木村屋總本店 様の導入事例

木村屋總本店

【業務内容】
各種パン、和菓子、洋菓子の製造および販売、レストラン経営Webサイト:http://www.kimuraya-sohonten.co.jp/
【利用用途】
発注、実績集計、出退勤管理など
  • ごりごりの重厚システムからiPadのクラウドソリューションに転換

木村屋總本店は明治2年に生まれた創業145年の老舗だ。明治8年に明治天皇へ酒種桜あんぱんを献上し、世に広がった。現在は関東に28店舗の直営店を構え、人気を集めている。しかし内部ではその直営店と本部とのやり取りに使うシステムが老朽化。情報伝達に支障が出たため、リプレースを決定した。採用したのは、「kintone」だった。重厚なサーバーに構築したごりごりのシステムから、クラウドソリューションに転換した理由と経緯、その効果を伺った。

独自のシステムと古いPC、遅い回線が限界に来た

「昨年夏まで、直営店は古いパソコンと遅いネット回線で業務を行っていました。PCのOSはWindows XP、ネットはPHS回線のAIR-EDGEで、店舗での作業時間がかなりかかってしまっているというのが課題にありました」(株式会社木村屋總本店 管理部 部長 齋藤浩二氏)

システムは10数年前に構築した重厚なもので、PCにも専用のソフトウェアをインストール。店舗側はAIR-EDGEなうえ、本部のサーバーにも回線は3本しか入っていなかった。そのため、28店舗あるものの、同時にデータをやり取りできるのは3店舗だけだったのだ。情報を送る時間帯はだいたい決まっているため、回線の渋滞待ちも発生していた。

時には、サーバーがクラッシュするといったトラブルもあったそうだ。そのため、システムでデータを送る一方、電話でのコミュニケーションも頻繁に行われていた。

しかし、電話と言うのはお互いの時間を強制的に消費してしまう。ルーチンワークとしては無駄であることは認識していた。 Windows XPもAIR-EDGEも14年前に登場したサービスで、機能的には3世代も4世代も前のものだ。ずっと前から使いにくさは感じていたとのことだが、すべて直営店と言うこともあり、自分たちで何とかしようと対処していた。

しかし、現場からの要望もあり、システムをリプレースすることになる。

「リプレースに当たり、何社かに話を聞きました。従来と同じような重厚なシステムを提案されることもありましたが、当然高価です。その中で、ソフトクリエイトさんからkintoneを紹介していただきました。もっと簡易的なものでいいのではないか、と考え始めていたところなので、kintoneで行きたいなと思ったのです」(管理部システム管理課 課長 山口一彦氏)

管理部 部長 齋藤浩二氏

管理部システム管理課 課長 山口一彦氏

約80もの帳票を4パターンに整理
「発注」「実績」「出退勤」「時間帯別情報」アプリをkintoneで開発

kintoneの導入を決定して、最初の打ち合わせが7月25日。そこから、毎週のように打ち合わせをして要件を詰め、8月にはkintoneを発注した。そして、システムが稼働したのは10月20日。たった3か月、打ち合わせ5回というスピードリプレースである。その際、苦労したのがシステムに落とす業務の洗い出しだったそうだ。

「kintoneの導入に際して、作業内容を精査しました。今では誰が使っているのかわからないものを含め、約80の帳票がありました。これを1ヶ月くらいかけて整理し、4パターンに絞りました。」(山口氏)

従来のシステムはたくさんの業務を扱っており、担当者も3人置いていたそうだ。その上、その担当者でないと分からないという属人化も起きていた。周知のとおり、システムを運用するにあたり、属人化は非常に大きなデメリット。これは、長年騙し騙し運用してきたシステムにはありがちなポイントだ。

何らかのデータを修正する時も、どこかに紐づいているのではないかと言う不安から、少しずつ加工して使い続けていたのだ。 kintoneで開発を依頼したのは、「発注」「実績」「出退勤」「時間帯別情報」の4つのアプリ。加えて、「実績」から分析するためのアプリをいくつか追加している。

動作端末として、すべての直営店には通信機能を内蔵したiPadを用意。各店舗のスタッフは、kintoneを開くと、自動的に店舗アカウントでログオンし、利用できるようになる。

「導入に関してはトレーニングを複数回実施しました。スタッフは20代の人が多いのですが、60代のベテランもいます。そのあたりもフォローしながら、操作を覚えてもらいました。スマートフォンが普及しているので、それの延長と言うような感じで理解してもらえました。古いPCの方が不満は強かったようですね」(山口氏)  新システムの導入は現場でひと悶着あるものだが、iPadと専用アプリということで、抵抗なく受け入れてもらえたようだ。

実際、稼働初日の報告は通常よりも遅い時間になったようだが、現在では慣れて早くなったという。PCに向かっていた時間も大幅に削減できるうえ、リアルタイムに情報を共有できるので電話でのコミュニケーションも不要になったそうだ。その分、空いた時間を接客につなげてもらっている。

「iPadでのシステムにしたことで、情報の伝達にも変化がありました。これまでは定型文プラスアルファ程度だった報告だったのですが、「今日は雨なのでお客様が少なかった」といったやりとりが出てきたのです。使いやすい環境になったので、メールの延長のような感じで使ってもらえているようです」(齋藤氏)

また、画像の共有も可能になった。自分たちで「ファイル管理」アプリを用意し、写真を登録できるようにしたのだ。店頭のレイアウトなどを本部でチェックするのだが、これまでのシステムでは対応できなかったのだ。

そのため、従来は個人利用のスマートフォンからメールしてもらっていたそうだ。しかし、kintoneを導入することで、会社のシステムの中で完結できるようになった。

写真を登録する「ファイル管理」アプリ

ニーズに合わせてアプリをJavaScriptカスタマイズ

アプリの開発、JavaScript等によるカスタマイズを担当したのは、株式会社ソフトクリエイト Coreサービス部クラウドソリューショングループ主任の遠藤大輔氏。「発注」「実績」「出退勤」「時間帯別情報」の4アプリを開発した。従来運用していた80の帳票から厳選された4パターンをアプリにしたものだ。加えて、実績を分析するための集計アプリも3つ用意した。

【出退勤アプリ】iPadから迷わず操作できるようボタンを大きくカスタマイズ

「出退勤」アプリはアルバイトを含めて、直営店の全スタッフの出退勤を管理するためのアプリだ。iPadの画面に出退勤のボタンが大きく表示され、誰でも迷わず操作できるようカスタマイズしている。

「出退勤のアプリは、出勤ボタンを押したら出勤のデータをいじれないようにして、出勤が押されてないと退勤が押せないようにしました。誤動作を防ぐためです」(遠藤氏)

【発注アプリ】ひと画面で複数レコード登録できるようカスタマイズ

「発注」アプリは、直営店が本部に商品を送るように依頼するために利用する。標準アプリだと1件1件登録することになるが、商品数が多いので手間がかかる。そこで、商品カテゴリーを選ぶと扱っている商品が一覧表示され、数字を打ち込んだ後、まとめて登録できるアプリを開発した。

このおかげで、エクセル風の操作方法となり、スムーズに利用してもらえるようになった。 発注があると本部が対応することになるが、その際の通知にも知恵を絞った。発注アプリでは1度の操作で複数の商品を登録できるが、通常の機能だと登録したレコードの数だけ新着通知が出てしまうのだ。

そのため、作業が完了した時に書きこむ「完了報告」というアプリを利用することにした。これは遠藤氏に相談し、自分たちで標準アプリを用意したのだ。

iPadから見た「出退勤」アプリ

カスタマイズされた「発注」アプリの登録画面

【実績アプリ】複数のアプリを横ぐしで集計

「実績」アプリでは、前日の売り上げや返品、発注に対しての余剰分などを入力する。加えて、実績を集計するために、ABC分析、アイテム別の前年対比、日別商品別の入荷出荷の数量の集計の3つを開発した。複数のアプリを横ぐしで集計するので、標準アプリでは対応できない。この集計アプリの開発でちょっと苦労したそうだ。

「膨大なデータだったので、いかに処理を早くするかという点に苦労しました。kintoneの推奨レコード数を超える集計をかけることがあるので、できるだけ集計速度を速め、無駄な挙動をさせないようにしました」(遠藤氏)

開発当初は時間がかかるどころかブラウザーが落ちてしまうレベルだったようだが、改良の末、ストレスなく集計できるようになった。

また、直営店のうち、一部の店舗の通信速度が極端に遅いというトラブルも起きた。3Gよりもさらに遅い速度でつながると、kintoneの登録ボタンを複数回押せてしまうのだ。すると、重複して同じレコードができてしまう。その対処も施したうえ、キャリアに相談し、無線LAN環境で接続するようにした。

導入からしばらくは密にコミュニケーションを取り、遠藤氏がいろいろな修正や要望に柔軟な対処をしてくれたそうだ。そのおかげで安定稼働ができ、今のところは大きなトラブルは起きていない。古いシステムからスピードリプレースし、この大成功は、木村屋總本店とソフトクリエイトの連携があってこそと言える。

最後に、kintoneに期待することを伺った。

「扱うデータ量が多いので、それにどう対応するのかが課題です。通常利用するアプリとは別に、過去の実績を見る場合は数か月ごとに別アプリを用意することを考えています。kintoneの推奨レコード数が増えてくれるとうれしいですね」(遠藤氏)

複数アプリをまたいだ集計結果を表示

【この事例の販売パートナー】
株式会社ソフトクリエイト

サイボウズ のクラウド・パッケージ製品全般の導入に関するご相談・導入まで一貫して対応。
kintoneの基本的なアプリ作成から、JavaScriptを利用した開発までお任せいただけます。