生活クラブ風の村 様の導入事例

生活クラブ風の村

【業務内容】
高齢者、子育て支援など
【利用用途】
全社での情報共有基盤
  • 福祉の現場で働く1800名ほどの職員が活用する情報共有基盤
  • モバイル中心の活用で多様な働き方にも柔軟に対応できるkintone

高齢者や子育て支援を中心に事業を展開する社会福祉法人生活クラブ風の村では、これまで電話やFAXなどで行ってきた情報共有や各種申請承認業務の電子化を図るべく、80を超える事業所で働く1800名ほどの職員全員が活用する情報共有基盤をkintoneにて構築している。その採用経緯について、事業本部総務部 総務部長 松井 千佳氏、同部 総務課 一宮昌代氏、および同課 高橋 紀子氏にお話を伺った。

【課題】長年運用を続けてきた紙による業務が限界に達する

紙や口頭による情報共有では十分に伝わらない場面も

生活クラブ生活協同組合千葉にて行われていた“たすけあいネットワーク事業”が母体となり、1998年に法人を設立、赤ちゃんから看取りに至るまで、人生の全てのライフステージで求められる支援を提供している社会福祉法人生活クラブ風の村。千葉県下に本部を持つ社会福祉法人として最大規模を誇っており、訪問介護や居宅介護支援などの高齢者支援をはじめ、保育園や児童養護施設運営などの子育て支援や、障がいを持つ方へ働く場所を提供する障がい児者支援、診療所や訪問看護などを行う医療、そして地域包括支援センター運営など自治体からの委託事業など、80を超える事業所を千葉県下に展開。新たな社会モデルを創造していくことを目指すべくさまざまな事業を展開している。

設立当初は小規模な形で介護保険事業を行っていた同法人だが、今では事業規模が拡大し、働く職員も多様化。訪問介護ヘルパーなど直行直帰の形で働く契約職員や365日24時間交代制で働く職員などもおり、事業によって柔軟な働き方が求められるなかで、全体での情報共有が難しくなっていったと語るのは松井氏だ。例えば経営会議で決まったことは、所長会議や事業所ごとに実施される会議などで共有されますが、全て紙や所長からの口頭にて伝えられるため、十分に伝わっていないケースも。また、現場の業務に必要な各種マニュアルなど全体で共有すべき情報も紙で保管されており、更新作業も難しい状況でした。そこで、紙に代わる新たな情報共有の仕組みが求められたのです」と松井氏は当時を振り返る。

事業本部総務部 総務部長 松井 千佳氏

紙での申請承認業務に多くの時間と手間がかかる

また、これまで紙やFAXを駆使して行われてきた申請承認や合議決裁の仕組みも限界を迎えていたという。「備品購入など決済が発生する場合、理事長はもちろん、所長やエリア担当者、経理担当などさまざまな承認者が介在することになりますが、この申請承認も全て紙で行われていました。事故報告などの連絡も全て紙で行われており、どこかで情報の不備があればFAXで差し戻されたり修正指示自体も紙で行われたりしていたため、最終的に多くの時間と手間がかかっていたのです」と松井氏。合議決裁の申請内容や事故報告書といった紙の情報については、全てExcelで保管場所が管理されていたものの、その情報を閲覧するためにはファイリングされた紙の中から探し出す必要があるなど、情報へのアクセスについても効率的な方法が求められていたという。

【選定】シンプルな情報共有でも効果を実感、負担のない環境が導入を後押し

勉強会で知ったkintone、その利便性にほれ込む

新たな仕組みを模索するなかで同法人の目に留まったのがkintoneだった。実は千葉県内で付き合いのある社会福祉法人での勉強会があり、そこで出会ったことがきっかけだったという。「システム化に関して先駆的な取り組みを実践している社会福祉法人があり、そこで紹介されたのがkintoneでした。マニュアルをはじめとした情報の共有はもちろん、申請承認などの仕組みがアプリで簡単に構築できることが分かり、当時参加していた理事長や担当者がkintoneの良さにほれ込んだと聞いています」と松井氏。

そこで、全職員に展開する前に、本部に在籍するスタッフや事業所の所長クラスから試験的な導入を行い、段階を経ることに。当初は300名ほどで利用し、そこから徐々に全職員へと範囲を広げていったという。「最初は合議決裁の仕組みではなく、書き込まれたお知らせを見るというシンプルな情報共有での活用が中心でした。それでも、紙に比べて見やすく、何かあっても検索するだけでわざわざ紙を探す必要もない。これは便利だとすぐに実感したのです」と松井氏は評価する。

紙で作成された統一フォームの電子化が可能、モバイルアクセスも容易に

現在アプリ制作を担当している一宮氏は、「統一書式として規定された書類が多く、この書式がしっかりと置き換えられるものが理想でした。また、事業所の異動が頻繁に発生するため、さまざまな情報を本部と事業所間でやり取りすることが求められます。この情報のやり取りを円滑にでき、さらに人事システムなどにも反映しやすいものが理想だったのです」と当時を振り返る。kintoneであれば、統一書式をフォームに置き換えることができ、事業所との人事情報のやり取りもスムーズに行うことができると考えたという。

事業本部総務部 総務課 一宮昌代氏

自前で環境を整備せずとも利用できるクラウドサービスという点も高く評価したポイントだ。「現在はシステム担当も在籍していますが、当時はシステムの専任者がおらず、環境を維持管理するだけでも大変です。kintoneであれば自前で環境を整備せずに使えますし、普段PCを利用していない職員であれば、スマートフォンからでも容易にアクセスしやすい。必要なアプリも負担なく開発できる点も大きな魅力の1つ」。そもそも、システムの専門家でないと扱えないような仕組みでは難しい状況だったという。

【効果】モバイル中心で1800名が活用する業務基盤に成長したkintone

マニュアル共有や合議決裁、事故報告など現場に役立つさまざまなアプリを開発

現在は、全職員1800名ほどがkintoneを活用しているが、パソコンが貸与されている本部の職員や各事業所の管理職、事務職員、ケアマネジャーなどは主にPCを利用しており、一部の現場ではPCを共有しながらアカウントを切り替えて利用している。また、訪問介護の事業所ではヘルパーにスマートフォンの貸与が行われており、PCを持つ本部職員や管理職も含めた1800名のほとんどがモバイルデバイスを経由してkintoneを活用している状況だ。

具体的に運用しているアプリでは、デイサービスやショートステイといった事業ごとに用意された2000を超える詳細なマニュアルが共有されている“KAZEGRAM”と呼ばれるアプリをはじめ、就業規則やインフルエンザに関する注意喚起など全職員向けに情報を通知するためのお知らせアプリ、本部の職員がこれまでホワイトボードで共有していた予定情報をkintone上で行う本部外出休み予定表アプリ、異動の希望などのアンケート調査を行うキャリアエントリーアプリ、本部にある会議室などを予約する会議室予約アプリなどが運用されている。「お知らせアプリは、本部からの情報だけでなく、野菜を販売している事業所からのお知らせなど、現場からの情報伝達にも利用されています」と高橋氏は説明する。

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               KAZEGRAMのレコード詳細画面

また、申請関連でいえば、事業所で購入する備品や工事に関する許可を仰ぐ合議決裁アプリをはじめ、事業所に車で通う人が申請する車両使用許可申請アプリなどがある。さらに、現場で発生した機材破損や入所者のけがなどにつながった事故、書類の紛失まで、さまざまなインシデントを報告し、レベルによって経営層に通知するための事故報告アプリなども用意されている。他にも、異動や新たに入職する職員の情報もkintone上に登録され、その情報をもとに人事システムに反映させているという。なお、事業所内での共有事項は事前に用意されたkintoneのスペース上で行っており、スレッドや各アプリ内のコメント機能を使ってコミュニケーションを図っているという。

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               合議決裁アプリのレコード詳細画面

電車での移動時間にもスマートフォンで手軽に承認、隙間時間を効果的に活用

kintoneによって情報共有や各種申請業務が電子化されたことで、マニュアルが検索しやすくなり、モバイルデバイスからでも必要な情報にその場でたどり着きやすくなったと現場からの評価も高い。「以前は事業所でも本部でも同じ内容のマニュアルをコピーせざるを得ませんでしたが、紙や保管スペースが削減できるようになりました。また、申請承認がシステム化できたことで、外出していても決裁できるようになっています。電車移動の空き時間を効率よく活用し、スマートフォンで承認できるようになったのはとても便利です」と松井氏。今ではモバイルアプリからでもPCの操作同様にアクセスできるようになっており、使い勝手に関する現場の評価も上々だ。

kintoneについては、ドラッグ&ドロップで簡単に設定するだけでアプリが作成できるなど、その作りやすさを一宮氏は高く評価している。「マニュアルなどを見るよりも、触ってみた方が早く、直感的に使うことができる印象です。画面もシンプルで分かりやすい。システム開発の経験がない私でもアプリが作成できます」。高橋氏も「周囲に聞かなくとも使えてしまうのがkintone。これまでパソコンを使わない職場にいた私ですら使えてしまう、とてもやさしい仕組みです」と評価する。

事業本部総務部 総務課 高橋 紀子氏

kintone活用を広げていきながら、周辺システムとの連携にも期待

本部としては、今後も現場でのkintone活用を促すための活動を積極的に取り組んでいきながら、さらなる効率化に取り組んでいきたいという。「情報を配信したら“いいね”を押してもらい、その数によって表彰したり補助を出したりといった活動は行っています。常にkintoneを触ってもらえるような活動を今後も進めていきたい」と松井氏。現在はkintone上に利用者の個人事情報を掲載しないルールで運用しているが、入所者の状況報告などの引継ぎ書などの情報共有基盤としても活用したいという現場の声が寄せられており、ルールも見直しながら業務に直結した活用シーンを広げていきたい考えだ。

また一宮氏は、周辺システムとの連携に期待を寄せている。「本部には人事や勤怠、請求などのシステムが個別に動いていますし、現場には訪問介護や訪問看護それぞれ異なる仕組みが存在しています。kintoneがハブとなってこれらのシステムと連携させることで、さらに効率化につながるはず」。さらに、RPAなど事務作業の省力化に寄与する仕組みにも挑戦するなど、今後も効率化、省力化に向けた活動を続けていきたいという。「介護や福祉の業界は人材難であり、さらに省力化に向けた取り組みを加速していきたい」と松井氏に語っていただいた。

(2019年8月取材)