みずほ信託銀行
- 【業務内容】
- 承継/相続や不動産、金銭・有価証券の運用をはじめとした信託業務
- 【利用用途】
- 本部―営業店間の情報連携高度化、顧客管理、案件管理、RPA
みずほフィナンシャルグループにおいて信託分野を担っているみずほ信託銀行株式会社では、これまで培ってきた強みを最大限に発揮しながら、デジタライゼーションへの取り組みを加速させることで業務の効率化を推進している。そんな業務効率化の一環として、従来Excelを中心に行ってきた本部と営業店との円滑な情報共有を実現するための基盤としてkintoneを採用している。その経緯について、リテール・事業法人推進部 営業推進室(2021年3月時点) 室長 薮内 崇氏、同室 調査役でkintone管理を手掛ける勝股 広明氏、同役にて遺言信託推進を担当する坂本 篤氏、そして法人営業推進を担当する片山 裕紀氏にお話を伺った。
みずほフィナンシャルグループにおいて承継/相続や不動産、金銭・有価証券の運用をはじめとした信託機能を担っているみずほ信託銀行株式会社。資産・事業承継や老後資産の形成・生活サポートなどの個人向けサービスとともに、事業承継や資産流動化、年金、証券代行といった法人向けサービス、法個共通での不動産サービスなど、顧客のニーズに最適な信託ソリューションを提供している。
中堅中小企業や個人向けの取引を中心に手掛けているリテール・事業法人推進部において、営業部門の活動における施策推進、各種支援を行っているのが営業推進室だ。特に信託銀行が取り扱うものは、法人向けであれば不動産や年金、証券代行、資産流動化に関連したもの、個人向けには遺言信託をはじめとした承継/相続を支援するもの、法個共通での不動産取引など、手掛けている商品サービスは多岐にわたっている。「業務の性質上、少量多品種で仕様、税制対応の変更も多いため、大規模なシステム化には不向きでした。そのため今までは、紙やExcelを使って本部と営業店との情報共有を行ってきました。通常は10を超えるExcelのリストを本部側で作成、分割、配布し、今度は営業店で各担当者が入力。その後営業店ごとに集約し、本部に報告してもらっていましたが、すべて手作業で行っていたことで業務の負担が大きくなっていたのです」と薮内氏は当時の状況について振り返る。
みずほグループ全体で業務効率化が叫ばれるなか、リテール・事業法人部門でも業務効率化に資する仕組みづくりが急務となっていた。そこで、紙やExcelでの情報のやり取りから脱却し、新たな情報共有基盤を整備することで、本部と営業店の情報共有スピードを向上させ、業務の効率化につながる仕組みづくりを目指したプロジェクトをスタートさせることになる。
新たな基盤整備に向けて念頭に置いていたのが、「内製化」できる仕組み作りだった。「本部も営業店もExcelには慣れていましたが、システム開発を推進できるだけのリテラシが十分備わっているとは言えません。また、システム開発を外部に委託しても、スケールメリットが得られません。年次で仕様変更・税制対応などを行っていては、開発スピードやコストがペイできず市場の変化に対応することは難しい。ただ、今や商品企画や業務企画をするうえでシステム化が避けられない。それならば本部のITリテラシそのものを向上させていくことが必要だと考えたのです」と薮内氏は説明する。
内製化できる仕組みを検討するなかで出会ったのが、ノーコード・ローコードでシステム開発できるサイボウズのkintoneだった。「デモを見てすぐに、十分我々でも開発していける、システムを内製化できると直感しました」。実は海外製品も選択肢の1つとして挙がったものの、データ周りの知識とデータの構成をしっかり理解する必要があるなど、開発できるスタッフが限定的であった。
さらに、kintoneなら金融機関として求められるセキュリティ基準もクリアした。「業務によっては個人情報も含めて取り扱うため、外部システムの導入には相応のセキュリティ水準が求められます。セキュリティチェックの結果、当行が求めるセキュリティ水準を十分満たしていると判断しました」と薮内氏。
特に使い勝手の面では、ドラッグ&ドロップで業務に必要な項目を並べていくだけで開発できるだけでなく、豊富なテンプレートが用意されていることも大きなポイントだった。「顧客管理アプリなどテンプレートを見ることで、業務でどう動かしていけばいいのかイメージしやすかったのは大きい」と薮内氏。不要な項目は見せないなど、インターフェースを自由に作り変えることで、Excelが浸透していた現場でも十分使いこなせると判断したという。
検討を開始後1か月ほどでkintoneによる実証実験をスタートさせ、使用感を確認。その結果、kintoneが、本部と営業店の情報共有を加速するための業務基盤として採用されることになる。
現在は、本部や営業店の行員あわせて1700名ほどに対してkintoneのアカウントを配布している。PCはもちろん営業担当者に配布されたiPadでも利用可能となっているため、本部と営業店とのタイムリーな情報共有が可能となっている。
「以前は、多くのExcelシートを使って月1回のタイミングで報告してもらっていました。すると、どうしても集計処理が月末に集中してしまうだけでなく、1か月前の古い情報になってしまうケースも。今では日々の情報がつぶさに把握でき、施策の状況判断も迅速になっています。新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークを余儀なくされていましたが、タブレットとkintoneが本部と営業店の情報共有の迅速化を達成したことでスムーズに業務が継続できています」と勝股氏は評価する。
60店舗ほどある営業店のペーパーレス化による紙帳票削減や各種作業の進捗状況の見える化はもちろん、本部側でも集計作業に必要な情報を選択し作業に適したレイアウトで出力できる等、業務負荷の軽減にも大きく貢献しているという。
法人営業の案件管理や営業プロセス管理が可能なアプリでは、顧客となる法人ごとに資産状況が管理されている。営業がアプローチした内容を書き込むことで、本部が立案した施策の進捗状況がタイムリーに把握可能だ。
「従来はExcelでの報告でしたが、今ではkintoneを確認することで、営業店ごとの具体的な施策の進捗状況がすぐに把握できます。成約実績も含めて多くの項目が管理できるようになり、案件の詳細も把握しやすい」と片山氏。
さらに、各営業店から寄せられていた営業実績に関する多くの問い合わせについては、個別のQAアプリを設けている。質問に対する回答を集約・全ユーザが閲覧可能とすることで問い合わせ電話の数を減らすことに成功している。
遺言信託関連では、顧客の資産状況に応じてどんな提案が最適なのか、提案したことで把握した新たなニーズなどをリストとして管理するアプリを用意している。「遺言をお預かりさせていただいているお客さまの資産状況毎のニーズに対応するための着眼点などをアプリ内に盛り込んでいます。お客さまと面談している際にも画面を開いて確認しながらヒアリング可能で、ノウハウも含めて共有できるので、営業担当者提案スキル向上にも役立っています」と評価するのは坂本氏だ。施策に応じて本部側でフラグを立てるなど、kintoneであれば項目追加なども容易だという。
また、法人営業担当者のスキル判定を行うアプリもある。アプリ内には社内の通達と連携できるよう附番が実施され、kintoneでいつでも閲覧できるようになっている。各担当者が取引先に対する活動実績を詳細に記載し、申請を行うことで上席者がスキル判定を実施することが可能だ。
「以前は特定のフォルダ内に保管されている個人別のExcelのシートに各担当者が入力し、上席者がそのチェックを行っていました。それを報告する別のExcelに上席者が転記し、その情報を本部の我々が集計するという、全て手作業での業務となっていました。今ではkintoneに担当者が入力し、その画面上で上席者がチェック、その情報を簡単に本部側で集計できるようになっています」と片山氏は評価する。
開発されたアプリ自体は200を超える。必要な施策の内容に応じて新たなアプリも開発されており、各所で自主的な業務改善が進んでいる状況だ。現在は本部と営業店の情報共有を目的とした利用を中心に、業務に活用している。
たとえアプリ開発が未経験であっても、比較的容易に情報入力しやすいアプリが作成できる点はkintoneの大きな魅力だという。「在宅勤務に移行したタイミングもあり、家でYouTubeに上がっている解説動画などを見て試行錯誤しながら作成しました。VlookUPもままならないレベルでしたが、ペタペタ張り付けていくだけで開発できるのはとても分かりやすい」と坂本氏は開発の容易性を高く評価する。
片山氏も「Googleで検索するだけでkintoneに関する多くの情報が入手でき、開発未経験の私でもアプリ制作できました。2か月ほどで普通にアプリが作れるようになったのは驚きです」と評価する。
< kintoneのホームページで公開されている解説動画コンテンツ >
同社ではRPAシステム「UiPath」が導入済みであったが、kintoneと組み合わせることで、RPAの活用と業務改善が大幅に進んだと語る。運用しているアプリのなかで特徴的なのが、RPAと連携させることで各システムから情報を取得するアプリだ。例えば「提案書作成(遺言契約)」アプリでは、財産配分案を営業店担当者がkintoneから依頼することでRPAが自動で取得し、提案資料に展開したうえでkintoneを経由し還元されるようになっている。ほかにも、複数システムから個別収集していた顧客取引情報を代わりに収集しkintone上で還元するなど、「手作業で作成していた提案資料の自動作成、RPAを活用した最新の情報の営業店還元により、営業店担当者の日常業務の効率化を実現できるようになりました」と勝股氏は説明する。
今後も、現在展開しているリテール・事業法人部門にて新たな施策に応じたアプリを適宜開発し、継続して本部と営業店との情報共有を円滑に行う環境づくりを行っていく計画だ。また、現状は収集した情報をExcelにてグラフ化しているが、今後より一層の業務効率化が必要であると認識しているという。また、現状は業績推進を企図した利用を推進しているが、現場にかかる業務の負担軽減によって業績向上につながるようなものがあれば、行内事務の効率化に向けたアプリの展開も中長期的に検討していく可能性はあると指摘する。(2021年10月取材)
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