ジヤトコ 様の導入事例

ジヤトコ

【業務内容】
変速機や自動車部品の開発と製造および販売
【利用用途】
他社からのアンケート回収
  • 現場主体のアプリ開発に本当に必要なものは「情熱(パッション)」。小さな成功体験が社内に広まり、 kintoneの全社展開を実現

富士山を望む静岡県富士市に本社を構えるジヤトコ株式会社。同社では、 オートマチックトランスミッションの専門メーカーとして、ステップATから環境にやさしいCVTやハイブリッド車用トランスミッションまで幅広い商品を取り扱っている。中でもCVTにおいては、グローバル市場でトップシェアを誇っており、業界の最前線を走り続けている。
そんなジヤトコでは、現在全社的にkintoneを活用する動きが広まっている。全従業員数は14,800名、国内10拠点、海外8か国13拠点を擁する同社だが、意外にも社内にはExcelやメール中心の業務が多数存在している。そこで業務の更なる効率化を目指し、各部門でのkintone活用が始まった。今回はkintoneを全社的に活用してくことに決めた背景や、今後の展望について、情報システム部の岩男 智明氏と、調達管理部の高橋 良氏にお話を伺った。

約700件の取引先にExcelファイルを添付し、1件ずつメールで送信
先方からのファイル返信を待つも、約4ヶ月かけて回収する大仕事に

ジヤトコ社内で現在最もkintoneの活用が進んでいるのは、調達管理部。現在部内120人全員がkintoneのアカウントを持っているそうだ。調達管理部では毎年、取引先あてに「企業調査票」という調査票(アンケート)を配布し、回答を集めるというタスクが発生する。

kintone導入以前は、Excelで作った回答票をメールに添付し、約700件ある取引先に1件ずつ送信していた。受け取った側は、添付ファイルをダウンロードし、Excelを開き、回答票に入力して保存、またメールに回答票を添付して返信…というタスクが発生する。 さらに調達管理部では、窓口担当者が返信されてきたファイルをファイルサーバーに保存し、その後1つ1つファイルを開きながら内容を確認、集約、報告…という作業が発生していた。

「毎年、調査票の回収にはかなりの手間がかかっていました。6月に送った企業調査票を全て回収し終えるのはだいたい10月ごろ。なかなか回答が来ない場合は催促の連絡をする必要もありました」(高橋氏)

ジヤトコ株式会社 調達管理部 高橋 良 氏

ジヤトコ株式会社 情報システム部 主任 岩男 智明 氏

数十件程度であればまだしも、それがおよそ700件となると、一連の作業に膨大なコストがかかることは想像に難くない。しかも、全て回収し終えるにはおよそ4ヶ月かかっていたというのだから、1年の3分の1はアンケートの回収作業にリソースをかけ続ける必要があった。この作業コスト削減に貢献したのが、kintoneとフォームブリッジだ。

調査票をExcelからWebフォームに一新し、回答内容をkintoneに集約
回収までのスピードが約2倍向上し、約1人月の工数削減に成功

企業調査票をkintoneに移行する流れとしてはこうだ。まず、企業調査票の質問項目をkintoneで作成し、回答を溜めるためのアプリを作る。そしてそのkintoneアプリとフォームブリッジを連携させて回答用のフォームを作成する。取引先には、フォームブリッジで作成したフォームのURLをメールで送信する。あとは取引先からの回答を待つだけで、kintoneに自動的に回答が溜まっていくという仕組みだ。

「驚いたことに、調査票のフォーマットをkintoneとフォームブリッジに変えてから、目に見えて回収が早くなりました。おそらく、今までは先方もExcelファイルを編集して返信するという手間が発生していたので時間がかかっていたのでしょうが、今はメールに書かれたURLを開いて、質問項目に沿って回答を入力して送信するだけなので、かなりやりやすくなったのだと思います」(高橋氏)

フォームブリッジを利用した企業調査票

フォームから入力された情報は、自動でkintoneに登録される

今年度の例を挙げると、7月に調査票を配信し、8月上旬の時点で約7割の企業から回答が届いているという。回収までのスピードでいえば以前に比べて約2倍早くなり、工数に換算すると約1人月分の工数削減につながったという。

「調達管理部のkintoneを活用した取り組みが上手くいったことを皮切りに、もっと全社的にkintoneを活用して業務の効率化を図ろうという動きが始まりました。kintone自体の管理は情報システム部が主管ですが、各部門でのアプリ作成などは、それぞれの現場メンバーにお任せしています」(岩男氏)

しかし、ただ各部門にkintoneのアカウントを振り分けて自由に使えるようにするだけでは、良い運用体制とは言えない、と岩男氏は続ける。

ユーザーが安心して使える体制を整え、現場主体のアプリ開発の安定運用を実現

社内でシステムを運用する際に起きるトラブルの例として、岩男氏はExcelを使ったアプリ開発の事例を挙げる。

「たとえば、既存システムの老朽化に伴い、ユーザー自身がExcelのマクロを組んでアプリを作るとします。最初は便利に使えるのですが、時間が経つにつれてExcelの情報が古くなり仕事に合わなくなったり、正しく動かなくなったりします。しかしその頃にはExcelを作った本人は異動や退職しており、手がつけられなくなってしまった…という事態は、どんな会社でも起こり得ます。しかしこれはExcelに限らず、運用次第ではkintoneでも陥るトラブルです」(岩男氏)

そういったトラブルを避けるために、岩男氏はkintone運用に関する下記3点のルールを設けた。

1:アプリ責任者の明確化と管理

2:プラグインによる機能拡張の徹底(JavaScriptによる個別開発の禁止)

3:運用ルールの整備と周知(命名規則の取り決めや棚卸し基準の設定など)

上記の取り決めをした後、実運用ではkintoneに精通するパートナーベンダーと協業し、運用ルールの整備や体制の構築を行った。

「社内の情報に精通しているのは我々情報システム部門。そしてkintoneのサービスに精通しているのは、やはりプロのパートナーベンダーです。この2つが協業することにより、社内の運用体制をうまく構築することができました」(岩男氏)

さらにセキュリティについても自社のセキュリティーポリシーに準拠するようにさまざまな要件を設定した。

「社外秘情報を取り扱うので、IPアドレス制限を設定したほか、極秘情報の閲覧ログを記録するためにアクセスログプラグインを導入しました」(岩男氏)

このように、ただツールを提供するだけでなく、情報システム部側でルールを整備し、ユーザーに混乱を与えず安心して運用してもらう体制づくりが非常に重要だと岩男氏は語る。それぞれのプロフェッショナルが協力してきちんとルールをつくり、そのルールに則った運用を徹底することで、現場のユーザーが安心して自分たちが使いやすいアプリを作り、利用する体制が出来上がっているというわけだ。

そして最後に岩男氏は「こういったユーザー主体のアプリ開発に本当に必要なものは、情熱です」と話した。

「情熱とは、人を動かす原動力のこと。kintoneも最初は1部門だけのスモールスタートでしたが、kintoneの効果を実感したメンバーが社内営業をして、仲間が増え、全社会議で提案、承認を得て、現在に至ります。情熱は利用促進の原動力になりますので、非常に大事なポイントだと思います」 (岩男氏)

現在も、kintoneを使って業務改善を果たし、成功体験を得たメンバーは積極的にkintoneを利用し、社内にkintoneの輪を広げてくれているという。国内10拠点、海外8か国13拠点、全従業員数14,800名を擁する、日本を代表する企業ジヤトコ。同社の中で今後どのようにkintoneのパッションが広まっていくのか期待したい。