ネットプロテクションズ 様の導入事例

ネットプロテクションズ

【業務内容】
後払い決済事業
【利用用途】
問い合わせ管理
  • kintone導入を円滑に進めた3つの方針
  • 導入後は人材定着に向けた業務の可視化・標準化に大きく貢献

個人および法人向けに後払い決済事業を専業で取り組んでいる株式会社ネットプロテクションズでは、「NP掛け払い」事業部において、売り手企業と買い手企業双方から寄せられる問い合わせ関連業務の情報を共有、管理する仕組みとしてkintoneを導入している。kintone導入に至る経緯やその選定のポイント、活用における効果などについて、同社 B to Bグループ 平本 和士氏にお話を伺った。

【課題】問い合わせ業務に必要な情報が一元管理できていない

ビジネスの攻守にわたって企業における決済業務をバックアップ

2002年よりスタートした後払い決済事業を中心に、テクノロジーを活用した新しい信用を創造する“Credit Tech”のパイオニア企業として商取引の円滑化に大きく貢献している株式会社ネットプロテクションズ。

BtoC向けの「NP後払い」「atone」やBtoB向けの「NP掛け払い」、など後払い決済に関するさまざまな事業を手掛けており、ユニークユーザー数はBtoC後払い決済で1350万人、BtoB後払い決済の利用企業社数は260万社を突破。年間流通総額は2900億円にも達しており、与信の難しい中小企業との取引におけるリスク回避に役立つだけでなく、決済業務に人的リソースが確保できないベンチャー企業を支援するなど、ビジネスの攻守にわたって企業における決済業務をバックアップしている。

B to Bグループ 平本氏

お客様の情報が素早く確認できていなかった

そんな同社が手掛ける「NP掛け払い」では、与信、請求書発行から回収・督促、未回収リスク保証まで、掛け売りに関する全ての代行業務を行っているが、その業務内では決済サービスを利用する加盟店と請求書を受け取る企業双方とのコミュニケーションが日常的に発生している。

「メールや電話での問い合わせが日々寄せられており、月間で8,000件を超える数となっています」と平本氏は説明する。その問い合わせ管理に、以前は別のCRMツールを活用していたが、問い合わせに関連したメールの情報や、請求情報が管理されている基幹システムとの連携が十分でなかっただけでなく、督促の状況などについては個別のExcelで管理されており、情報が一元管理できていなかったという。「お客さまから電話をいただいてCRMツールを見ても、過去どんなメールをいただいているのか、請求状況や入金状況などがすぐに把握できない状況にあったのです」と平本氏は当時を振り返る。

また、事業拡大に応じて人材を新たに確保・育成していくなかで、属人化した仕組みのために業務に慣れるまでのハードルが高く、人材定着が難しい側面もあったと課題を吐露する。「業務をシンプルにして人材を定着させること、そして情報の一元化によってお客さまとの円滑なコミュニケーションを可能にしたいというのが大きな課題だったのです」と平本氏は語る。

【選定】業務部門だけで対応できる、変化に追随可能な基盤を求めた

改修に時間のかかるシステムの採用は行わない

入金処理や請求書発行など大量のトランザクションが発生する業務については積極的に自動化を図ってきた同社だが、利用者とのコミュニケーションが発生する問い合わせ業務については柔軟な対応が求められる場面が多く、ある程度変化に対応できる仕組みが必要だったという。

今まで利用していたシステムからの移行を検討するにあたり、改修に時間のかかるシステムの採用は行わないことを決めていました。改善を行わなかったり、遅れたりすることによって、提供するカスタマーサービスの低下につながるためです。また、ほかの事業においてはSFAツールを活用していて、そのツールが基幹システムとしっかり連携しているため、簡単に変更できない状況でした。

わずかの変更で数百万円という金額がかかるようでは、ROI的に見合わないものになってしまう。だからこそ、業務部門だけでも自由度高くアプリが作成できる空の箱のようなもの、つまりaPaaSを求めていたのです。」と平本氏は語る。

システムとの併用、棲み分けを前提に考える

今回は、全社的に利用している仕組みはそのまま活用する前提で、問い合わせに関するログおよび問い合わせ業務に必要な情報が一元管理できる基盤を検討することに。そこで同社が目を付けたのが、サイボウズが提供するkintoneだった。

「本当の意味で自由度の高いアプリケーションが、業務サイドだけで作成できるのは大きなポイントです。また当初課題だったメール連携も、「メールワイズ」のプラグインを利用して連携することで、「メールワイズ」の履歴をkintoneのアプリに表示できるようになりました。kintoneのレコード内のリンクをクリックするだけで簡単に情報確認できる。まさに我々が求めていた環境が整備できると考えたのです」と平本氏。実際には他社のソリューションも検討したものの、同社独特のビジネスモデルに柔軟に対応できるものはなかったと平本氏。

「我々が請求業務を代行する加盟店と請求書をお届けする企業、そして我々という3社が介在することになります。つまり、 “N対1対N”に関連付けた形で情報管理が可能な基盤が必要でした。一般的なパッケージではその関係性で情報管理することが難しいものばかり。自由度の高いkintoneであれば、我々が必要としている管理が可能だと判断したのです」。

結果として、利用者からの問い合わせ対応業務における情報基盤としてkintoneが採用されることになる。すべての業務をkintoneに集約するのではなく、用途を切り分け、それぞれの業務に適したシステムを利用する方針は変えていない。

平本氏のツールの棲み分けの基本的な考え方

情シスがアドバイスしながら、導入は業務部門主導で行う

今回、kintoneの採用が決まった同社では、ビジネスアーキテクト(情シス部門)のアドバイスを受けながら、主導は業務部門が担当したという。

「主導は業務部門に任せていました。その理由は、業務部門で利用するツールは、一番要件が分かっている自分たちで作った方が改善サイクルが早いからです。分からないことがあれば、わたしたちがアドバイスするのはもちろんですが、サイボウズのセミナーに参加してもらったり、サイトに掲載されている他社の利用事例を見てもらったりと、積極的に参考となる情報を取りにいくメンバーもいます。」と平本氏。

kintoneは自分で学ぶためのサポートコンテンツを多数用意しています

また、システムの移行プロジェクトの目的や内容を整理、リスト化しておくことは、メンバーとの共通理解を深め、導入をスムーズに進めるうえで役立ったという。

平本氏が導入までに実際に行った検討事項のリスト

【効果】kintoneで業務のプロトタイプ作成、投資判断の基準としても活用

問い合わせ業務に必要な情報をkintoneにて一元管理

現在は問い合わせ業務を手掛けている部署の30名ほどがkintoneを活用しており、加盟店および請求先となる購入店情報などのマスター情報や請求情報、入金情報など基幹システムが持つデータは日々のバッチにてkintoneへ取り込んでいる。顧客からのメール情報はメールワイズにて管理し、kintone上の各レコードからメールによる問い合わせ内容が閲覧できるようになっている。電話による問い合わせはオペレータがkintoneの画面にて情報を入力しています。

kintoneを見れば、お客様の情報をすぐに確認できる

(利用イメージ)kintone上の各レコードからメールによる問い合わせ内容を閲覧できる

業務の可視化および改善ツールとしてkintoneを活用

同社のシステム化の取り組み方としては、メンテナンスの観点から原則カスタマイズは行わず、機能的に足りないものは別のシステムの標準機能で補い、それぞれ併用させていくことで円滑に業務を行うようにシステムを作り上げている。

なかでもkintoneについては、自動化できていない業務を一度kintoneに取り込んで業務の可視化を行い、処理件数や業務負担が大きくなればシステム化をしていくといった、システム化につなげるための基盤としても重宝している。

「業務の可視化を行うために業務自体をkintoneにてプロトタイプを作成し、業務を動かしながらシステム化に向けて投資判断をするといった使い方としても活用しています。こうすることで、システム部門と業務に関する相談をする際に、現状はどうやって運用しているのか、どこがネックになっているのかといった処理の流れが開発側もイメージしやすく業務理解がスムーズです」と説明する。

取扱金額に直結するような機能を企画してリリースするという動きは毎年のように行われているが、そのプロジェクトに伴って内部の業務システム部分の投資は大きくは進まないケースもある。「リソースを投入して構築されたシステムに対して、内部的にはkintoneを使って地道に業務改善を回していくというようなスタイルが定着しています」と平本氏。

人材定着に効果を発揮、業務部門のITリテラシ向上にも大きく貢献

毎年成長を続けている同社だけに、現在は採用を増やして人的リソースを優先的に整備している状況にあるが、多くの人材が急激に増えた場合でもしっかり人材が定着している状況にあり、問い合わせ業務をシンプルに行えるkintoneがその定着の一助となっていると平本氏は評価する。

また、データ構造に関する知識などを触りながら理解できるkintoneだからこそ、ビジネスを企画するメンバーのITリテラシが向上したことも大きな効果だと平本氏。「機能実装についての相談も分かりやすく、スクラッチで開発している別のシステムのどこが動かしづらいのかといったことを知る素養も身につくことで、より改善も進めていくことができています」。

システム部門からは、現場がシステムを構築することで改修など保守の手間が大きく軽減できている点も評価の声として上がっているという。kintoneについては、費用対効果が高く現場からの要望がすぐに反映できる基盤としての評価も高い。

「これまではオペレータが変更要望を上げると、いろんな改修パターンがあると逆に問われてしまい、心理的にも要望が出しづらいことで、改善の声が上がらなくなってしまったことも。今はすぐに変更してみて、それをみんなで議論することができるだけでなく、自分がサービス改善に関わっているという感覚も得やすくなっているはずです」と平本氏。

システム化できていない業務をkintoneに集約、標準機能に絞って今後も活用

未払いに関する入金後の消込順変更といった一部のイレギュラーな処理については、現状Google ドライブやGoogle スプレッドシートなどで管理しているが、今後はこれらの情報もkintone内で管理できるようにしていきたいと平本氏。

また、サポート部隊以外でもExcelなどを用いた属人的な管理が行われている部署があるため、同じような課題感を抱えている部署への紹介を通じて業務改善のきっかけ作りを行っていきたいという。他にも、kintoneの情報をSlackに通知するといった連携も含めて、標準で使える機能があればさらに活用していきたいと今後について語っていただいた。(2019年4月取材)