KBN 様の導入事例

KBN

【業務内容】
情報通信業
【利用用途】
顧客管理・営業支援・進捗管理・日報報告書・在庫管理・企業間のやり取り・ワークフロー・契約管理・勤怠管理
  • 古い慣習が続くケーブルテレビ業界のプロセスをデジタル化。紙業務からの脱却と業務の効率化に大きく貢献するkintone

香川県 坂出市及び綾歌郡宇多津町を放送エリアとしてケーブルテレビ事業を展開しているKBN株式会社では、これまで紙を中心に行っていた工事管理や受注をはじめとした営業管理の仕組みをkintoneに置き換え、紙業務から脱却、業務フローのデジタル化を実現し、契約時の記入漏れや計算ミスを撲滅、業務の効率化に大きく貢献している。同社が進める業務改善のツールとしてkintoneを採用した経緯について、取締役 事業本部 副本部長 北村 祐樹氏にお話を伺った。

【課題】アナログな業務が多いケーブルテレビ業界の現場を変える取り組み

1978年に設立し、現在は有線テレビジョン放送業務とともに、インターネット接続サービスや固定電話サービス、小売電気事業など社会インフラとして欠かせない、さまざまなサービスを展開しているKBN株式会社。香川県全体ではケーブルテレビの加入率は25%ほどだが、同社が手掛ける約23,000万世帯ほどのサービス提供エリアの加入率は約60%に達している。地元コミュニティとの距離が近く、学校や行政とのイベント企画など、きめ細かなサービスが大きな魅力だ。

取締役 事業本部 副本部長 北村 祐樹氏

ケーブルテレビ業界では、全国的に見てアナログなフローで業務を遂行しているケースが少なくない。同社においても、多くの紙の帳票を用いて契約業務や設備の設置工事業務などが運用されており、以前から紙業務の脱却や業務の効率化の必要性が叫ばれていたと北村氏は説明する。「紙の良さはあるものの、工事を委託する外部パートナーへの発注書などの帳票だけでも多い月で200件を超えていました。管理が煩雑になってしまい、誰が何をしているのかの進捗も把握しづらい。データで管理するにしても、Excelでの管理が精一杯でした」。

【選定】導入済みのkintoneに着目、業務改善に向けたプロジェクトが再始動

ツールの導入については、もともとケーブルテレビ業界で広く導入されていた顧客管理システムを検討していた。しかし、活用したかった工事管理が“顧客管理システムのオプション”として実現する仕組みとなっており、システム連携のメリットはあるもののコストが割高で、自社の運用に合わせてカスタマイズするには負担が大きいと判断したという。

そこで注目したのが、すでに同社にて導入されていたサイボウズのkintoneだった。「私が入社する以前ですが、中国地方の同業者が工事進捗の管理にkintoneを活用している話を聞きつけ、現場を視察し、トライアルとして導入したものの、リソース不足で十分活用できていなかったのです」と北村氏。実際に導入済みのkintoneについては、コストパフォーマンスに優れているだけでなく、年齢層の高い現場のメンバーにも受け入れてもらいやすい画面デザインや操作の簡単さを高く評価したという。「初めて見たときから使えそうだという印象を持ちました。そもそも現場に受け入れてもらえないツールでは意味がありませんが、kintoneであれば大丈夫だと直感的に感じたのです」。

使い勝手に関するkintoneの魅力は、開発時にも感じていたという。「一般的な顧客管理システムに連携した仕組みを選択すると、システムを改修するたびに費用が発生することが想定できます。ただしkintoneであれば、画面から選択していくだけで項目の追加やレイアウト変更なども可能です。できないと思われていたことが、容易にできるという発想に変えられるのは大きい」と北村氏は語る。また、これまで紙の運用で何度も同じ情報を手書きしなければならない状況だったところ、kintoneであればマスター情報を持つことで転記する負担が軽減できる点も高く評価。情報が集まってくることで工事の進捗状況などが可視化でき、最終的には顧客へのサービス品質向上につながるという期待を持つことができたという。

ケーブルテレビ業界に知見を持つ株式会社富士コンピュータサービスの支援もあり、導入済みのkintoneを活用し、業務改善に向けた基盤としてフル活用することに。工事管理の業務を皮切りに、営業担当者が顧客先で行う契約管理の領域も含めて、kintone化するプロジェクトに取り掛かることになったのだ。

【効果】ケーブルテレビ業界の業務プロセスをkintoneで再現。客先での事務処理時間も半減し、工事に向けた準備もスムーズに。

工事業者含めたプラットフォームとしてkintoneが活躍

現在は、営業や工事に関わる社員だけでなく、全社的にkintoneアカウントを付与しており、外部の協力会社にもアカウントを提供している。「外部パートナーにはタブレットを貸与し、貸与端末からしかアクセスできないようセキュアアクセスを利用することで、安全で利便性の高い環境が整備できています」と北村氏。これまで紙で実施してきたフローを実現するため、プラグインは有料のものから無償で利用できるものまで数多く活用している。

実際に作成しているアプリは、契約時に記入する営業アプリ、現場設置の情報を管理する工事管理アプリ、備品や商品などの物品を管理するアプリなど、全体で50ほどのにもなる。
他にも、従来Excelで行ってきた各種情報を随時kintoneに移行している。「契約時に不備だった項目をコメント機能を使ってやり取りし、蓄積されたコメント情報をまとめて集計するアプリなども運用しています。」と北村氏は語る。

アプリ作成について、当初は導入支援を手掛けている株式会社富士コンピュータサービスが主導で作成したが、使い方も含めて学習を進めることで、今では軽微なものは北村氏自らが作成するだけでなく、社内でもkintoneアプリを作成できるメンバーを複数人育成し、必要な業務への適用を進めている。「kintoneの魅力は、誰もが簡単に使いこなせる、自分でカスタマイズできるところ。実際に抵抗なくkintoneに触れることができるのはとても素晴らしい」と北村氏は評価する。

営業シーンでの情報抜け漏れを防止、発注から精算までの工事プロセスをkintoneでデジタル化

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また重要事項確認書など顧客へ説明したかどうかをkintone上でチェックすることで必要な書類が生成されるようになっており、顧客の手書きサインをタブレット上で行ってもらうことで契約書の作成が完了する流れだ。「お客さまの前で事務的な処理に時間を費やしてしまうとお待たせしすぎて気まずくなるケースも。今は事前にヒアリングしておくことで一部の情報入力を先行させるなど、事務処理の時間を半減させることができ、提案時間を増やすことが可能になりました」と北村氏は評価する。

工事管理アプリでは、顧客が希望する工事希望日とともに、テレビの台数やルータ設置場所など詳細情報をヒアリングしたうえでアプリ上に入力する。工事に必要な詳細情報を事前にヒアリングすることで、工事業者に対して的確な情報を伝えることが可能になっている。また、工事管理アプリにて決められた工事予定は、プラグインを活用することで見やすいカレンダー表示を実現、工事業者は自分が担当する予定のスケジュールが分かりやすく確認できるようになっている。「営業側のヒアリングで現場の情報が事前に入手でき、kintone上で情報共有することで、工事業者から改めてお客さまに連絡せずとも、工事に向けた準備がスムーズに実施できるようになっています」と北村氏。

工事管理アプリにて工事業者に発注を行い、工事完了後の報告についても設備や設置場所などの画像を張り付けながらアプリ内で報告が可能になっている。そして、具体的に作業した内容をチェックすることで支払いのための情報が生成できるようになっており、報告や支払いの抜け漏れも防げるようになっている。「アプリ内で発注処理や支払明細の作成も可能で、その明細に応じた金額を銀行にて振り込むことで一連の業務が完了できるように作り込んでいます」と北村氏。案件ごとにコメント機能で工事業者との間での報告や連絡、相談が行われており、変更履歴も管理することで情報の一元管理も実現できている状況だ。

事務処理時間の削減や帳票のデジタル化で年間100万円超の制作費削減に貢献

kintoneによって従来の紙業務をデジタル化することで、事務処理時間の短縮はもちろん、重複入力が回避でき、金額計算などのミスも削減できるようになるなど、転記や確認時間が大きく減っているという。「一番大きな効果では、申込書や重要事項説明書など紙を使った各種帳票の運用から脱却でき、帳票のメンテナンスも含めて年間かかっていた100万円超の制作費はゼロになっていることです。一部紙の運用も残っていますが、大きな費用削減につながっています」と北村氏。

また情報が集約できたことで、例えば特定の集合住宅に関する問い合わせや顧客へのアプローチ履歴などが一元管理でき、顧客対応における品質向上に大きく貢献している点も見逃せないという。「社外からでも一元管理された情報にいつでもアクセスできるため、柔軟な働き方にも対応できるようになっています。情報をいつでも見ることができためにアクションがとりやすい」。

なお、紙からのkintone移行については、紙とkintoneを併用しながら双方運用する期間を一時的に設け、紙がなくなった場合のkintoneでの運用方法を担当者ごとに考えてもらいながら、改善を進めていくことでスムーズな移行を実現している。「私自身も現場に出て営業をしていたので、管理と現場の両方の視点からアプリを作っていくことで、うまく現場に展開できました。社内ルールの徹底など多少時間はかかりましたが、比較的スムーズに移行できたと考えています」と北村氏。

工事業者など外部パートナーについても、従来メールや電話で行っていたやり取りを、kintoneに集約することで、kintoneにふれる頻度を高め、紙からの脱却を成功させている。「強制的に移行した部分もありますが、指示書などの紙を取りにわざわざ会社に来てもらわなくても、kintone内の情報自体を指示書とするなど、メリットを提示することで受け入れてもらいやすくなりました」と展開の工夫について説明する。

今回、導入支援を行っている株式会社富士コンピュータサービスからは、kintoneの提案から開発支援、保守まで含めた万全の体制でサポートを受けているという。「フットワークも軽くすぐに足を運んでいただけますし、ケーブルテレビ業界の現場にも明るい。他のケーブルテレビ局でkintoneを活用している事例企業も紹介いただくなど、横のつながりも含めていろいろ支援いただけています」と高く評価する。ケーブルテレビ業界への知見があることから、求められている状況を見極め、最適な提案が次々と出てくる点も大きな魅力の1つだという。

北村氏は取材したコンテンツの共有など、業界におけるプラットフォームとしての活用についても期待を寄せている。「kintoneをベースに制作系のアプリを運営している他のケーブルテレビ局があり、制作業務にうまく活用していると聞いています。香川県内にあるケーブルテレビ局と一緒にkintoneを活用すれば、取材した情報などを共有したり、取材依頼もkintoneで集約したりといったことも可能なはず。同じ業界同士、うまく取り入れていけるような活動にも展開していきたい」と今後について語っていただいた。(2023年1月取材)