神戸デジタル・ラボ 様の導入事例

神戸デジタル・ラボ

【業務内容】
ITコンサルティング、システム開発・運用・保守、情報セキュリティサービス、先端技術開発等
【利用用途】
案件管理・顧客管理(CRM)、管理台帳、日報・報告書、社内アンケート
  • 人類kintoneマスター化計画〜入社二年目の若手社員がkintoneを全社に普及させるまで〜

阪神大震災直後の神戸で産声を上げ、地元のお客様と共に成長を続ける株式会社神戸デジタル・ラボは、お客様のビジネスを加速させるWebサービスやアプリ開発、産学連携による先端技術サービスの開発、世界最高レベルのWebセキュリティ診断など、お客様とITを結ぶトータルサポートを行っている。同社では現在、社内の各部門でkintoneが活用されているという。その背景には、『人類kintoneマスター化計画』と名付けられた、入社二年目の若手社員によるkintoneの導入から全社普及に至るまでの壮大なストーリーがあった。今回はそのストーリーの主人公である、開発管理部 武富 佳菜氏に登場していただいた。

【背景】以前のシステムは現場から不満の声が続出。自社の体質に合ったシステムへのリプレイスを検討

■海外製システムに現場から不満の声が

 もともとは、海外製のアプリケーションシステムを利用して、SFAやCRMシステムを構築していた。しかし、国内のユーザーが少ない製品であるため、その運用にはさまざまな課題があった。

 「以前のシステムは、項目追加などのちょっとしたカスタマイズをするにも、独自のプログラミング言語を使って開発をする必要がありました。しかし国内にユーザーが多くないため、システムを使っていて困ったときに相談したり、他社事例を調べたりすることができませんでした。またサポートもあまり充実しておらず、かなりの運用コストがかかっていました」(武富氏)

 また、使い勝手についても、現場から様々な不満の声が上がっていたという。

「たとえば、お客さまとのやり取りの履歴をシステムに入力しているときに、30分ほど経過すると自動的にセッションが切れてしまい、それまで書きかけていた内容が全て消えてしまう…ということはよく発生していました。また、営業メンバーなど、外出が多い人はスマートフォンからシステムにアクセスすることもありましたが、PCビューにしか対応しておらず、画面が小さくて非常に見づらい、という声も上がっていました」(武富氏)

株式会社 神戸デジタル・ラボ 開発管理部 武富 佳菜氏

■新システムへの移行担当に入社2年目で抜擢

運用コスト、現場からの不満など、さまざまな要因が積み重なり、新システムへの移行プロジェクトが始まった。そしてその主担当として抜擢されたのが、当時入社二年目の武富氏だった。

【導入】各部署のユーザーを巻き込み、新システムを社内に浸透させる取り組みを実施

■プログラミングの知識がなくてもアプリが作れる点を評価

新しいシステムの要件について、武富氏は当時を振り返る。

「私自身、文系出身のためプログラミングはほとんどできません。なので、ノンプログラミングである程度カスタマイズができること、誰でも簡単に使えること、また以前のシステムで不満が上がっていたスマートフォンでの利便性などを重視してサービスを選定しました」(武富氏)

 その後、kintoneのセミナーに参加した上司の薦めもあり、30日間無料試用を申し込んだ。武富氏に、kintoneの第一印象を聞いた。

「まず『コードを書けなくても、こんなに簡単にシステムが作れるのか』と感動したことを覚えています。試しに、以前使っていたシステムの画面に似せて顧客管理アプリを作ってみたのですが、大体30分くらいでシステムが完成しました。そのとき、これならできる!と確信しましたね」(武富氏)

■システム導入の段階から各事業部を巻き込み、現場から共感を得ることに成功

 導入までは比較的スムーズに話が進んだものの、次に課題となったのは現場のユーザーから上がる不安の声だった。

「いくらkintoneが使いやすいからといっても、ユーザーにとっては全く新しいシステムであることには変わりません。使い方を一から覚えなければいけない、新システムが不便だったら仕事に影響が出てしまう、など不安の声が上がってくることも考えられました。また『管理部門が勝手にやって!』という不満が噴出しないよう、プロジェクトの進め方には細心の注意を払いました」(武富氏)

 そこで武富氏が実践した方法は3つ。1つ目は「管理部門が勝手にシステムを変えた」という現場からの不満を避けるため、システムの選定や構成などについては全て、各事業部の代表者によるWorking Groupの中で決定したという。 2つ目は「使ってみたけど不便で困る」という声を極力減らすために、事前に社内でモニターを募集して、テストアプリを実際に使ってもらった。そこで出た意見を元に、本番リリースに向けて機能の修正などを行った。 そして3つ目は「使い方が分からない」というユーザーに向けた社内勉強会の実施。武富氏が自ら講師となり、kintoneの使い方を学ぶ場を設けることで、ユーザーから「これは便利なシステムだね」と共感を得ることができたそうだ。

【効果】社員から「kintoneでアプリを作りたい」という声があがるようになり、社内全体の業務改善意識が高まった

■kintoneの運用開始、さまざまな施策でユーザーからのフィードバックを得る

 こうして同社では、SFAやCRMを兼ねたシステムとしてkintoneの運用が始まった。主に顧客管理や営業情報、営業報告などさまざまなアプリの情報を連携させて利用している。

「まず顧客情報をベースに、営業メンバーが営業情報を登録します。そこに受注予定の金額をテーブルで表示したり、関連レコード機能で顧客ごとの案件履歴を表示したりしています。特に関連レコード機能は、1つのページを見れば複数アプリの情報を一覧で見られるので、たくさん使っています」(武富氏)

 kintone 導入には、ユーザーの声を特に重視した武富氏。モニターを使ったテストや社内勉強会などさまざまな施策を打ち出したが、ユーザーの反応はどうだったのだろうか。

「kintoneの本運用を開始した後も、継続して率直な意見を聞くようにしました。概ね使いやすくなったという意見が多かったですが、『データの検索がしづらくなった』という声もいくつか耳にしました。そこで、簡単に検索ができるプラグインを社内で作って対応しました。ほとんどはkintoneの標準機能で作られていますが、どうしても機能追加したい部分は社内でカスタマイズする運用を行っています。使いながらシステムを改善していけるのは、ユーザーにとっても管理者にとっても、大きなメリットだと感じています」(武富氏)

■社内の管理台帳のほとんどをkintoneへ移行

さらに、当初予定していたSFAやCRMとしてのシステム以外にも、徐々にkintone活用の場が社内に広がっていった。あるとき、情報システム部門で管理していたパソコン管理台帳のExcelファイルが壊れてしまう事故が起きた。その際、武富氏がkintoneへの移行を勧めたところ、結果的にパソコン管理台帳をはじめ、スマートデバイス管理台帳やメールアカウント管理台帳など、社内のほとんどの台帳をkintoneに移行したそうだ。

「Excelで台帳を管理していたときは更新者の名前を手入力していたのですが、kintoneは変更履歴や更新者が自動で残るので、その点が情報システム部門のメンバーにとても喜ばれました。また、フィールドごとのアクセス権設定もExcelには無い機能だったので、利用者からの『管理表を見たい』という要望に応えられるようになったようです」(武富氏)

 こうした取り組みが功を奏して、社内では徐々にkintoneが広まり、今では現場のユーザー自らkintoneでアプリを作るようになったという。

「今は私たち管理部門ではなく、現場のユーザーが自分で必要なアプリをkintoneで作っています。例えば、『社員向上委員会』という社内組織が主体となって、11月に運動会を実施することになったんです。そこで、どんな種目をやりたいかなどのアンケートを取ることになったのですが、私が言わなくても委員会メンバーが『kintoneでアンケートを取ろう』と自主的に提案してくれました」(武富氏)

運動会参加表明アプリ

■全社に広がる業務改善、ユーザーから活用を希望する声が

 最後に、kintoneを導入して会社の中にどのような変化があったのか聞いてみた。

「まず、社員の業務改善に対する意識が大きく変わったと思います。『問い合わせをExcelで管理していたけど、もっと効率化したいからkintoneで管理できないか相談に乗ってほしい』と声を掛けられることもあります。社内でkintoneを使える人が増えれば、社内の情報資産がどんどん繋がり、最終的には全社的な業務改善に繋がっていくと考えています。これが私の『人類kintoneマスター化計画』です(笑)」(武富氏)

現在入社三年目の武富氏。この若手社員による壮大なプロジェクトは、まだまだこれから広がりを見せていくことだろう。