美濃加茂市社会福祉協議会 様の導入事例

美濃加茂市社会福祉協議会

【業務内容】
ボランティアセンター、子ども食堂、福祉教育、高齢者サロンの運営など
【利用用途】
車両管理、会員管理、要支援者管理マップなど
  • 介護予防から生活支援まで多岐にわたる福祉事業をkintoneで見える化
  • 美濃加茂社協が目指す災害時に対応できる情報管理体制

「社会福祉協議会」略して「社協」は、全国の市町村ごとに置かれている機関で、ボランティアセンター、子ども食堂、福祉教育、高齢者サロンなど、地域の福祉に関わる事業を多岐にわたって行っている。美濃加茂市社会福祉協議会は岐阜県南部にある美濃加茂市の社協だ。職員数は約100名。パソコンが苦手でExcelを使うのも難しいという職員が少なくない。その中で福祉教育やボランティアセンターを担当する地域福祉係主事 麻生 涼介氏、係長 長谷川 武司氏にkintone導入のきっかけと活用法についてお話を伺った。

増加する災害。避難者の所在やボランティアの受入対応など現場の情報管理に感じた課題

社協は有事の際、災害ボランティアセンターの運営を行う。被災地でのニーズの把握、ボランティアの受け入れ、人数調整、資機材の貸し出しなどの役割を担っている。近年、さまざまな災害の増加に伴い、災害ボランティアセンターが立ち上げられる機会も増えている。しかし、災害ボランティアセンターの運営には、ICTの導入やクラウド化がなかなか進まず、紙ベースでの作業量の多さ、サーバー故障時のリスクなどが課題となっていた。

この状況を改善したいと考えた長谷川氏は、情報収集を始め、地元の商工会のセミナーでkintoneを知ることとなる。そしてkintone導入の検討を進めていた最中の2016年、熊本地震が発生。長谷川氏は被災地支援で現地へ赴いた。

「現地の避難所で活動していると、『家族がどこの避難所にいるのか知りたい』という問い合わせがありました。被災直後は、避難所ごとで避難者の受付名簿を管理されており、すぐに他の避難所の情報を把握することは困難な状況でした。有事での情報共有の重要さを実感し、クラウドサービスの必要性を強く感じました」(長谷川氏)

熊本から戻ると長谷川氏はkintone導入に向けて動いた。ただし、クラウドサービスを利用することへの抵抗は強く、説得は簡単ではなかった。停電や水害によるサーバー故障のリスクや、熊本での経験をもとに、クラウドサービスの必要性を粘り強く説明し、ようやく承認されたのだ。

地域福祉係 係長 長谷川 武司氏

しかし、現場の職員にとって、有事の際にのみ新しいツールを導入して活用することはハードルが高い。そこで、有事の際、スムーズにkintoneの活用を行うため、平時からkintoneを活用することを考えた。

美濃加茂社協の事業の一つに市内在住の65歳以上の方が、介護予防を兼ねて福祉施設などボランティア活動に取り組む「介護支援ボランティア事業」がある。利用者の増加に伴い、ボランティア調整業務が多忙となったため、担当職員1名での対応が困難になっていた。

 そこで、kintoneを導入し、ボランティアと福祉施設などのマッチングをkintoneアプリで行うことにした。まずは、業務をフローチャートで見える化し、それをもとにアプリを作った。今までは、主にFAXで連絡を行うことが多く、FAX用紙が机の上に積み上げられ、担当職員にしか調整状況を把握することができなかった。kintoneアプリ導入後、調整状況が画面に集約でき、担当者不在時でも他の職員がアプリで調整状況を確認することが可能となった。また、紙の管理からkintoneに変わったことで、検索や情報整理などが劇的に改善され、事務負担が減った。

苦節2年。パソコンに不慣れなスタッフがkintoneアプリを使えるようになるまでの道のり

kintone導入までこぎつけたものの、社協職員の中には、パソコンに不慣れで「クラウドってそもそも何?」というメンバーが多かった。

 「最初は大変でした。サイボウズのサポートに電話で何度も問い合わせて、使いながら覚えていきました。構築をサポートいただいていたアントベアクリエイツの森田氏に相談しながら、紙のマニュアルを作成したり、使ってみて使い勝手の悪いところをヒアリングしたりして改善していきました」(長谷川氏)

 そして、kintone導入から2年が経ったころ、美濃加茂社協に入社したのが麻生氏だ。麻生氏にアプリ構築の経験はなかったが、パソコン操作などは比較的得意だった。すぐにkintoneの操作に慣れ、他の職員にも教えられるようになった。一部の職員だけで使っていたアプリを若手はもちろん年配の職員も使えるようになり、さまざまな事業のkintone化が進んだ。

「『介護支援ボランティア事業』が成功体験となって、徐々に職員全体の意識が変わっていきました。『あの事業でうまくいったなら、自分たちの事業でもできるかもしれない』とExcelで管理しているさまざまな情報をkintoneに入れようという声が上がるようになりました。現在の業務を整理して、どう改善したいのか、そのためにどんなアプリを作ればいいのか、ということを繰り返して、いろんな業務を改善するためのアプリができたのです」(麻生氏)

 その一つが「要支援者管理マップ」だ。市内のひとり暮らし高齢者や障がいのある方など支援を必要とする人と、民生委員や地域の社会資源をkintoneに登録し、地図情報に反映することで効率的にマッチングすることができる。平時に生活支援を必要とする方は、有事の際にもニーズが生まれやすい。社協内でkintone活用が進むことによってこのような潜在ニーズに対応する仕組みも実現できるようになった。

地域福祉係主事 麻生 涼介氏

kintone活用で相互支援やコストダウンが実現。kintoneで他の社協とのつながりを広げたい

現在、美濃加茂社協のkintoneアプリの数は100にのぼる。もともと携わる事業が多岐にわたり、社協内でも事業間の横の情報共有はあまりできていなかった。それがkintoneによって共有できるようになったという。

「コロナ禍で生活に困っている方に貸付を行う事業があります。kintoneで横の情報共有ができるようになったことで、貸付だけで終わるのではなく、必要に応じて学習支援・生活支援も行うなど、事業間で連携して相互支援ができるようになりました。またボランティアは活動するボランティア団体が複数にわたっていることもあり、同じ人が重複して登録している場合があります。そのため本来一人あたり一契約でいいはずのボランティア保険に、重複加入しているケースがありました。さまざまなボランティアの登録をkintoneで管理するようになってこの加入状況が分かるようになり、重複加入の解約によってコストを削減することができました」(麻生氏)

ポータル画面から様々なアプリへアクセスできる仕組みになっている

生活支援やボランティアなど業務フローが一つの型に収まらない事業を複数展開している社協にとって、業務に合わせてアプリを構築できるkintoneの柔軟性こそが非常に重要だと麻生氏は語る。そんな麻生氏に今後の展望を伺った。

kintone活用を美濃加茂社協だけでなく、多くの社協に広めていきたいです。同じプラットフォームを使う仲間が増えれば、活用方法を共有しあってさらなる業務改善を進めることもできますし、いざと言う時には遠隔支援もできます。ボランティアの方の善意と困っている人のニーズをつなげるという福祉の役割をスムーズに遂行していくためにも、社協間で情報共有して、現場のさまざまな課題が改善されていくといいなと思います」(麻生氏)

 福祉の現場での情報共有。kintoneがより多くの方々の善意をつなぐ一助を担えるよう願ってやまない。