神戸市役所
- 【業務内容】
- 自治体業務
- 【利用用途】
- 公用車の管理台帳、運転日報管理
人口約150万人が住む神戸市は日本の政令指定都市のひとつであり、神戸市役所も職員数が1万人を超える大規模な自治体だ。今年で入庁5年目になる藤原慎之輔氏は、神戸市内に6つある建設事務所のひとつ、西部建設事務所 管理係に所属していた。
(※現在は西区役所の総務課に異動)
西部建設事務所に勤務していた頃は、5,000枚以上におよぶ紙の日報を全てkintoneで電子化し、スマートフォンでも入力できるようにするなど、大きな改革を成し遂げ庁内からも高い評価を得たほか、現在所属している西区役所 総務課では、5年に1度の国勢調査にkintoneを活用する試みを実施するなど、市役所内に新たな風を送り込む第一人者となって活躍している。今回は藤原氏にkintone導入時のエピソードや今後の取り組みについてお話を伺った。
藤原氏が所属していた建設局西部建設事務所は、主に道路の改修・補修、公園の整備、河川の管理などインフラの維持管理を行っている部門だ。西部建設事務所だけでも道路維持作業車を30台ほど保有しており、毎日何台もの道路維持作業車が出動していたという。
しかし、この道路維持作業車に乗るたびに紙の運転日報を手書きで記載する必要があった。毎日何度も車の出入りがあるため、この日報は年間を通すと約5,000枚にのぼり、分厚いファイルにファイリングされ段ボールに入れて管理していたという。また、この日報は月単位で1枚ずつ上長に確認と押印を依頼する必要があり、各担当者の作業量も大きな負担になっていた。 また、約30台ある道路維持作業車はそれぞれ車検証や自賠責保険の更新のタイミングが異なっており、こちらも同様に紙による管理を行なっていたが、確認漏れにより「車検証の期限が切れた公用車に乗ってしまう」という大きなトラブルのリスクも抱えていた。
「車検切れの公用車を乗ってしまうと、当然行政処分や刑事処分が下りますし、それが自治体で発覚した場合は不祥事として報道、処分など重い責任が問われます。だからこそ絶対に確認漏れをしてはいけないのに、今までの紙の運用ではどうしても確認の限界がありました。一時期はExcelで台帳を作り電子化を図ったこともありましたが、結局Excelのファイルを紙に印刷して張り出し、更新がある度に印刷し直すなど、根本的な解決には至らないままでした」(藤原氏)
非効率な管理方法に疑問を抱きながら、最適解が見つからないまま数年が過ぎたある時。市役所全体のIT化推進を行なっている情報化戦略部から「kintoneというプラットフォ ームの勉強会のお知らせ」が届いた。その時はkintoneのことを知らなかったという藤原氏だが、直感的に「何か面白そうだ」と感じ、kintone勉強会に参加した。
「勉強会の最中から”これは何かに使えそうだ”と感じていました。勉強会終了後、情報化戦略部から希望者へのアカウント配布アンケートがあり、とりあえず試してみよう!という気持ちでアカウントの希望を申し出ました」(藤原氏)
kintoneに可能性を感じ、さっそく道路維持作業車の管理台帳をExcelからkintoneに移行した藤原氏。アプリのレコードに車検証や自賠責保険などの書類をPDFデータでアップロードできるようになったほか、車検・点検満了日の30日前に登録したアドレスあてにメールが送られるように設定したことで、車検漏れを見逃すことがなくなった。
台帳の電子化に留まらず、次に藤原氏が目をつけたのは年間約5,000枚にものぼる紙の運転日報の電子化だった。kintoneの連携プラグイン、フォ ームブリッジ・プリントクリエイター・kViewerを活用し、日報の入力や管理もすべてkintoneによる電子化を推し進めた。
「紙の日報は、走行時間や走行距離を自分で計算して入力する必要がありましたが、kintoneでは自動計算機能を使うなど細かい点も省力化できるように設計しました。パソコンからはもちろん、スマートフォンからも運転日報を投稿できるようにしたので、公用車の運転後、忘れないうちに車内から日報を投稿、ということもできるようになりました。もちろん、紙からいきなり電子化すると現場のメンバーも抵抗感があるので、ITに不慣れな人の意見も聞きながら利用者に寄り添い、徐々に浸透していけるように心がけました」(藤原氏)
これらの取り組みにより、毎年膨大な量が発生していた運転日報の紙はほぼゼロになり、毎月のファイルの入れ替え作業、紙の回覧や押印の手間、紙からExcelへの転記作業など、多くの無駄な作業も一気に削減された。また一番の懸念点だった公用車の車検切れ確認漏れも、kintoneに移行してからは一度も発生しておらず、リスクを大幅に軽減させることに成功した。
西部建設事務所の公用車管理台帳と運転日報電子化の取り組みは「誰でも簡単に使えて横展開しやすい」「波及効果の可能性が非常に高い」という点が高く評価され、市役所内の業務改善例表彰制度で大賞を受賞するなど、庁内でも高い評価を得ることができた。
2020年5月、藤原氏は西部建設事務所での任期を終えて現在の西区役所へと異動した。所属が変わり、業務内容が変わってもkintoneを使った業務改善は引き続き行なっているという。
「現在所属している西区役所では、選挙にまつわる業務や国勢調査に関する業務に携わっています。2020年は5年に1度の国勢調査が実施される年なのですが、国勢調査に関わる業務にもkintoneを導入する試みを進めています。上司から5年前の国勢調査の状況を聞いたのですが、調査期間中は問い合わせの電話が1日中嗚りやまず、職員たちの残業時間は月に160時間を超えていたそうです。この問い合わせをkintone × フォームブリッジで一次受付として一元管理する仕組みを準備中です。これが成功すれば、市役所内でも大きな改革の第一歩になると思います」(藤原氏)
kintoneを活用した市役所の未来を語る藤原氏の目は熱意に満ち溢れていた。最後に公務員という自身の立場と、これからの改革に向けて意気込みを語ってくれた。
「お役所仕事といえば、古い体制やお堅いイメージで、なかなか改革などは難しそうだというイメージを持つ方が多いと思います。しかし、まだ20代前半の若手である自分でも、声を上げて行動すればきちんと変わるということを自身の手で証明したい。信じて行動すれば、きっと大きな改革も成し得ると思っています」(藤原氏)
kintoneを通じて、日本の自治体で業務改善に燃える若者の姿を見ることができた。今後の藤原氏の活躍にも注目していきたい。
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