝わり、機能拡張の要望も数多く寄せられるようになりました。営業部門を支援する組織として、現場に使いやすい環境づくりや機能実装ができるようになったのは大きな効果です」と二本松氏。

データ活用の幅が広がることで事業部を超えた活用にも期待

kintoneの魅力については、「完成された仕組みでないぶん、自分たちの運用をうまく反映させたものが形にできるのは大きい。従来は商談のステータス管理も十分にできていませんでしたが、今では日々の活動がきちんと記録できるように。成約までの最適なフローが抽出できるなど、データ活用の可能性も広がっています。また、自分たちはシステムのプロではないため、SIerであるICTラボラトリーズ様に、業務内容や課題を相談しながら進められるのはありがたく思います。kintoneの構築やカスタマイズ、現場への教育、今後の活用に至るまで、kintoneの展開を一緒に考えながら伴走していただけていることは非常に大きいです。」と渡邊氏。なお、現在は事業部に閉じた形で活用しているが、システム部門が主導して事業部を横断した情報基盤を整備する際にも、汎用性の高いkintoneが活用できるはずと期待を寄せている。

今回の刷新プロジェクトによって、新たな仕組みを現場に展開していったが、なかには変化を嫌う人も存在しているため、運用が楽になることをセットにして伝えることで、現場の理解を得ていったという。「店舗内の取りまとめや本社への情報提供は庶務の方が主に関わっているため、店長はもちろん、営業活動を支援する庶務のメンバーにはきちんと説明を行うなど手厚くフォローしたことで、大きな混乱もなく現場に展開することができました」と展開のコツについて渡邊氏は語る。

アナログ業務を吸収、モバイル活用にも期待

現状は既存の業務フローを踏襲させた形でシステムを実現しているが、営業担当者が本来の営業活動に時間がしっかり割けるよう、今後は社内の業務内容やフロー、組織の構造などを根本的に見直し、再設計するBPRも視野に入れながらkintoneをベースに業務改善を進めていきたいという。「ホームページ上に掲載している物件情報とkintone内の情報を連携させるなど、kintoneを使った情報一括管理をさらに進めていくことで、情報管理や入力の手間を減らすといったことにも挑戦したい」と大森氏。

また、紙のチェックリストにて運用しているといった、現場にはアナログな業務も残っているため、kintoneを使って仕組みに落としていきながらシステム上で管理できるような環境を整備していきたいと二本松氏。「不動産業界は今でも紙の文化が根強く残っており、それは我々も例外ではありません。紙やExcelで行っている業務をkintoneに集約していくことで、データ活用の幅を広げていきながら業務改善につなげていきたい」。具体的には、成約者に対して数か月経過した段階でアンケートを実施しているが、現状は郵送にてアンケートを回答してもらい、結果の集計作業を外部に依頼している。そんなアンケート機能をkintoneで実装することで、発送作業の手間や集計作業の軽減にもつなげたいと意気込みを語る。

現在はセキュリティの観点から営業担当者が持っているiPadからkintoneへのアクセスは許可していないが、証明書導入や権限に応じた情報制御も含めて検討し、社外からでも安全にアクセスできる環境を整備していきたいという。「セキュリティ面での対応をシステム部門と相談する必要がありますが、商談の結果入力のためだけに店舗に戻らずとも、その場で報告できるような環境も整備していくことで、さらなる業務効率化につなげていきたい」と渡邊氏に語っていただいた(取材日:2020年2月)

【この事例の販売パートナー】
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