MBS毎日放送 様の導入事例

MBS毎日放送

【業務内容】
近畿広域圏を放送対象地域とするラジオ、テレビ放送事業者。MBSテレビは4チャンネル、MBSラジオ周波数は1179kHz,90.6MHz
【利用用途】
定額制動画配信サービス「MBS動画イズム444」のコンテンツマネジメントシステム(CMS)としての活用
  • kintone × AWS連携によるサーバーレス・アーキテクチャの採用で動画配信の新サービスをわずか3か月で構築

株式会社毎日放送(以下MBS)は、4チャンネルでお馴染みの近畿広域圏を放送対象地域とする民間放送局。2016年末、同社は、無料見逃し配信サービス「MBS動画イズム」に加えて、月額444円(税抜)の定額制有料動画配信サービス「MBS動画イズム444」を新たに開始した。
この新規事業は、なんと構想からわずか3か月という短期間でサービス立ち上げを果たした。スピーディーなプロジェクトを支えたのは「kintone」(キントーン)を含むクラウドサービスを積極的に取り入れ、従来の動画配信サービスの常識を覆すサーバーレス・アーキテクチャを取り入れたことにある。
今回、このプロジェクトを指揮した毎日放送編成局コンテンツビジネス部 部次長 中川貴博氏、経営戦略室メディア戦略部 副部長 濱口伸氏にクラウドを積極的に取り入れた狙いとその効果についてお話を伺った。

後発参入の新規事業、だからこそ他と違う要素を取り入れる

「情熱大陸」など絶大な人気を集めるテレビ番組を1週間無料で視聴できる見逃し配信サービス「MBS動画イズム」。好調なこのサービスを拡大する形で、有料定額制のサービス検討が始まったのは2016年8月頃のこと。

だが有料の動画配信は大手テレビ局やIT企業などが相次いでサービスを開始しており、各社がしのぎを削る厳しい市場環境。MBSは後発で参入するからこそ、構想段階から競合サービスと差別化できる仕組みを意識していたという。

編成局コンテンツビジネス部 部次長 中川貴博氏

「有料の動画配信は、例えば、東京のキー局などは3〜5年ほど早く取り掛かっている事業ですが、そのプラットフォームには多額の初期投資と広告宣伝費をかけており、会員数も100万人規模というビジネスです。一方、関西では、動画に対する意識が整ってきたのはここ最近で、市場規模などを鑑みると同じ戦略をとることは現実的ではありません。採算性が取れる範囲からスタートし、会員数の増加に合わせて徐々に規模拡大できるような仕組みが良いと考えました。」(中川氏)

日進月歩で進化する動画配信サービスは、採算性はもちろんのこと、市場環境に対応するスピード性・柔軟性・スケーラビリティを兼ね備えた基盤が必要となる。これらの課題を解決できるサービスを目指し、複数のSIベンダーに声をかけたというMBS。だが、「従来の動画配信サービス」を想定した提案は、開発が年単位となり予算・工数ともに折り合いをつけることが難しい。そんな状況の中で、クラウドサービスを前提としたベンダー(cloudpack)からの提案に可能性を感じたという。

「2014年、弊社で企画した番組(MBSハッカソン)にスポンサー協力いただいたご縁で声をかけさせていただきました。アマゾンウェブサービス(以下、AWS)、『kintone』などクラウドサービスを組み合わせることで、1から開発する工数を削減し、運用コストも圧縮できる工夫を盛り込んでいただきました。完全なサーバーレスという、従来のやり方に囚われない提案に共感し、難しい相談ではありましたが、最後はこちらからオファーさせていただいた形です。」(中川氏)

最新のサーバーレス・アーキテクチャで事業成長・変化にも柔軟に対応できる仕組みに

限られた期間で理想のサービスを実現するため、プロジェクトは「配信する作品を集める権利交渉」「システム開発」「Webサイトデザイン」これらの取り組みをすべて並行して進める体制を敷いたMBS。また、開発手法は要件定義を終えてから開発に入るウォーターフォール型ではなく、開発途中においても調整や変更が可能なアジャイル型の開発手法が取り入れられた。この選択が功を奏し、開発スピードを最大化できたと濱口氏は語る。

経営戦略室メディア戦略部 副部長 濱口伸氏

「新規事業の立ち上げということもあり、8月の段階でなんとなくのアイディアを敲きに提案をいただき、そこから変更と調整を繰り返しました。開発とデザインをワンストップでお願いできたのでスピードを落とさずプロジェクトを進めることができたと思います。また、『kintone』を始めとしたクラウドサービスを積極的に取り入れたことによって、通常かかる人月をかなり短縮できたので、11月頃にはアイディアが形になっていく手ごたえを感じました。」(濱口氏)

番組を配信するバックエンドのコンテンツ管理システム(CMS)として採用された「kintone」。その活用メリットは、開発工数や運用コストの削減はもちろん、業務に合わせて手軽にカスタマイズできる柔軟性や、MBS運営スタッフが迷いなく使いこなせる親しみやすいユーザーインターフェースも大きな評価ポイントだ。

「『kintone』は自由度の高さが魅力ですね。例えば、配信コンテンツは単発からシリーズものまであり、初回放送の表記も第1話、シリーズ1、エピソード1、~編など様々で、メタデータの種類は多岐に渡ります。細かなことですが、重要で、汎用的に使えるようフリーフォーマット項目を増やしています。1から構築するとこういった仕様変更も何人日かの工数が発生しますが、『kintone』だと項目を調整するだけなので打ち合わせ中に設定が終わるくらいの手軽さです。」(中川氏)

①番組一覧画面から番組の新規登録項目を選択

②番組/エピソード管理より番組メタ情報を登録、プレビューにてサービスWeb画面を表示し確認

「『kintone』画面からサービスWeb画面をプレビュー表示する機能や、ユーザー視聴情報を取り込んでグラフで表示する仕組み、Excel にデータを出力してレポート作成する機能など、より便利に使える工夫を JavaScript カスタマイズで実装しています。ストレスがない操作性で、番組の登録から公開までの作業も我々で対応できます。自分たちでできる領域が多いのでサイトに愛着を持って業務に向き合えるとスタッフの評判も上々です。」(濱口氏)

従来は外部エンジニアに依頼しなければ難しい要件も「kintone」との組み合わせで実現しているMBS。現場ユーザーの利便性も考慮した高度な実装が叶う点も採用メリットと言えるだろう。

③ステージング環境を経由して本番環境に公開。

(システム構成図について)

WebシステムはAWSのサーバーレス・アーキテクチャ「AWS Lambda」を全面採用することで、インフラ全体の運用コストを大幅に削減。高負荷にも強く、セキュアな構成となっている。「kintone」はバックエンドのコンテンツ管理システム(CMS)として採用され、開発期間の圧縮と運用負荷の軽減に貢献。「kintone」のJavaScriptからJavaScriptのAWS SDKを利用する事によりS3へのサムネイルやJSONファイルのアップロード処理が簡単に実現できるようになった。その連携メリットを生かし、他クラウドサービスのデータ表示や加工が可能となり、データ管理のハブとしても機能している。構成はAWSの急なスパイクで「kintone」のAPIが一時的に捌ききれない場合、またサービスダウンしている場合でも、Amazon SQSなどにキューイングさせることで可用性を高める工夫が取り入れられている。

出典:cloudpack(運営:アイレット株式会社)

2016年12月20日、当初の予定どおりに「動画イズム444」のサービスを開始したMBS。今後は配信コンテンツを順次増やしながら、視聴者ニーズ合わせた新たなサービスの開発や改善に取り組んでいくという。

「タイトなスケジュールでしたが、無事に良いスタートを切ることができました。サーバーレス・アーキテクチャや『kintone』のおかげで、コストや負荷の心配もなく運用できています。早速、視聴者からも要望をいただいており、次の機能改善の検討を始めているところです。認証、支払い方法の充実やソーシャル強化、モバイルアプリケーション対応も予定しています。視聴者に喜んでいただける新しいサービスをどんどん取り入れていきたいですね。」(濱口氏)

進化を続けるサービスは始まったばかり。MBSのチャレンジは続いていく。

構築を担当したcloudpack(運営:アイレット株式会社)サーバーレス開発チームリーダーと

【この事例の販売パートナー】
アイレット株式会社 cloudpack事業部

TEL:0120-677-989
Email:sales@cloudpack.jp

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