医療法人敬愛会 中江病院 様の導入事例

医療法人敬愛会 中江病院

【業務内容】
リハビリ治療を中心とした回復期・慢性期病院
【利用用途】
「ここりんく」を使用した情報共有、経営指標や施設基準の管理など
  • 病院として重要な経営指標の見える化で現場の意識改革を実現
  • 電子カルテシステムとの連携で病院業務の効率化に貢献するkintone

充実したリハビリ治療を中心とした回復期・慢性期病院として鹿児島の地域医療を支えている医療法人敬愛会中江病院では、従来の紙による運用から脱却し、電子カルテシステム(以下、電子カルテ)を中心としたデジタル化を推進。情報共有を加速させながら業務の効率化を図っており、そのための基盤としてkintoneをベースとした病院経営プラットフォーム「ここりんく」を導入している。その経緯について、医療法人敬愛会 中江病院 事務長 赤塚 靖徳氏、診療支援部長 診療放射線技師 中村 晶夫氏、システム管理室主任 診療放射線技師 児玉 唯史氏およびシステム管理室 臨床検査技師主任 梅橋 未来氏にお話を伺った。

【課題】電子化への要請や現場の業務改善を図るべく、電子カルテシステム導入を決意

1892年に鹿児島の伊敷村にて診療所を開設して以来、今年で127年を超える歴史を誇る医療法人敬愛会中江病院。「地域の皆様が安心し満足の得られる医療及び介護サービスを提供します。」を基本理念に据え、急性期病院を退院した後の在宅復帰を支援する慢性期病院として地域医療を支えている。内科や循環器内科、消化器内科のほかにも、リハビリ治療に向けたリハビリテーション科を備えており、脳卒中及び脳血管疾患を対象とする脳血管疾患リハビリ治療や、冠動脈疾患や大血管疾患を対象とした心大血管等リハビリ治療にも慢性期病院として取り組んでいるのが大きな特徴だ。

そんな同病院では開業以来、紙カルテを中心に現場の業務が行われてきたが、2年ごとに行われる診療報酬改定のなかでICTの活用が算定要件に加わるなど、医療情報の電子化への取り組みが業界として求められていた。また、現場で働く医師や看護師などの業務効率化にも役立てるために、電子カルテの導入を検討することになったと赤塚氏は当時を振り返る。「四代目となる中江 佐八郎氏が新たに院長として就任した際、以前から紙を中心としたアナログ的な業務の改善の必要性を感じていました。そんな折、病院施設の建て替えが予定されていたこともあり、そのタイミングで院内システムの電子化に取り組むことを決断。病院内での情報共有を実現するべく、電子カルテの導入を検討することになったのです」

医療法人敬愛会 中江病院 事務長 赤塚 靖徳氏

【選定】電子カルテの周辺業務も役立つ仕組みがシンプルに構築できる

電子カルテだけでは救えない業務を支援するときに役立つkintone

複数の電子カルテを検討する過程で中江院長と赤塚氏の目に留まったのが、プラスアルファの機能として提案された、株式会社プレアデスセブンが提供する病院経営プラットフォーム「ここりんく」であり、そのシステム基盤となっているkintoneだった。「電子カルテそのものの評価が各部署から高かったのはもちろんですが、電子カルテだけでは拾えない業務を支援してくれる機能が実装できるkintoneの存在は大きかった。電子カルテ以外の業務改善に関する提案があったことで、改めてその必要性を認識したのです」と赤塚氏。看護の現場からも、日常業務の改善につながることへの期待があったという。

なかでも期待されていたのが、他の医療機関から入院相談を受けた地域連携室と各部署とのタイムリーな情報共有だ。「以前は地域連携室の担当者が入院する患者の情報共有のためにFAXで流れてきた診療情報書とExcelに相談情報をまとめたものを必要な部署にコピーして配布するという作業が必要でした。それでも情報共有がスムーズにいかず多くの手間と時間がかかっていたのです」と梅橋氏。kintoneを使えば地域連携室に他の医療機関からFAXが流れてきた段階で患者情報が登録でき、各部署で院内の電子カルテ端末であればどこからでも情報を確認することが容易に。入力した情報を有効活用することで、業務の効率化にも大きく貢献すると考えたのだ。

医療法人敬愛会 中江病院 システム管理室 臨床検査技師主任 梅橋 未来氏

電子カルテやレセコンとの柔軟な連携で、経営指標が自動的に収集、可視化できる

 経営的な視点では、ここりんくを使って全国にある医療機関の情報が入手できる環境が整備できるという点も大きなポイントだったという。「他の医療機関の実績と自分の病院の実績と比較するなど、病院経営に生かせる情報が手に入るのはここりんくならでは。もちろん、比較するためには診療報酬データなどをもとにした我々自身の状況分析が必要不可欠です。当初はレセコンなどで実装することも検討しましたが、kintoneであれば電子カルテなどの周辺システムから全て情報が自動的に収集できるような仕組みも構築可能です。日々の運営状況が容易に可視化できる点はとても魅力的でした」と赤塚氏は語る。

 システムの専任者が確保しづらい医療機関にあって、環境を自ら設置せずともクラウド上で利用できる点も高く評価され、最終的には電子カルテと柔軟に連携できる、kintoneをベースにしたここりんくが、同病院の情報基盤として採用されることになる。

【効果】病院内の情報基盤として幅広い業務に活用されるkintone

スケジュールや掲示板、各種申請アプリなど、kintoneにてグループウェア機能を実装

 今回は電子カルテと同時にkintoneが導入されたこともあり、まずは電子カルテを現場に浸透させていき、その後kintoneを使って業務アプリを作り上げていった。ただし、地域連携室ではkintoneのフォームから相談者の情報入力が可能な環境づくりを先行して進めたという。「従来Excelにて入力していた項目を全てkintone上に用意し、『フェイスシート』と呼ばれるアプリにて入院相談を受けた患者情報を入力していきました。相談者の個人情報はもちろん、相談日などの履歴や担当者情報まで含めてフェイスシートに記録をして残しています。入院前で患者登録がなく電子カルテでは管理できない情報も数多くあり、貴重な情報となっています」と赤塚氏。

 情報共有のためのグループウェア機能として、院内行事の管理や施設予約のためのスケジュールアプリをはじめ、最新情報と重要情報という2種類の投稿が可能な掲示板アプリ、全国の医療法人に関する収益性や安全性などのデータベースアプリ、インシデントやアクシデントに関する報告やそのステータスを管理するアプリ、時間外申請や有休申請といった稟議申請系アプリ、個人情報や通勤に利用する車などの情報を管理するマスター系アプリなどが用意されている。また、議事録やマニュアルを共有するために、部署ごとはもちろん、院内感染対策委員会など組織横断的な活動の単位でkintone上にスペースが設置されている。さらに、病床稼働率やインフルエンザ情報など緊急度の高い情報はポータルトップに表示される。他にも、物品請求や在庫管理、払い出し管理といったさまざまな業務にkintoneが活用されており、それぞれの現場でスタッフがアプリを活用している状況だ。

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                  ポータル 

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                   時間外申請

病床稼働率などの経営指標を見える化したことで、職員の意識改革に大きく貢献

 今回のシステム導入で現場の意識改革につながったのが、電子カルテやレセコンと自動連携することで、病床の稼働率といった「経営指標」、また医療区分およびADL区分の割合といった「施設基準」の見える化を実現したことだ。「重症度によって入院単価が決まる療養型の病院では、医療区分やADL区分の割合がとても重要です。これら区分ごとに割合を出してポータル上で示すことで、職員全員に意識を持ってもらうようにしています」と赤塚氏。これらの情報は全て自動的に取り込むことが可能になっており、前日までの最新情報がいつでも確認できるようになっている。「医療区分の割合や病床稼働率などをポータルに表示するようになったことで、自分たちの病棟においてどのくらいの稼働率なのかを認識している人を9.3%から84.0%にまで大幅に増やすことができました。数字を意識することで現場の動きが変わるなど、経営にも好影響が出てくるはず。きちんと患者さまをフォローすることで評価につなげていくという、職員の意識改革に大きく貢献しています」と中村氏は高く評価する。

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                 病床の稼働率

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                 医療区分割合

新たな仕組みを構築するたびに発生する数百万円ほどのコストが不要に

今回環境を整備したことで、さまざまな部署で行われていた紙による業務がkintoneによってシステム化され、作業効率は大きく向上していると赤塚氏は評価する。「以前は上長が不在であれば稟議申請に時間がかかっていましたが、今は社外にいても承認作業が実施でき、承認までのリードタイムが大きく改善されました。また、経営指標となる稼働率などのデータも以前は手作業で作成していたものが、今は自動的に集計、分析できるようになっています。とても大きな効果を生んでいます」。もちろん、これまで業務に介在していた紙の削減にも寄与しているという。他にも、クラウドサービスだからこそバックアップも含めて手間なくデータ保全ができるようになり、証明書の入ったiPadを使って退院前に患者宅の状況を写真付きで報告書にまとめるといった院外からの情報登録にもkintoneが活用されている。

kintoneについては、詳細にアクセス権が設定できることで閲覧制限しやすく、新たなアプリの追加も容易に行えるなど、その柔軟性が高く評価されている。「インシデント報告の仕組みや地域連携室との連携システムを個別に構築していたら、その都度数百万円という規模の費用がかかります。kintoneで工夫すれば同じような環境が整備できますし、今後もいろいろな業務が実装できるはず。将来的な意味でのコストパフォーマンスがとても高い」と中村氏は評価する。また、普段からkintoneにてアプリを作成している梅橋氏も「私が関わっている院内感染対策委員会などのアプリは、私だけでなく他の委員と一緒に作成しています。項目追加はもちろん、マスターから情報を呼び出して欲しいと要望を受けたときは、ルックアップの方法を教えていただいて実装したことも。エンジニアでない私でも作れるぐらい簡単なのがkintoneの大きな魅力」と評価する。

医療法人敬愛会 中江病院 診療支援部長 診療放射線技師 中村 晶夫氏

医療法人敬愛会 中江病院 システム管理室主任 診療放射線技師 児玉 唯史氏

ここりんくを提供している株式会社プレアデスセブンについては、「ある程度は自分たちで作成できますが、できないことについて相談すると、JavaScriptを駆使しながら素早く作り込んでいただけるなど、とても助かっています。また医療業界に強みを持っているため、いちから業務を説明するような手間がかからないのもありがたい」と児玉氏は評価する。システム改修もクラウドサービスであるkintoneだからこそ、すぐに反映できる点も大きな魅力だと梅橋氏は力説する。

kintoneマスターを増やしながら、病院内のあらゆる情報が集まる基盤へと進化

 今後については、現場での課題をさらに拾い上げていきながらkintoneに業務を集約させつつ、システム管理室や地域連携室以外の各部署でもkintoneにてアプリ開発可能な人材を増やしていきたいという。「kintoneを業務の核として位置づけ、自分たちで現場の課題が解決できるよう権限委譲しながら環境づくりを進めていきたい。各部署に1人ずつkintoneマスターがいると理想的」と梅橋氏。また、現状電子カルテ上で作成しているものは電子カルテのシステム上でしか閲覧できないが、部署によっては電子カルテを利用していないところもある。将来的には、電子カルテの情報もkintoneを通じて閲覧できるようにするなど、病院内の情報共有基盤としてkintoneを進化させていきたいという。

 さらに、人事考課の仕組みを新たに検討しており、職員の人事評価につながるような仕組みづくりにもkintoneを活用していきたい考えだ。「医療法人としては、この病院以外にも精神科の病院を運営しているため、こちらの業務についてもkintoneが生かせる場面があるはず。そちらも含めた情報共有基盤へと成長させていきたい。他にも、新たに検討している在宅系の支援事業への展開時にも活用できるよう、今後も拡張していくつもりです」と赤塚氏に今後について語っていただいた。

(2019年1月取材)

【この事例の販売パートナー】
株式会社プレアデスセブン

TEL:096-273-7911
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Web:https://www.pleiades7.co.jp/cocolink/

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