モリビ 様の導入事例

モリビ

【業務内容】
不動産管理・リフォーム空き家活用事業
【利用用途】
受発注管理・問い合わせ管理
  • 42万枚の紙を削減、コストダウンを次の投資につなげる
  • 独裁者と呼ばれたkintone担当者が、感謝と共感でつかんだ社員の信頼

株式会社モリビは、長野県長野市に本社を置き、賃貸住宅から一般住宅、空き家まで、住まいのリフォームやリノベーションを手がけている。 県内に4つの拠点があり、社員は55名ほどだ。情報システム部門がなかった同社において、業務改善を任されたのが管理部/経営企画室の植田剛士氏。 ITに疎いメンバーが多い中、どのように社員の理解を得ながらkintoneによる業務改善の取り組みを進めたのか、植田氏にお話を伺った。

思った以上に使いやすかったkintone。しかし一方的な業務フローの押し付けが完全な裏目に

植田氏は、2015年に営業としてモリビに入社。松本市の営業所長を勤めた後、僧侶になることを志ざし、内勤業務への異動を希望。業務改善に関心が高かったため、経営企画室の担当となる。コミュニケーションは紙とFAXと電話という超アナログなスタイル。メールやExcelは使っているのもの、情シス部門はなく、ITを作れる人も使える人もいなかったという。

「14年前に経営陣がフルスクラッチで作った見積発注用ソフトがありましたが、当時のままメンテナンスされていない状態。時代に合わせて変化していくはずの入力項目を変えられないので、使っていない項目に全く異なる内容を入力するということが起こっていました。案件管理もExcel・読めないメモ・頭の中など担当ごとにバラバラで、担当が休みの時にお客様から問い合わせがくると答えられないのが当たり前になっていました

取引先との受発注もFAXがメインで、書類に間違いがないか、二重三重のチェックをしていた。アナログであるがゆえの業務を大量にこなしている状態だったという。そんな中、森山アリエル代表取締役社長が顧客からアンケートを取りたいと考え、kintoneとフォームブリッジを導入したのだ。
※トヨクモ株式会社が提供するkintone連携サービス

「最初はうちのメンバーが使いこなせるか不安でしたが、いざkintoneに触れてみるとイメージよりもずっと簡単で、アプリをすぐに作れました。これなら日々の業務にも使えるかもと感じましたね」

さっそく植田氏は、案件の進捗管理や社用車管理のアプリを次々に作り、非効率な業務を次々に改善していく。これでよくなるかと思いきや、落とし穴にはまった。社員の強い反感が生まれたのだ。社員たちは、自分がいままでやってきた業務が無くなることに怖さを感じていた。たとえ非効率でも、一人一人は誇りを持って作業してきた。それを奪われることは、これまでの自分の仕事が否定されることと同義だった。こうして植田氏は孤立した。

「完全に僕の見込みが甘く、社内の評判は最悪でしたね。『自分の帝国を作ろうとしている』『社長のつもりなのか』と社員から言われ、ときには独裁者と呼ばれたこともありました」

FAXからkintoneアプリに移行した進捗管理アプリ

社員への向き合い方を改め、一人一人に意義を説明。本当の業務改善がスタート

植田氏はここで考えを改める。社員を怖がらせ、反感を買ってしまった原因は、この取り組みの意義をきちんと伝えず、社員の共感をおろそかにした点にある。そう考え、kintoneによりそれぞれの業務がどうよくなるのか、11人に説明するところから始めたという。

「それまでは、社員に対して『今までのやり方をやめて、今後はこうしてください』と一方的にお願いしていました。その後は、まず今までの働きに感謝した上で、それを変えることで『あなたはもっといい働き方ができるし、評価されるようになる』と、業務改善による価値を伝えるようにしたのです」

経営企画室 室長 植田剛士氏

たとえばkintone活用が進むと、FAXや電話のやりとりにかかっていた時間が短縮され、楽になる。残業が減り、空いた時間を自由に使える。そのようにして「楽しい未来が待っていること」を想像してもらったという。

「仏教には『応病与薬(おうびょうよやく)』という言葉があります。病に応じて薬を与えるという意味ですが、全員一律に押し付けるのではなく、社員それぞれの業務や気持ちに合わせて、丁寧に伝えていきました

すると徐々に反対勢力は減り、社内は協力の姿勢に。そして植田氏は、いよいよ具体的な業務改善に着手した。まず取り組んだのはペーパーレス化だったが、ネックになるのは取引先の中にFAXでやりとりする企業が多いこと。自社の書類をデジタル化するのはいいが、取引先も同じようにしてくれとは言いにくい。

「そこでDocuWorks※kintoneを連携しました。取引先から届いたFAXをデータとして受信してkintoneにデータを取り込み、モリビから取引先へはkintoneのデータから出力したファイルをFAXに変換して送ります。この改善のインパクトは大きく、紙は約42万枚削減、書類管理の棚を8台捨てたのでオフィスが広くなりました。kintoneにデータがあることで、営業が進捗状況を外出先からでも確認できるようにもなりました」
※富士フイルムビジネスイノベーション株式会社が提供する文書管理アプリケーション

一方、とある新規取引先にはこんな提案をした。その企業は受発注書の雛形を営業担当者ごとに作っており、形式はバラバラ。また、普段のやりとりも電話がメインというアナログな企業だった。植田氏は、kintoneで両社が使える受発注の仕組みを作れば、お互い便利になると思いついた。実際に構築した仕組みは次のようなものだ。

取引先が「フォームブリッジ」で作ったフォームから受発注内容を登録
モリビがkintoneで内容を確認して、案件を進行。進捗状況は随時アプリで更新
取引先は「kViewerで進捗状況を確認
取引先は点検表などの必要な書類を「プリントクリエイター」で出力
※トヨクモ株式会社が提供するkintone連携サービス 

「私たちの業務が楽になったのはもちろん、取引先の方にもとても喜んでいただけました。電話で進捗を都度確認する必要もなく、見たい時にkViewerを見ればわかりますから。業界全体で業務改善できるかもしれないと思いましたね。すでに別の取引先でもこの仕組みを導入しています」

植田氏は、賃貸物件の入居者アプリも構築した。通常、設備トラブルが起きると、入居者から電話が来て、専門業者が一度現場を調査して見積もりを出し、大家に確認後、再訪して修理を行うというフローだった。それを次のような仕組みに変えた。 

入居者から着電後、モリビからフォームブリッジで作成した入力フォームのURLSMSで送信
入居者はトラブル内容と写真をフォームに登録
モリビ側で登録内容をもとに必要な工事と見積りを作成し、大家に確認
初回の訪問で修理を実施

「訪問が1回で済むようになり、入居者の方々にも喜んでいただけるようになりました。最近では社員から『kintoneに対する要望を出せる場が欲しい』という声があり『ご意見ボックス』というアプリを作りました。改善要望がどんどん上がるようになりましたね。アプリは作って終わり、ではなく、現場で使う人の声をもとに改善し続けることが重要です。改善スピードも上がっています

入居者からの不具合報告フォーム

浮いたお金をITに再投資。進む業務改善と広がった働き方の選択肢

モリビでは、前述の通り、紙の使用量は約42万枚削減され、約28万円が浮いた。また、紙にまつわる業務人件費は17万円から8万円に削減できたという。

「私たちは、これらの浮いたお金をITツールの追加投資に回しています。固定費を増やすことなくプラスオンで投資できたのは大きいですね」

もうひとつ、大きな効果があった。これらの業務改善を植田氏とともに推進してきたのが、同僚の早川氏。ある時、その早川氏が夫の転勤により新潟に引っ越すことに。ここで早川氏が抜けると、勢いに乗った業務改善にブレーキがかかるかもしれない。そこで、植田氏は早川氏のフルリモート勤務を社長に直談判した。すると2つ返事で了承。kintoneの業務改善は、働き方の選択肢をも増やしたのだった。

一時はkintone担当者が独裁者と呼ばれ、対立が生まれた株式会社モリビ。しかし現在、社員が一体となって業務改善に取り組んでいる。その転機になったのは、植田氏が一人一人にこの取り組みの意義を伝えたことだった。確かな結束とともに、これからもモリビの挑戦は続いていく。