ミエデン 様の導入事例

ミエデン

【業務内容】
自治体/民間/医療機関 へのシステム導入・サポート
【利用用途】
社内申請,入館申請,お弁当注文
  • 導入から約2年で社員300人にkintoneを浸透させたプロセス
  • ファイルサーバーは闇鍋状態、散らばる情報…
  • 情報共有の壁を壊す方法

1967年に設立され、三重県の自治体や企業へのITシステム導入、保守・運用などをサポートしてきた株式会社ミエデン(旧・三重電子計算センター)。同社は、自社のファイルサーバーの複雑化や情報の属人化という課題を抱えており、それらをkintoneで解決していった。しかし、その過程ではさまざまな壁が立ちはだかることに。それらをどう乗り越えていったのか、kintone担当としてこの改革を進めた情報戦略部の山田駿氏とそれを支えた常務取締役の小柴文明氏が振り返る。

「情報の共有不足が会社の機会損失になるのでは」という危機感からkintone導入。5ユーザーからのスモールスタート

株式会社ミエデンは1967年設立。三重県のIT企業としては老舗であり、昔からのやり方や手順、文化を守る風土が定着していた。その結果、さまざまな課題が生まれていたという。山田氏が2020年に新卒で入社したときは、こんな状態だった。

「ファイルサーバーには同じようなファイルがいくつもあり、欲しい情報を探すのに苦労しました。まさに闇鍋状態(笑)。加えて、大事な情報は先輩の脳内にあり、ノウハウも共有されていませんでしたね」(山田氏)

山田氏

アナログな業務フローも多かった。例えば、社員が自社のデータセンターに入館する際は書類申請が必要で、上司の押印をもらった後、社内便で担当部門に送付する。このフローだけで1、2日を費やしていたという。

「そこで2021年にkintoneを導入し、まずは営業部門のみ、5ユーザーだけのスモールスタートで始めました。最初に作ったアプリは2つ。情報の属人化を防ぐために、顧客ごとの案件情報をまとめたアプリと、日々の営業活動を集約したアプリを制作して、2つを連携させたのです。kintoneアプリストアにあるサンプルアプリをほぼそのまま使う形で、プログラミングの知識がなくても簡単に作れましたね」(山田氏)

最初のkintone導入を裏で後押ししたのは、2021年に中途入社した、経営企画部本部長(当時)の小柴文明氏。当時、経営面から会社を見たとき、売上が伸びあぐねていたという。その原因を考える中で、情報共有できていないことによって、商談や営業の機会損失になっているのではと小柴氏は考えた。

そこで浮かび上がったのがkintone導入だ。小柴氏が前職で利用していたSalesforceも検討したが、入力項目が多くこの会社での活用は難しいと考えた。できるだけシンプルにして、柔軟にカスタマイズできるという点を重視し、kintoneを選択。導入を進めるにあたり、社内の情報共有に課題を感じていた山田氏に声をかけた。山田氏も「気になっていたあのkintoneだ!やった!」とやる気になり、一緒に導入を推進していくこととなった。

最初に作った2つのアプリがうまくいったので、2022年には全社展開を目指すことに。このタイミングで情報戦略部という部門ができ、山田氏は正式なkintone担当となった。小柴氏と相談しながら、まずは全社に展開する目的・狙いを明確にしたという。

「設立から50年以上の間にできた、この会社のさまざまな壁を壊そうと考えました。壁とは、システム的な壁もあれば、社員の中にある心理的な壁も含まれます。守りに入ってしまう風土や、情報の属人化によりできていた部門間の距離がその例です」(山田氏)

小柴氏

「こんなモノに金を使うな」と批判の声。

しかし、いざ全社展開を始めると、その壁の高さを思い知る。まず立ちはだかったのが、社内に残るレガシーシステムやアナログの壁だ。システムは古い様式が使われ続け、誰もメンテナンスせず、いざメンテナンスしようとしても、そのやり方を知る人もいない。日付が「平成35年」と表示されているシステムもあった。つまり元号変更が決まってからアップデートされていないのである。これ以外にもアナログな業務フローが多く残っていた。これらをkintoneに置き換えるのは想像以上の苦労だったという。

「もうひとつの壁は、社内の反応ですね。『こんなモノに金を使うな』という声もありました。これまでが“守る文化”だったからこそ、新しいものへの脅威は強く、『ミスが怖いから使いたくない』という声も聞かれましたね」(山田氏)

挫折しかけた山田氏だったが、このとき小柴氏から、社員が昼食で取る出前やお弁当の注文アプリをkintoneで作ろうという提案を受けた。当時、社員がランチの出前注文をする際のシステムが古く、使い勝手がよくなかった。

 「kintoneを全社に浸透させるには、全員が使わざるを得ない状況を作る必要があると考えました。じゃあ全員が使うものってなんだろう。人はみな腹が減る、それなら『お弁当注文アプリ』がいいんじゃないかと」(小柴氏)

山田氏は早速2つのアプリを作った。会社周辺の飲食店のメニューと料理写真、価格や社員のクチコミを載せた「メニューアプリ」と、実際の注文に使う「注文アプリ」だ。2つを連携させて、メニューを選ぶとそのまま注文できるという仕組みを実現した。  

「レコードの追加や編集、集計といったkintoneの基本機能をアプリに盛り込むことで、使った社員がkintoneの利便性を理解できるようにしました。画像を使ったわかりやすい使い方ガイドも作成。次第にお弁当のクチコミで盛り上がるなど、社員がゆるくつながれる場所になりましたね」(山田氏)

すると変化が起きはじめる。「お弁当アプリが便利だから、自分の業務でもkintoneを試してみよう」と社員たちがアプリを作り始めたのだ。同社では「現場の業務を知り尽くした人が良いアプリを作れる」と考え、社員が自由にアプリを作り、情報戦略部はそのサポートを担う体制をとっていた。

「社内からのkintoneについての問い合わせが急増したため、質問受付アプリを作成。これもサンプルアプリを参考にしましたね。ワークショップも開催し、社員が業務で感じているモヤモヤや課題、それをどう改善したらいいかを、ゆるく話し合う機会を設けました」(山田氏)

 このようなワークショップは初めてで、部署をまたいだ交流が進み、組織の“壁”を取り払うきっかけとなった。また、会社の業務を前向きに改善したい社員、意欲の高い社員を見つける場にもなったと小柴氏はいう。

「あるワークショップ参加者が、懸案だったデータセンターの入館申請アプリを作成。いままで書類のやりとりで1、2日かかっていた手続きが5分で済むようになったのです。併せて、お客さま用の入館申請も『フォームブリッジ』※を使って電子化できました」(山田氏)

※トヨクモ株式会社が提供するkintone連携サービス  

メニューアプリ

データセンター入館申請アプリ

数字以上に大きかった「社員のマインド変化」。いずれは業務改善のアイデアを出し合うコンテスト

ここから一気にkintoneの浸透は加速。データセンター入館申請アプリで得たノウハウを横展開し、約70種類の申請をkintoneに集約した。古いシステムの廃止によるコスト削減は年間約300万円。各種承認にかかっていた時間の短縮は年間約6000時間に上るという。

「何より大きかったのは、社員の心にあった壁が取り払われ、マインドが変化しつつあることです。私たちも業務改善してみようと、それぞれの部署で声が上がるようになってきました。今までの守る風土から、社員同士がゆるくつながり、新しいことにチャレンジするマインドになってきたと思います」(山田氏)

今後目指すのは、全社員がkintoneを入口に業務改善を考えられる状態になること。そのために新入社員研修や管理職研修を工夫していく。さらに業務改善のアイデアを出し合うコンテスト(ハッカソン)も開きたいと考えている。

2020年から約2年でたくさんの大きな壁を取り払い、マインドの変化まで起こし始めたkintone改革。山田氏をはじめ、情報戦略部のスタッフは、アプリを作る社員に伴走し、一人にしないようサポートしてきた。一方、小柴氏はここというタイミングで山田氏にアドバイスをし、ここでも担当者を一人にしないよう伴走してきた。経営と社員、情報システム部門と現場、みんなが助け合って進める企業風土こそが、同社の今後の成長を支えていくことだろう。