乗富鉄工所 様の導入事例

乗富鉄工所

【業務内容】
水門など水利施設の工事
【利用用途】
工事の工程管理、工事投入人数の把握、社外との情報共有
  • 複雑な工程管理の脱属人化を実現
  • 人員管理表の作成時間が8時間から1クリックに

福岡県柳川市を拠点とする株式会社乗富鉄工所。主力事業は、水門・水管橋など水利施設の公共工事の請け負いで、設計・製作・据付までを一貫して行っている。今回は副社長の乘冨賢蔵氏に、kintoneの導入によって会議資料作成の手間が激減し、さらに工程管理の属人化を解消したエピソードをうかがった。

課題:紙ベースの情報共有に限界を感じ、システム導入を検討 

乘冨氏は、会社で社内稟議書の回覧が紙ベースとなっており、どこで止まっているのかわからなかったり、見返したい時にどこにあるのか分からないことにストレスを感じていた。そこで「回覧や承認が簡単にできて、データとしても残せるようなシステムを教えてほしい」とSNSに投稿したところ、複数人からkintoneを勧められた。
kintoneなら、紙での情報共有の解消に加えて、工事の工程管理など多様な用途で利用できると感じたという。

「最初は書類問題を解消しようとkintoneのWebサイトを閲覧しました。そこでkintoneではデータベースを簡単に作成できると知り、導入意欲が一気に高まりました。私はデータベースを軸に目的に合った資料を作るのが得意なので、kintoneがあれば色々な課題を解決できると思ったのです。kintoneのポップなデザインも気に入りました。」

乘冨氏はすぐにでもkintoneを導入したかったが、「なぜ、ITツールにお金をかける必要があるのか」と社内で反発が起こることが予想された。スムーズにkintoneを導入するために、kintoneの無料お試し期間30日で導入の意義を認めてもらうことを決意。まずは30日間という限られた時間で、わかりやすく効果を出せる「資料作成の効率化」から取り組むことにした。

効果:複雑な工程管理の脱属人化を実現 

2時間以上かかっていた会議資料の作成がワンクリックに

毎週行われる「工程会議」では、各部門の長が集まり工事の進捗確認などを行っている。会議で使用する「案件の進捗確認」資料をまとめる作業に毎週2時間以上かかっていたという。

作成に2時間かかっていた工程会議資料

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「各案件の最新情報を担当者しか持っておらず、情報が属人化している状況だったので、それぞれの案件の営業担当、製造担当、設計担当に最新状況を聞いて回る必要がありました。各担当からバラバラのフォーマットで出てくる情報を1つのExcelシートにまとめるのに時間がかかり、毎週会議のための資料を作るのに早くても2時間は要していました。それに加えて、口頭で聞いて回るので、人によって思い出す情報が断片的だったり、長くても2週間先の情報までしかわからなかったりと、時間をかけて資料を作るも最新の状況把握が困難でした」と当時の状況を振り返る。
工事の進捗確認を効率化してリアルタイムで状況を把握したいと考えた乘冨氏は、kintoneで「工程見える化アプリ」を作成。工程管理の共有を実現した。

工程見える化アプリの一覧画面

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アプリの一覧画面を見れば、工事の進捗がかんたんに把握できるようになっている。営業部門や設計部門など、それぞれの部署が情報を更新するため、常に最新情報に更新されている。
時間をかけて資料をとりまとめる必要がなくなり、お試し期間中に目に見えて効果が出たことがkintone導入の後押しとなった。

資料をまとめていた乘冨氏だけではなく、メンバーにも影響があったという。
乘冨氏は「リアルタイムで鮮度の高い情報を見ることができるので、進捗確認がスムーズになりました。会議の進行もスムーズになったので、以前よりも密度の濃い議論ができるようになったうえに、会議時間自体が短くなりました」と語る。
また、「以前資料をまとめるために利用していたExcelと比較すると、決まったフォーマットで情報を入力できるので、部署を横断して全社で使いやすいと感じています。また、工程情報をExcelでまとめるとファイルが重たくなりがちで、重たいファイルを扱うことにもストレスを感じていました。kintoneなら集計画面もサクサク動くので、複数人で同時に更新することもできてストレスフリーです」と使い勝手にも効果を感じているそうだ。

売り上げに関わる重要な経営判断がスピーディーに

もう一つ、kintoneの大きな導入効果として、「内外作」の判断がスピーディーになったそうだ。内外作というのは、「工事を自社で担当するか、協力会社へ外注するか」といった判断のことで、工場の人員配置に関わる重要な経営判断だ。外注することを早く決断できれば、質の高い職人を確保できたり、費用を安く抑えることができる。

以前はこの判断をするための資料を8時間かけて制作していたという。
20件以上の工事が同時で平行する中、10人の営業担当にそれぞれ工事の様子を口頭で聞いて回っていました。出てくる情報のフォーマットも、口頭だけでの伝達だったり、紙だったりとバラバラ。この情報を1つのExcelファイルにまとめて集計する作業に8時間以上を要していました。とりまとめの作業にとにかく時間がかかるため、2ヶ月に1回のペースが限界で、内外作の判断スピードが鈍くなっていることが課題でした。内外作は売上に関わる重要な判断なので、まずはkintoneを使ってタイムリーに情報が見られるようにしようと考えました」

乘冨氏はこの課題にも「工程見える化」アプリを活用。アプリを見れば工事の進捗が常に共有されているため、毎週行われる工程会議で状況をこまめに確認し、判断のスピードを上げることを実現した。
「判断のペースが2か月に1回から1週間に1回にあがったことで、適切な人員配置がとれるようになりました。余裕を持って外注の判断ができるので、以前と比較すると現場が疲弊しなくなったように感じています。余計な外注コストのカットにも繋がりました」と効果を実感する。

工場長の工程管理がみんなの工程管理に

工程管理と人員配置をkintoneで見える化した効果が「脱属人化」だ。
「以前は、この複雑な工程管理と人員配置を全て工場長の手腕と人望で決定していました。彼の脳内では経験に基づく複雑な計算がされており、それに頼っている状態だったのです。しかし、工場長の定年が近づいていたため、私が工程管理を引き継ぐことに。8時間かけてどうにか資料にしていました」と乘冨氏は説明する。
結果的に、kintoneを導入して状況を見える化したことで「工程や人員配置は工場長しかわからない」という状況を脱することに成功。人員配置の納得度が高い「みんなの工程管理」を作ることができるようになった

毎週の工程会議ではkintoneの画面を見ながら工事の進捗を確認

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顧客管理にも活用を広げ、経営者不在でも事業が止まらないチームへ

乘冨氏は自ら立ち上げた新規事業「ノリノリプロジェクト」でもkintoneを活用している。「ノリノリプロジェクト」は、鉄工所職人の技術と発想を生かした自社ブランドの立上げを目指した同社の新規事業だ。2020年からは、鉄工所の高い技術を使ったユニークなキャンプ用品開発・販売している。

現在、同プロジェクトはデザイナーや福岡大学のゼミなど外部と共同で活動を進めており、kintoneのゲストスペース(社外と情報共有できる機能)を活動に役立てている。
具体的には、営業のアタックリストを「顧客リスト」アプリで管理。活動履歴をアプリにストックし、大学生メンバーも含めたプロジェクトメンバー全員に共有している。

「顧客リスト」アプリの画面

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「ある日、体調を崩して急遽入院することになり、このプロジェクトの営業活動が止まってしまいそうになりました。しかし、 kintoneで顧客情報を共有できていたおかげで、私がいない間にも会社では商品の生産が続き、お客様からの問い合わせもメンバーがうまく回してくれたんです。kintoneでの情報共有が功を奏し、経営者が不在でも事業が止まらないチームを作ることができました」と、営業活動での効果も実感している。

乘冨氏は今後の展望について、「kintoneを使って常に情報共有を行い、社外のメンバーも含めたチームで営業をするようになったことで新商品が売れはじめました。今後はもっと会社が外の世界とつながるようなkintoneの使い方を研究していきたいです」と意欲を語ってくれた。

(2022年3月 取材)