久世 様の導入事例

久世

【業務内容】
外食産業向け業務用食材の卸売/メニュー提案/食材カタログ販売
【利用用途】
顧客対応・受注管理、SFA活用、全社の営業ナレッジ共有、kintone AI活用による業務効率化 等
  • 業務改善しながらためたデータが資産に。kintone×AIで1,000時間削減と成約率85%を実現した久世の挑戦

1934年の創業以来、日本の多種多様な食文化を支えてきた業務用食材卸の老舗、株式会社久世(以下、久世)。5万を超える顧客口座と6万アイテムもの膨大な商品を扱う同社では、長年「ベテランの勘と経験」に頼った属人化が大きな課題だった。

しかし、2017年のkintone導入を機に、同社は劇的な変化を遂げる。約1,100社にのぼる仕入先様メーカーとのやり取りを改善し、約1,000時間の残業時間を削減。その後も活用の幅を広げ、kintoneに蓄積された約8万件のデータを「kintone AI」で活用。商品知識が少ない新人でも即戦力になったり、戦略的な経営判断へと繋げたりするなど、一歩先を行くDXを実現している。その変革の軌跡について、株式会社久世 経営戦略推進室 DX推進専任担当の澤田氏に話を伺った。

【課題】バラバラな情報管理と、属人化した営業スタイル

kintone導入の出発点は、カスタマーサポート部(発注センター)における約1,100社にのぼる仕入先様メーカーとのやり取りにあった。ゴールデンウィーク、お盆、年末年始は、仕入先様メーカーが休業に入る一方、卸し先の飲食店や食品小売は繁忙期を迎える。この時期に合わせて各メーカーの休業日情報を事前にExcelFAXで収集し、バラバラな書式を人力で調整する作業が発生していた。「株式会社」と「()」、「201831日」と「2018/3/1」といった表記の揺れを手作業で統一するだけで、1回の長期休暇あたり約300時間、年間で約1,000時間の残業が積み重なっていた。こうした非効率の背景にあったのは、仕組みがなく、人力に頼っていたことだった。一方、営業現場では属人化した営業スタイルが深刻化していた。過去にSFA導入を試みたが、定着しなかったのだ。澤田氏はその本質的な難しさをこう語る。

株式会社久世 DX推進専任担当 澤田氏

「正直、SFAはやってもやらなくても、営業活動はなんとかなってしまうんです。入力することで業務が増えるし、現場は今月の売上が大事だから、先のことは後回しになる。これが負のスパイラルです」。 属人化された営業スタイルでは、達成感もやりがいも「自分の中」で完結し困りごとも共有されない。ノウハウがベテランの頭の中に蓄積されるだけで、組織として再現性のある営業の仕組みが作れない状況が続いていた。

【選定】「将来の自分が楽になる」仕組みで現場が納得。たまったデータで価値を体感できるkintone AI

変革の転機は2017年。澤田氏はカスタマーサポート部に異動したのをきっかけに、非効率だった仕入先様メーカーとのやりとりのDX化を進めることを決めた。「外部の部署から指示を出すだけでは、長年積み上がった現場のやり方は変わらない」。自ら現場に入り、仕組みによって属人化を排除する、という強い決意があった。 

選定されたのは、現場主導で柔軟にアプリを構築できるkintoneだった。まずは、仕入先様メーカー側が直接休業日を入力できるウェブフォームを構築。仕入先様は、選択形式で注文の締切日などを記入していくだけで済むようになった。久世側も、FAXの仕分けやデータ転記という「人がやらなくていい作業」をkintoneに移行させたことで格段に作業が楽になり、結果として年間1,000時間の残業削減という劇的な成果を上げた。 

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(メーカーにフォームで登録してもらった内容は、kintoneで一元管理している) 

さらに営業現場でのSFAの再挑戦にあたり、澤田氏は「現場のメリット」を最優先に伝えた。ただ「入力してほしい」と強制するのではなく、「日々の商談記録をkintoneに入力しておけば、自分の業務の刈り取りや進捗が皆で把握できる。また、それが週次・月次の報告データになるため、わざわざ会議用のExcelや資料を作る手間が減少する」「担当変更の際も、kintoneを見れば過去の経緯がすべてわかるため、膨大な引き継ぎ資料を作らなくて済む」といった具体的な見返りを示したのだ。 

その結果、「日々の入力の積み重ねが、近い将来の自分を楽にしてくれる」と実感した営業担当者が日々の活動でkintoneを使うようになっていった。ポータル画面は自然と営業を軸とした設計になり、他部署との情報共有も自然と生まれていった。 

(営業メンバーがよく使うアプリを、目立つ位置に配置したポータル画面)

そして2025SFA運用から1年が経過。5,900件の案件データがたまり、そのデータをもっとうまく活用できないかと考え始めたタイミングで、kintone AIの利用を開始した。kintoneは現場が使い慣れているツールであり、かつすでにデータがたまっている。まず現場がAIの価値を体感するための最初の一手として、kintone AIは最適な選択だった。また、一般的な生成AIに関しては、活用に向けた社内ルールの整備はこれからという段階だったkintone AIであれば自社のクローズドなデータ内だけで安全に活用できる。それもkintone AIを利用する決め手の一つとなった。 

【効果】個人の勘から、組織の判断へ。kintone×AIが変えた久世の営業スタイル

現在、久世ではkintoneを約280名で利用し、アプリの数は300を超える。その中には約8万件のレコードが蓄積され、インサイドセールス、フィールドセールスなど、あらゆる業務の起点となっている。 

【活用例①】インサイドセールス:問い合わせ回答時間を半減し、成約率85%を実現。新人を即戦力に変える「kintone AI 

kintone活用例の一つ目は、通称「KUZEX」と呼ばれるインサイドセールスの仕組みだ。LINEを問い合わせの入り口として、専任チームがオンラインで顧客対応から注文まで完結させている。すべての問い合わせ内容はkintoneに蓄積され、現在はレコード数が6万件を超えた。ハロウィン、クリスマス、花見の季節など、問い合わせの傾向をデータで把握できるようになり、商品提案や仕入れ判断にも活用されている。 

LINEを窓口とした問い合わせ対応が定着したことで、1日300件以上あった電話問い合わせは数件にまで激減した。問い合わせから20分以内に回答するルールのもと、15名のチームが月間6億円規模の販売を担うまでに成長している。 

このKUZEXに組み合わせたのが、kintone AIだ。kintone上の検索チャットでAIに質問すると、kintoneのアプリに登録されたデータから適切な回答を生成できる。この機能を利用後は、お客様への回答作成にかかる時間が半分以下になった。

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例えば「ハロウィン向けに何かないか」といった問い合わせに対して、従来はキーワードで検索し一件一件確認する必要があったが、kintone AIでは蓄積された6万件のデータを横断的に参照し、関連する過去事例や提案内容をまとめて提示してくれる。在庫検索でも同様で、倉庫名や商品名など複数の条件を設定して絞り込む手間なく、「在庫のあるイタリアンドレッシングを教えて」と自然言語で入力するだけで必要な情報が整理されて返ってくる。これにより、商品知識の少ない新人でもすぐに回答が可能になった。リードタイムが短くなったことから、顧客の満足度も向上。見積書を提出した案件の約85%が成約という、高い精度を実現している。 

【活用例】フィールドセールス: AIがリスクを検知し、的確なフォローを実現 

kintone活用例の二つ目が、フィールドセールス向けの仕組み、通称「KUZE Smart Connect」だ。kintoneと法人企業データベースを連携し、約5万口座の顧客データを整理したうえで営業日報や案件情報を蓄積している。 

ここでは、レコード一覧の内容をAIが分析・要約するkintone AIが活躍する。週次の営業報告データをAIが要約するため、マネージャーは案件状況をスピーディに把握できる。会食前に企業名を入力すれば、直近のやり取りや過去の商談内容がその場で要約される仕組みだ。以前は営業担当に直接確認していた情報を、自分ですばやく把握できるようになった。

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また、特筆すべきは、人間が気づきにくい不整合の抽出だ。外部の企業情報データベース「ユーソナー」と連携し、AIが「取引先の与信は低いが、案件金額が非常に大きい」といったリスクを自動でピックアップ。マネージャーへ即座に同行フォローを促す示唆を出すなど、データの裏付けに基づいた的確な営業判断が可能になった。 

さらに、システム定着の最大の鍵となったのが、「役員が案件を閲覧し、アプリのコメント欄に他の部門もコメントや、レコードに『いいね』をつける」という運用だ。これにより、以前は営業担当が手の内を隠すような文化から、困りごとも成功事例もオープンに共有される文化が定着した。澤田氏は営業社員にとって、自分の商談に社長や会長からコメントが来るのはモチベーションになります。役員が見ていると、中間管理職にも自然と火がつく。相互にいい影響がある」と語る。 

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(案件アプリ内での、社長と新卒2年目の営業担当との会話) 

kintoneでコミュニケーションが増え、チームワークが強化された結果、ここ2〜3年で離職率は低下社員同士が協力し合いながら働ける環境づくりにつながったことは定量的な数字以上に大きな価値となっている。kintoneが組織の風土そのものを変えつつあるのだ。 

【展望】「今データを蓄積すれば、5年後・10年後に差が生まれる」データに基づく戦術で「人にしかできない価値」を最大化する組織へ 

kintone AIを活用して大きな成果をあげる久世だが、まだ挑戦は止まらない。今後の展望として、kintone上の商談データと基幹システムの実績データの統合、そしてAIによる「戦略的なプライシング」などへの活用を見据えている。構造化データと非構造化データを統合して活用する形だ。

久世がデータとAIの活用を通じて最終的に目指すのは、「人にしかできない価値」の最大化だ。「依頼ごとはデジタルで正確にいち早く行い、困りごとの解決や提案など、人にしかできない価値の創造に集中することが大事なんです」と澤田氏は説く。 

属人化の壁を打ち破り、データと仕組みを手に入れた今、同社の営業担当者は資料作成や情報探しに追われることなく、顧客との対話や提案という本来の業務に注力できるようになっている。データとAIを、同社が掲げる「食の力で、想いをつなぐというミッションを体現するためのインフラとして育てていく、それが久世の次なる挑戦だ。 

最後に、これからさらにAIを活用していきたいと考えている企業へ向けて、澤田氏はこう結んだ。 「AIがあっても、データが無ければ何もできない。5年後、10年後に差を付けるのは、今この瞬間のデータ蓄積なんです。kintoneとAIは、その価値を全社員が実感するための大きなきっかけになると思います」。 老舗企業・久世の挑戦は、デジタルの力で「人にしかできない価値」を最大化させるための、確かな成功モデルとなっている。 

(2026年3月取材)