三田理化工業 様の導入事例

三田理化工業

【業務内容】
製造業
【利用用途】
案件管理・受発注管理・日報報告書
  • 1.5時間の商談準備を5分に短縮、属人的な管理を脱却し
  • 能動的にアクション出来る業務環境の構築に貢献するkintone

洗浄滅菌技術を生かした医療機器や理化学機器、製剤機器の開発製造販売を手掛けている三田理化工業株式会社では、三代目となる後継者が入社したタイミングでサイボウズのkintoneを導入、営業部門や修理部門、製造部門など全社横断的な情報基盤を整備しており、その経緯について専務取締役 千種 純氏にお話を伺った。

【課題】将来も見据え、働く社員全員に優しい業務環境の構築を決意

調乳のリーディングカンパニーとして日本の小児栄養を支える

1949年に創業し、病院に対して長年培われた洗浄滅菌技術と創造力によって開発された医療機器や理化学機器、製剤機器など提供している三田理化工業株式会社。特に粉ミルクを用いて乳児の飲用に適した状態の人工乳をつくる調乳に関して、調乳室のレイアウト設計から、洗浄・滅菌・調乳水製造、充填、殺菌、冷蔵、それらを利用する消耗品の販売、そしてアフターメンテナンスまで含めた各種ソリューションを提供するなど、調乳のリーディングカンパニーとして日本の小児栄養を支えている。

三田理化工業株式会社 千種 純氏

引継ぎはA3用紙一枚、メモを取りながら案件を把握する状況に感じたハードルの高さ

そんな同社では、販売管理などを行う基幹システムを運用してきたが、顧客情報や営業活動履歴、商談情報、そして修理の履歴や進捗情報などは全てメールやExcelなどを用いて属人的に管理されており、情報共有が十分に行われていなかったという。「私が後継者として入社した当時、顧客ごとの情報は各部署に分散されて管理されていました。入社してすぐに営業に配属された際、引継ぎ資料としてもらったのはA3の紙1枚のみで、営業の先輩に同行してメモを取りながら案件を把握するという状況。会社や取引先、機器のことなど学ぶべきことがたくさんあるなかで、十分な引継ぎ資料も揃っていない。今後入社してくるメンバーにも同じようなやり方で引き継ぎを行うのは、非常にハードルが高いと感じました」と千種氏は当時を振り返る。

 社長の指示で営業の訪問件数を増やす計画を立てたとしても、実際の訪問情報はそれぞれの営業担当者しか分からない状況だった。営業会議でも訪問件数の全体像が把握しにくい状況の中で、PDCAを回していくことも難しかった。「社員はみんな優しく優秀ですが、新人に対する環境としては正直厳しい。後継者として、このままでは事業を引き継ぐことはできないと感じ、顧客を中心とした販売履歴や修理状況などが誰にでも共有できる仕組みが必要だと考えたのです」と千種氏。そこで、入社後わずか3か月ほどで「誰にでも使いやすい業務基盤」を整備することを決断したという。

【選定】すべての部署で活用出来る、顧客を軸にした情報共有が必須
文系出身にも使える専門知識不要の汎用的なツールが必要だった

当初は営業支援のためのSFAツールを検討したものの、機器事業の営業だけでなく、消耗品営業や機器の修理担当も含めて顧客を軸に情報共有する環境が必要だと考えた千種氏。

「修理担当であれば、機器の納入マスターをベースに修理の履歴や進捗状況を管理する必要がありますし、消耗品の営業担当であれば過去の納入履歴などから次に提案するタイミングを把握できるような環境が必要です。単に営業活動だけを効率化しても意味がありません。実情に合わせて作り込める、汎用性の高いツールが我々にとって必要でした」。

  そこで注目したのが、前職で利用経験のあったkintoneだった。「当初はMicrosoft AccessSalesforceも検討しましたが、文系出身の私にとって専門知識が必要なツールを使いこなすのはハードルが高い。一方kintoneであれば、ドラッグ&ドロップで簡単にアプリが作成できます。YouTubeTwitterなどのSNSからも情報が豊富に入手できるため、自分でアプリを作っていけると考えたのです」。

 kintone導入当初、まずはこれまで営業担当がメールで報告していた日報をkintoneアプリで報告してもらうように変更を試みたが、なかなか運用に乗せることができなかったという。「やり方が変わることにすぐに対応できない社員の気持ちも理解できました。それでも、いずれ蓄積されたデータは会社の財産になりますし、これから会社として絶対に必要なものになるのは間違いないと考えたのです」。

導入後1年ほどは軌道に乗せることができなかったものの、修理営業部署内の事務スタッフが作った別のkintoneアプリの利用が進んだことで一念発起。これまでお願いしていたkintoneアプリでの日報報告を「ルール」としたことで、次第に活用が促進されるようになったという。

【効果】1.5時間かかっていた営業準備が5分に短縮するなど業務効率に貢献するkintone

資料作成の時間も大幅に短縮し、残業時間も大きく減少。さらに突発的な対応ではなく計画立てて取り組める環境に。

営業現場の業務効率化に、kintoneは大きく貢献している。以前は商談のたびに顧客情報や過去の経緯を取りまとめており、商談準備に1件あたり1.5時間ほどかかっていた。いまではkintoneに登録されている顧客情報をチェックするだけなので5分もかからず商談準備が整うという。

mitarika4.png

 また、これまで作業工程に応じて同じ情報を何度も入力するなど無駄な作業が発生していた業務も、kintoneを活用し業務基盤を整備したことで、1度入力した情報が後の処理でも活用できるようになり、業務の効率化に大きく貢献している。「例えば修理業務では、現場で入力する情報だけでなく、修理の予定管理や修理履歴など複数のExcelシートに同じ内容を何度も記載していました。今はその手間がなくなり、記入ミスも減らしながら工数削減につなげることができています」と千種氏は評価する。

mitarika5.png

kintoneの導入により情報が整備されたことで売上にも変化が起きている。以前は納品した機器の点検よりも修理を行う件数の割合が多かったが、顧客軸の案件管理を実現したことにより、今では修理や点検の状況が顧客ごとに可視化でき、適切な時期に点検提案がしやすくなっているという。「1年前に修理したお客さまをリスト化することで、点検の案内が出しやすくなり、故障してから動くのではなく、事前に提案して動ける体制になっています。これまでは壊れてから修理する事が多くありましたが、kintoneによって、点検の案内が行えるようになったことで、点検比率は50%を超えるように。5年ほど前までは28%だった点検比率が伸びた事で安定した売上を確保でき、故障を未然に防げるようになりました。お客さまにご迷惑をおかけする機会が減り、修理部隊としても突発的な対応ではなく計画立てて動けるようになっています」と千種氏は高く評価する。

mitarika6.png

計画的に動けるようになった結果、社員の残業時間も大きく減らすことができるなど、1つの改善が社員の働き方改革にも大きく役立っている。

使い勝手を重視し、誰でも等しく情報が入手できるような環境整備に奮闘

現在はパソコンを持つ全社員30名ほどにkintoneのアカウントを付与しており、誰でも等しく情報が入手できる環境を整備している。「以前は社長を中心としたトップダウンの文鎮型組織で、組織間の情報は社長を経由してやり取りする構造で見えづらかったのですが、今は他部署でも情報が把握できるようになっています」。

 使いやすさ重視の観点から、kintoneの標準ポータル画面も大きくカスタマイズしている。
タブ表示でアプリやカレンダー、ダッシュボード、スペース、マニュアルなど必要なポータルへの移動が容易になっている。ボタンレイアウトや色分けなどデザインも工夫しながら、必要なアプリにすぐアクセスできるように作り込まれ、改善活動も常に行われている。できるだけ使い勝手のいい仕組みを目指して日々奮闘しているという。

mitarika7.png

Excelと紙で運用していた業務をkintoneに変えてもらうためには、できるだけ分かりやすくしなければ使ってもらえません。使いづらいことがあればすぐに修正するなど、日々使い勝手をよくすることは特に意識しています」と千種氏。

業務アプリだけでなく、コミュニケーションの活性化にも貢献するkintone

 営業現場では他にも多数のアプリを活用している。「顧客議事録」アプリでは誰がいつどの病院に訪問してどんな話をしたのかを記録している。「営業案件進捗」アプリでは、案件ごとの受注確度や日報を記録した数などが一覧画面から確認できる仕組みとなっており、顧客議事録に記載された件数を集計するkintone連携サービスを用いて営業案件進捗アプリに表示するなど、アプリ間の連携も行われている。「納品先マスター」アプリでは、病院ごとの担当者や部署、哺乳瓶の利用状況などが顧客を軸に確認できるだけでなく、機器の納入実績や消耗品の手配状況、修理進捗が可視化可能だ。「各部署でそれぞれアプリに情報を入力すれば、全て納品先マスターに反映できるようにしています。訪問前に納品先マスターさえ見ておけば、機器の稼働状況や消耗品の提案タイミングなどもすぐに把握できます」と千種氏は説明する。

  現場からの要望があれば、新たなアプリを作成して業務に役立てているケースも多い。例えば製品開発に必要な各種計測器は、精度を維持する校正作業を年に一度実施しているが、それらの校正状況を把握する「計測器登録台帳」は現場からの要望で作成したもの。さらに計測器を持ち出す際に利用する「計測器持ち出し」アプリは、新人で入社したメンバー自らが作成するなど、アプリが制作できるメンバーも増えつつある。他にもコミュニケーション活性化につながる「なんでも投稿掲示板」アプリなど、距離の離れた事業所間のコミュニケーションを増やすきっかけづくりに重宝している。問い合わせなどを管理する「クレーム報告書」アプリだけでなく、顧客から評価されたポイントを共有する「嬉しかったノート」アプリも用意している。

ノウハウや経験を組織で分担、社員が能動的にアクションできるサッカーチームのような組織を目指し、kintoneとともに成長していきたい

 「従来の仕組みは社長が20年、会長が50年かけて作り上げてきたもので、入社4年の私がその経験をすべて受け継ぐごとはできません。社長が担ってきた役割や経験、ノウハウをできるだけ組織で分担していき、社員一人一人が能動的にアクションできる、一緒にプレーしていけるサッカーチームのような組織に変えていきたいと考えています。kintoneは、そのために必要な情報を蓄積できるもので、我々と一緒に成長できるツール。そんな役割として今後も期待しています」と千種氏の思いを最後に語っていただいた。(2022年1月取材)