全国仮設安全事業協同組合 様の導入事例

全国仮設安全事業協同組合

【業務内容】
仮設安全監理者の教育事業、仮設品・仮設工事の共同安全監理事業、仮設品及び仮設工事の共同販売事業 他
【利用用途】
得意先、講習会、研修会、会員情報、会議データ、点検実績などの管理
  • 紙やExcelでバラバラに管理されていたデータを集約。
  • 組合内のデータを見える化し、業務効率化・ペーパーレスを実現

仮設事業に携わる人々の安心・安全を守るため、労働災害の撲滅を推進する講習会や必要経費の確保に向けた取り組みを行う全国仮設安全事業協同組合。東京都に本部を構え、北海道から九州まで全国9つの支部があり、2025年3月時点で組合員224社、賛助会員39社が加わっている。

支部が多いこともあり、組合員である会社・個人の情報や、講習会データの管理が一元化されていなかった同社。案件管理の不備により、管理部門の業務が滞ることもあったという。

この課題に着手したのが、企画・組織部長でありDXアドバイザーである北村敏彰氏だ。kintone導入前の管理状況、煩雑な情報を見える化したエピソード、組合員へのメリットを考えた今後の展望など、北村氏にお話をうかがった。

【課題】各支部から紙ベースで届くデータを、本部の職員がExcelに手打ち。非効率な業務が課題

2000年に設立された同社は、足場と呼ばれる仮設機材のメーカーや、仮設機材を建設現場にレンタルしている会社、また現場で仮設機材を組み立てる仮設工事会社、さらには仮設図面の設計やコンサルタントなどを行う会社といった会員から構成されている組合だ。 

「事業協同組合と聞くと、仕事を一括受注して割り振る共同事業がメインと思われるかもしれませんが、当組合は建設現場の安全と経済的価値の向上を目的として設立されました。安全面に関しては、知識を身に付けるための講習会を開催。独自資格ではありますが、厚生労働省にも認められた資格である『仮設安全監理者』を付与し、資格者による現場の足場の安全点検を行ってもらうという動きを取っています」

企画・組織部長 DXアドバイザー 北村敏彰氏

講習会の管理、参加者や資格取得者といった人の管理をしていた同社2015年ごろにkintoneを導入する以前は、講習参加者や資格取得者の管理は紙とExcelベースで行い、講習会の管理は複雑なシステムを構築して活用していた。まず課題となったのが、紙とExcelでの管理だったという。

「講習会は9つある支部単位で行われていて、受講者や参加費を月次で取りまとめたものが紙ベースで送られてきていたんです。それを本部の管理部門の職員がExcelに手入力していた。入職後にこの状況を見て、『これは非効率だ』と思いましたね。また、Excel入力時には講習参加者が所属している会社の管理も必要でした。『どこどこの会社の人は、この講習を受けているのか』と聞かれるたび、Excelを検索したり紙を引っ張り出してきたりして調べなければならない。それだけで1日かかることもありました」と北村氏は振り返る。

一方、講習会の管理を行ってきたシステムはバージョンの老朽化が課題となっていた。仮想化をするなど対処してきたものの、「もうごまかしきれないし、機能不足」というところまできたことで、データの管理方法を抜本的に見直すことになった。

「さまざまなシステムとの比較検討を行い、機能とコスト面などを総合的に判断した結果、kintoneの導入を決めました。先にサイボウズ Officeを導入していたため、同じ会社が提供しているという点も安心材料でしたね」

【解決】「得意先」データをベースに、講習参加者・資格者など必要な情報へのアクセスが容易に

最初に始めたのは「得意先」の管理だ。組合に何らかの形で関わりのある関係者を一元管理できるようになったことが、導入で1番大きなメリットだったと北村氏。本部と9つある支部の動きも「得意先」アプリ内で情報の把握が容易になった。 

「会員、非会員、講習会の参加者、点検の申込者、ECサイトでの購入歴がある人などを『得意先』としてまとめる作業を行いました。これまで各支部から紙やExcelでばらばらに届いていた報告書や取引関係書類のデータを一元化。建設業界は、○○建設や○○組、○○工業など、似た名称の会社が多いので、とくに会社の整理は慎重に行いました。当時は法人マイナンバー制度がなかったものですから、ここは正直大変でしたね。でも事務局メンバーが一丸となって取り組みましたので、どうにか乗り越えることができました」

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得意先アプリの画面

点検事業は担当者ごとにExcelで管理することになっていたものだが、実際には案件管理をしきれていないところもあった。そのために、月締めや決算前のタイミングで、現場担当者と管理部門の担当者の間に認識の齟齬が起こることも多々あったという。

「管理部門からの希望もあり、点検事業の案件管理もkintoneのアプリで行えるようにした。データが一元管理され、見える化したことで、管理部門の点検事業に係る月締め処理などの面は8割ほど手間が削減されている」と北村氏。

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点検事業の案件管理アプリ

「案件管理も含め、売上等の請求データの生成もすべてkintoneから一括でできるようになったんですよ。見える化しておけば、事務引継ぎが生じた際もスムーズに伝達できます。他の職員から『これってkintoneで何とかできない?』と頼まれることも増えています。私自身は出張が多いのですが、クラウドサービスは出先からでも使えるため、軽微な調整は即対応できるのが利点ですね」

今では、講習会、研修会、会員情報、会議データ、点検実績などさまざまな情報管理にkintoneを活用。拡張機能や他社サービスとの連携も行い、どんどん利便性を高めている。

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さまざまなアプリはポータル画面から各アプリにワンクリックでアクセスできる

同社では現場で使用される物品などを販売するECサイトも運営している。kintoneによってECサイトと組合サイトの情報がリンクしたことも、大きな成果になった。

「ECでは、購入者が組合員の場合、会員価格で販売しています。会員価格で購入するためには利用者登録が必要なんですね。利用者登録の際に、その方が組合員かどうかを確認する識別情報をkintoneから送信していまして、登録キーを入れていただき、合致するとユーザー登録ができるようになっているんです。会員情報を更新すれば組合サイト上の情報も勝手に更新されるため、2度手間も防げています」

FAXベースだった講習会の申し込みがWebベースになり、受講票の送付もメールになったことで、郵送費や紙の大幅なコストカットも実現した。

他社サービスも積極的に導入、活用し、請求書などの取引書類や資格者が現場点検を行う際に義務付けられている点検報告書もデジタル化に切り替えている。

【今後】kintone×AIで、組合員にメリットのある活用方法を模索したい

北村氏を中心に事務局メンバーの尽力により情報の見える化が進み、ペーパーレスや業務工数の削減を実現している全国仮設安全事業協同組合。

今後はkintoneに蓄積されていくデータを活用して、より業務の生産性向上を目指すほか、会員企業の後継者育成や教育に活用することで、組合員にもメリットを感じてもらえる取り組みを進めていきたいと語る。そのなかで北村氏が注目しているのがAIだ。

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「今は現場での点検報告書の作成のために、別のサービスを利用しています。そのサービスとkintoneを上手くつなげることで、点検データの活用の可能性を広げられないかな、と。蓄積したデータをもとにスマホのカメラ機能などを利用して現場の危険個所の発見を補助するなど、経験が浅い人でも点検ができる仕組みができたら、技術の継承に寄与できるでしょう。kintoneAIがどうなっていくのかはわかりませんが※、講習会に対するフィードバックをもらえたり、kintoneに蓄積されているデータを活用してチャットで自動回答ができるようにしたりと、まだまだ多くの可能性があるのではと期待しています」 

(※取材後の2025年4月にkintone AIラボの提供を開始しました)

バラバラだったデータを一元化し、見える化したところから、情報の利活用にも目が向くようになった同社。建設業界は、働き手不足が特に課題とされている業界の1つでもある。北村氏が目指す技術の伝承など、kintoneを使用した取り組みの広がりにも期待大だ。

執筆:卯岡若菜 撮影:栃久保誠 編集:モリヤワオン(ノオト)
取材日:2025/02/17