院庄林業 様の導入事例

院庄林業

【業務内容】
集成材、製材、プレカット材の製造販売、住宅資材販売および建築・リフォームなど
【利用用途】
生産管理、案件管理、工数管理、ワークフロー(申請業務)など
  • 木材の製造から物件情報までが一気通貫で管理できる基盤を目指す
  • Excelからの脱却で社内のデジタル化推進に大きく貢献するkintone

岡山県津山市を中心に林業を営む院庄林業株式会社では、数十年前に作り込まれたExcelを中心に受注および出荷情報など物件に関連した情報管理を行ってきた。複雑なマクロにより頻発するメンテナンスの負荷やファイル破損のリスクなど、大きな課題が恒常化した状態を改善すると同時に、複数部門の担当者が同時編集できる業務基盤としてkintoneを採用した。その経緯について、取締役 管理本部長 田原 義彦氏およびプレカット事業部 マネージャー 金藤 誠氏にお話を伺った。

【課題】複雑化、肥大化したExcelでの業務。効率化を目指してシステム化を検討

1955年に創業し、美作檜の産地である岡山を中心に製材メーカーとして林業を営んでいる院庄林業株式会社。国産檜の天然無垢材としてブランド化している「匠 乾太郎」をはじめ、シャチのマークの高品質な集成材、建築プロセスの効率化をサポートする材木のプレカットなど、木造建築現場への安心と信頼を提供しており、大手ハウスメーカーと緊密に協業しながら、付加価値の高い部材を数多く生産している。また、山の買取をはじめ、製材工場や加工のためのプレカット工場、製材をくみ上げて家を作る新築・リフォームを行う住宅部門を有するなど、木造建築に関連したあらゆるプロセスを手掛けていることが大きな特徴の1つだ。同時に、サステナブルな活動として山の買取による苗木の植林を通じて、持続可能な社会の実現に向けた活動にも取り組んでいる。

そんな同社では、数十年前から顧客に関する情報はもちろん、受注情報や出荷情報なども1つのExcelファイルで情報管理を行なっており、関数やマクロを駆使して情報集約の自動化を進めてきた経緯がある。「基本的には工務店などのお客さまから図面を頂き、加工する木材の数量や必要な納期、搬入先、受注する金額などを全てExcelに入力していました。情報が蓄積されてきたことで、20MBを超えるようなファイルに肥大化してしまい、開いて作業するにも時間がかかってしまう課題がありました。  また、マクロを駆使して作成されたExcelファイルのため、限られた社員でしかメンテナンスできない状況が続いていたことも課題の1つでした」と田原氏は当時を振り返る。肥大化していたことで開いた際に、場合によってはファイルが破損してしまうことも。同時編集がしづらいことで入力待ちの時間が発生してしまうといった、業務効率化の面でも課題が顕在化していたのだ。

取締役 管理本部長 田原 義彦氏

そんな折、金藤氏がプレカットに関する物件管理業務を引き継ぐことになり、Excelを業務基盤として運用してきた従来の環境を改善し、新たなにシステム化するプロジェクトに取り組むことになったのだ。

【選定】現場の不満が大きくなる前に迅速に対応できるkintoneが最良の選択だった

新たな基盤づくりでは、1つの情報を全員で共有できる基盤であること、そして見た目がシンプルで簡単に操作できることを念頭に製品選定を行った。Excelに慣れた現場からの抵抗が一番の障壁になると考え、全員が利用しやすいシステムであることが何より重要でした。また、事務所に戻らなくともスマートフォンなどから気軽に入力できるよう、クラウド環境で利用できることも重視したのです」と金藤氏。

そこで注目したのが、サイボウズが提供するkintoneだった。選定においては、複数のパートナーからそれぞれソリューションの提案を受けたものの、現場の要望に応じてすぐにアプリを変更できるノーコードツールとしてkintoneを高く評価したという。「入力スペースを広げたいといった簡単な修正でも、通常であれば数百万といった費用が発生してしまうケースも。kintoneであれば自分たちでも修正できるなど、本部として対応力が高いのは大きな魅力でした」と田原氏は評価する。

プレカット事業部 マネージャー 金藤 誠氏

実はSalesforceについても検討したものの、営業支援系の色が強く、工場の生産管理に使うには不向きで、カスタマイズ前提で金額が跳ね上がっていくことから、費用対効果が得られづらいと判断。「Salesforceのような完成されたツールの場合、現場にはまらないと改善していくのが非常に大変です。その意味では、7割ほどの完成度で現場の意見を取り入れながら機能を盛り込んでいくほうが、自分たちで作ったシステムという感覚になってくれる。kintoneであれば、馴染みが良いツールとして現場に展開できると考えたのです」と金藤氏。

多少の修正であれば内製化できるだけでなく、言葉の表現においても現場へ展開しやすいと考えた金藤氏。「Excelのマクロや数式といった言葉は、現場にとって嫌悪感を抱くメンバーもいるのが正直なところです。kintoneではアプリという言葉で表現できるため、言葉の響き的にもハードルを下げてくれる印象が強かった」。しかも、現場は少しでも不具合があるとやっぱり使えないというネガティブな雰囲気になりやすい。「何かあれば数分ほどで修正できるため、不満が大きくなる前に解消できるのは大きなポイントの1つでした」と評価する。

結果として、物件管理を含めたプレカット加工における業務基盤として、kintoneを導入することになったのだ。

【効果】全てのシステムを連携させる最終地点に向かう下地づくりにもkintoneが貢献

生産プロセスの管理や情報管理の基盤として活用、BPRのきっかけ作りにも貢献

現在は管理側や現場のメンバーを含めて100名ほどがkintoneに日々アクセスしており、アプリはテスト中も含めて数多く作成し、10ほどのアプリを本格的に運用している。主にはプレカット事業における生産プロセスの管理や全社的な各種申請のためのワークフロー、そして報告書や文書などを集約して情報管理する基盤としてkintoneが活用されている。なお、アプリによってはJavaScriptを駆使して作り込みを行っており、ラジカルブリッジ社が提供しているカレンダーPlusなどプラグインも活用している状況だ。

主なアプリの1つに、受注した段階で顧客情報や注文を受けた加工の内容や数量、納期などを入力、管理していく「受付表」アプリがある。レコード上で詳細情報を入力すると、加工する日程から逆算し、材料が必要になるタイミングや誰が担当するのかを決定し、カレンダーをベースとした一覧画面で管理できるようになる。作業の実績なども含めてカレンダー上から現場作業者が入力していくことで、進捗管理含めたプロセスの状況把握が可能になる。

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また「出荷表」アプリは、「受付表」アプリと連携してトラックの手配を行うためのアプリで、上棟日や積込日などを確認しながら納品日に合わせてトラック手配が可能になる管理表を運用意している。工場における「生産日報」アプリでは、その日に加工した内容やトラブル内容や詳細な時間を入力することで出来高が自動計算され、各部署の稼働状況などが可視化でき、打ち合わせ中でもさっとデータを表示できるようになっている。

同時編集が難しいExcelだったころと比較すると、受付表に関しては1人あたり1日で30分ほどの時間短縮が可能になり、毎日3時間ほど集中して入力していた事務担当者の作業はわずか20分ほどまで短縮することができたという。「好きなタイミングでそれぞれ入力できるようになり、Excel入力のために事務担当者がファイルを占有して編集する必要がなくなっています」と金藤氏。特にExcelでの作業は複雑で属人化していた部分もあったが、今は誰でもkintoneに触れることができるようになり、担当者不在の際にも業務を止めることなく業務連携も容易になっているという。Excelの業務をkintoneに置き換えたことで、長年行ってきた業務の必要性を改めて検討する場面が増えるなど、BPRとしての効果も高いという。

また、常に最新の情報がkintone上にあるため、営業担当者や現場担当者がわざわざ事務所に戻って進捗を確認する手間もなくなり、CAD制作においても営業担当者に確認せずとも作業が進められるなど、働き方が以前とは大きく変わったことを高く評価する。「以前は頻繁にExcelファイルが壊れてしまっており、それを直すだけでも多くの時間を要していました。その手間がなくなっただけでも私としては大きい」と金藤氏は振り返る。

出勤管理や休暇申請にもkintoneを活用することでデジタルツールをより身近に

各工場における部署のリーダーが現場でスマートフォンを使ってメンバーの休日出勤の情報を入力し、一覧で管理できる「休日出勤表」アプリや、各自が有給休暇をワークフローを利用して申請する「有給申請」アプリ、関東にある拠点の営業がどのように営業活動しているのかを把握するための「営業行動予定表」アプリなど勤務管理においてもkintoneで運用している。「グループウェアのようなスケジュール管理ツールは導入せず、kintone上で行っています。ベトナムからテレワークしているプレカットのCAD作成業務を担当しているメンバーの出勤状況もkintoneで管理しています」と金藤氏。申請系の業務については、押印依頼や経費精算、慶弔見舞金申請など全社的なワークフローをkintoneにて構築し、マニュアルも含めて全てkintoneで行われている。他にも、ISOに関連した監査時の指摘事項をまとめた「ISO監査報告書」アプリや新入社員研修の「日報」アプリなど情報管理のためのアプリも運用している状況だ。

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Excelからkintoneに業務基盤を刷新したことで、承認作業がどこからでも実施できるようになったのは大きいと田原氏は語る。「私は1ヶ月の内、4分の1ほどは出張に出ているため、承認作業が滞ってしまうことも正直ありました。ワークフローがkintoneによってオンライン化できたことで、今はどこからでも承認でき、現場業務を止めることもなくなりました」と評価する。また、現場の要望に合わせて改善が容易なkintoneだけに、デジタルツールに触れる機会が増やせていることは何よりの効果だと実感している。「デジタルツールに現場が慣れていくための準備運動として、kintoneは大きな効果をもたらしています。デジタル化によって基幹システムなど全てのシステムを連携させていくという最終地点に向かっていくための下地ができたのはなにより」と田原氏は高く評価する。

可能性を高めてくれるkintone、自分たちの理想的な環境を構築できるようになった

kintoneについては、触りやすさやメンテナンスのしやすさについての評価が高いだけでなく、可能性を高めてくれるツールだと力説する。「基本機能だけでなく、プラグインを活用してより使いやすくする、JavaScriptを用いて複雑な情報も簡単に表現できるなど、段階的に能力を高めていけるツールだと実感しています」と金藤氏。

田原氏は、「運用に合わせた変更が難しい一般的なツールでは、どうしてもソフトウェア側に縛りがありますが、自分たちで改善できるkintoneは、理想の主体が会社側にある印象を持っています。この手のツールに苦手意識がある人も当然いますが、自分たちで触ってみようという意識を持った人がたくさん出てきたことが何よりの効果ではないでしょうか」。現場からも以前は、この機能を実装してくれないと使いものにならないという声から、こう変えてくれたらこんなに使い勝手が上がるという前向きなコメントが寄せられるようになるなど、声の質が変わったという。

なお、今回提案活動から導入、保守運用までkintoneプロジェクトを継続的に支援しているレプタイル株式会社については、「我々の要望を的確に理解いただくなど、質問の背景を捉えること優れています。やりたいことをしっかりと具現化してくれる技術力も含めて高く評価しています」と田原氏。質問対応の仕方についても違いを感じると語るのは金藤氏だ。「こんなことをしたいと相談すると、これだけお金がかかりますという部分から入ってくるパートナーが多いなか、こんなアプローチならこういうことができると可能性を示してくれるのがレプタイルさん。一言説明すると多くのことを理解していただけるなど、安心して相談できたことも我々にとってありがたかった」と評価する。

現場に氾濫するExcel業務を減らしていきながら、全社展開も視野に広げる

今後については、現状でも業務のいたるところで使われているExcelの割合を減らしていき、1割以下に持っていきたいという。「マニュアルはもちろん、FAXの表紙などですらExcelを用いて作成しているほどで、現状でも多くの業務にExcelを利用しています。テレワークになって個人のデスクトップ上で管理されているExcelで業務を遂行することが難しい場面も多いことから、基本的には全てkintone化していきたいですね」と金藤氏。Excel以外では、現状個別に運用している見積作成のためのシステムについても、いずれkintoneアプリにて実装していきたいと意欲的だ。

また、kintoneはプレカット事業部から使われ始めているが、その有用性に気付いた他の事業部でも活用の動きが広がりつつある。この輪を広げていくことで、全社的な業務効率化やさらなるデジタル化に取り組んでいきたい考えだ。「近いうちにおそらく各事業部にkintoneでアプリを作成できるメンバーを育成し、その人材が中心となって現場で業務改善を積極的に展開していくことでしょう」と田原氏。

今後の展望について語る両氏

さらに、売上管理や仕入などの基幹システムとkintoneを連携させていくことで、業務の効率化をさらに推し進めていきたい考えだ。「基幹システムとの連動性が高めて、現場で入れた情報が承認を経て基幹システムまで自動連携できるようしたいと考えている。基幹システムをkintoneに置き換えていくというアプローチについても、もちろん検討の余地があります」と田原氏は語る。デジタル化がさらに加速すれば、木材の製造から最終的な販売先の物件情報までが一気通貫で情報連携できるため、今後は点と点をつないでいけるような環境整備を行っていきたいという。そして、デジタル化をさらに強力に推進していける人材を育成することも大きな課題の1つで、積極的に取り組んでいきたいと今後について語っていただいた。(2022年8月取材)

【この事例の開発パートナー】
レプタイル株式会社

Email:contact@reptiles.co.jp

kintoneを活用し、現場業務に合わせた改善案の企画、システム構築をいたします。
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