光成工業 様の導入事例

光成工業

【業務内容】
粉体塗装パレット、ラック等、運搬用及び収納保管用機器の製造 等
【利用用途】
日報、受発注管理、案件管理
  • 作業効率は1.5倍、残業70時間をゼロに
  • あえて全社導入から始めたkintone。
  • 社内浸透の秘訣は「楽しむ」ことだった

全社員の日報をkintoneにしよう!と掲げたものの、なかなか活用が進まない。 そこである企画を突破口に、浸透を図っていく。 そんな取り組みで成果を収めたのが、岩手県一関市の光成工業だ。
工場内の運搬に使うパレットやラックをはじめ、鉄製品の加工から販売までを一貫で行う同社では、営業と製造現場の情報共有がうまくいかないという課題を抱えていた。その対策としてkintoneを導入したのだが、社長の村上耕一氏は、営業と製造現場の情報共有アプリにとどめず、日報として活用することを提案。 全社員への浸透を目指すこととなる。 社内にはITに馴染みのない社員も多い中でどう進めたのか。同社のkintone導入チームとして取り込みを率いた畠山成光氏が振り返る。

設計から製造までオーダーメイドで作れる自社の強みの影で
営業と製造現場の「言った言わない」が深刻な課題に

光成工業の大きな特徴は、受注する製品の半数以上が新規案件、つまり今まで作ったことのない型や様式であることだ。なぜなら同社は、設計から加工・製造まで一括で請け負うことができ、取引先の工場・物流ラインに合うパレットやラックをオーダーメイドで作るのが強み。そのため製造にあたっては、営業と製造現場で細かく情報共有することが重要となる。しかし実際には、営業からの情報がうまく製造現場に伝わらず、言った言わないが日常茶飯事になっていたという。会社の強みに関わるからこそ、対策が必要だった。

「社長の村上がとあるセミナーでkintoneを知り、2019年にkintoneを導入しました。ただし社長は、せっかく新しいツールで情報を共有するなら、一部の課題解決で終わらせず、全社員で使うツールにしたいと言うのです。そして日報をkintoneにすることが決定。私を含め、社内のさまざまな部署から4人のメンバーが集まり、kintone導入チームを発足しました。さっそく日報として使い始めましたが、しばらくは浸透せず、入力率は18%ほどにとどまっていたのです

光成工業 畠山氏

しばらくして村上社長からメンバーに緊急招集がかかり、活用が進まない原因を話し合う事になった。その結果、本気で日報をkintoneに変える「覚悟」を社員に見せることが必要と考え、急きょ2日後の全体朝礼で決意表明を行うことになったという。これも村上社長の提案だった。

「あまりに急でしたし時間もないので、何をしようか悩みました。でも途中で吹っ切れて、みんなが楽しめる決意表明の動画を作って流そうと考えたんです。それなら社員に伝わりやすいでしょうし、なにより、俺たちは楽しいことが好きだっちゃと(笑)。それから1日で絵コンテを書いて、動画を撮りました。たまたまチームに動画撮影の得意な社員や、絵コンテをかける美術教員の資格を持った社員がいたので、その特色をうまく活かすことができましたね」

紙の日報の完全廃止を全社朝礼で宣言
日報の入力率は倍増。社員が楽しむことで広がったkintone活用

作った動画の内容は、朝礼から52日後の10月1日に、紙の日報を完全廃止することを宣言するもの。ただし、その事実をただ伝えるのではなく、何も知らない社員が紙の日報廃止の知らせを受け取り、リアクションする様子を撮影・編集して流した。

「迎えた101日にはキックオフイベントを開催し、日報用紙の原本を破り捨てる儀式も実施しました。パソコン上の日報データも消しましたね。もう後戻りできないという『覚悟』を社員全員で持つことができた瞬間だったと思います。効果も上々で、kintoneの日報入力率は宣言動画後に2倍、キックオフ後にはさらに2倍へと増加し、81%に達しました

一気に普及は進んだが、まだ利用していない人も一定数いた。すると今度は、kintone導入チーム以外の社員たちに変化が生まれた。社内の安全衛生グループが定期的に実施している社内イベントで、kintoneを使った謎解きレクリエーションを企画・実施したのだ。kintoneを便利だと感じる社員が増えたことで、その社員たちから「もっとkintoneを広めよう」という動きが起こり始めたのだ。最初にあえて社員全員の日報からkintone導入を始めようといった村上社長のアイデアが、まさに効果を発揮した瞬間だった。

イベントでは「安全」に関するさまざまな問題が用意され、参加者はkintoneで回答を入力するというものだった。ゲーム感覚で楽しみながらアプリに触れることで、社員から「kintoneってこんなこともできたんだ」「使ってみたいと思うきっかけになった」という声が聞かれたという。

「あるベテラン社員はそれまで持っていなかったスマホを購入し、kintoneで日報を入力してくれるようになりました。とはいえ、いきなり通常の入力は難しいので、その日に作業した内容の『受注番号』と『作業開始・終了時刻』のみ入力するその社員専用の日報アプリを作成しました。我々が予実管理を行う上では、最低限この情報さえわかれば大丈夫でしたから」

ベテラン社員用の日報画面

各部署やメンバーに合わせて入力しやすく個別に作成した日報アプリのデータは、「krew Dataを使って全体の集計を行なっている。(※メシウス株式会社が提供するkintone連携サービス。複数のkintoneアプリにまたがるデータを自動で集計・加工することができる。)

こうして日報が全社に浸透すると、いよいよ根本の課題に取り組んだ。営業と製造現場の情報共有だ。これまで営業が受注した案件は、Excelの受注表に入力した後、Dropboxにアップロードして製造現場と共有していた。kintoneの受注表アプリでは、営業が商談の内容や変更点を入力すると、製造現場はすぐその情報を見られるようになった。逆に営業側では、受注案件について納品までの進捗状況をリアルタイムで確認できるようになったのだ。

「最初は見慣れたExcelの受注表を好む人もおり、しばらくは並行して使っていました。そこで、見た目や操作感をExcelに近づけることができる『krewSheet』(※メシウス株式会社が提供するkintone連携サービス )を利用したところ、好評でkintoneへの一本化に成功。受注表の入力率も2倍に跳ね上がりましたね

社内が明るくなり、メンバーを褒めるアプリも登場。
事業ツールとして展開の可能性も

最大の課題だった営業と製造現場の情報共有がスムーズになったことは、ほかにもさまざまな効果をもたらした。Excel時代に比べ、分散した情報を転記し、Dropboxへアップロードする必要がなくなった。ちょっとした手間ひまが必要なくなるという改善が積み重なり、畠山氏の受注表を管理する作業効率は1.5倍に、70時間あった残業はゼロになった

見た目を工夫した受注表アプリ

「作業が楽になったことはもちろんなのですが、kintoneで情報共有することが根付いてきて社内の雰囲気が良くなり、仕事もしやすくなりました。以前は言った言わないの問題があり、営業と製造現場の距離が遠いと感じる時もありましたが、とても良い関係性になってきましたね」

社員がkintoneで作った「陽口アプリ」も、会社の雰囲気向上に一役買っている。これは誰かへのお礼や「この人がこんないいことをしていた」という発見を自由に登録できるもので、「あるイベントのとき、急な予定変更に対して○○さんが進んでフォローしてくれた」「敷地内の注意すべき場所をわかりやすく説明してくれた」などがその一例。面と向かうと照れて言えないような、ちょっとした感謝やお礼を伝えやすいという。

そのほかにもkintoneによる業務改善はいろいろ出ています。たとえば、私たちの使う塗料は呪文のような名称ばかりで、それを見ただけでは社員でさえどんな色かわからないことも。そこで塗料名の横に色アイコンをつけて一目でわかるようにしました。また、申請書類もkintone化した事で、社長が外出先でも確認が取れるようになり、承認作業もスムーズになりましたね」

同社は今後、kintoneを営業や新事業のツールとして活用することも見据えている。たとえば製造業では、さまざまな構造物の「耐荷重計算」を行う場面がある。その計算を可能にするkintoneアプリを構築し、耐荷重計算を請け負うことで顧客開拓の糸口にするといった使い方を想定している。そのほか、kintoneを使った会計ツールの開発も検討しているという。 

全社員の活用を目指し、「楽しむ」をスローガンに進めた光成工業のkintone導入。広く社内にkintoneを浸透させた同社では、今後もいたるところで次の展開が起きるかもしれない。