イエムラ
- 【業務内容】
- 金属製品製造業
- 【利用用途】
- 顧客管理、案件管理、生産進捗管理、売上管理
東北6県および首都圏を中心に、建築物や構造物に利用されるステンレス鋼の加工事業を展開している株式会社イエムラでは、課題となっていた情報共有を加速させるべく、サイボウズが提供するkintoneを導入。業務の見える化によって、営業利益を大きく増加させることに成功している。同社の課題である情報の共有とはどういうことで、いったい何を変革したのか、その課題や選択の背景、そして得られた効果について、代表取締役社長 家村 秀也氏にお話を伺った。
宮城県名取市にて1994年に設立され、創業以来ステンレス鋼材の加工に特化して東北6県および首都圏を中心に事業を展開している株式会社イエムラ。ビル建築用のステンレス製ドアやサッシ、手すりから、金属ファザードといったエクステリア製品まで、高度な技術を持つ職人が一品ずつ丁寧な仕上げを施していくことで、大手企業が手掛ける大量生産では対応できない特注加工品を数多く生み出している。また、金属製品の製造だけでなく、インターンシップや工場見学などを通じて地域の人材育成に貢献しながら、教育機関が開催するキャリア授業への講師派遣など、社会貢献につながるさまざまな活動にも積極的に取り組んでいる。
そんな同社では、営業部や技術部、経理部、製造部、工事部といった業務プロセスごとに部署が分かれているが、それぞれ業務に関連した情報が十分に共有されておらず、ある意味“気が利く人しか気づかない”という状態が続いていたと家村氏は当時の課題について振り返る。「例えば案件ごとの収支でいえば、営業担当者本人は分かっていても、案件に関わる技術部や製造部の担当者に伝わっていないケースも。人によっては予算を意識せずに部材の発注や加工を行ってしまい、結果として十分な利益が確保できない案件となってしまうこともあるのです」。
担当者が個別に管理するExcelなどに情報があることも多く、ほかの部署に情報が共有されていないことでロスが発生することもあった。そこで、全てのプロセスを可視化させることで業務の見える化を行い、誰にでも気づきが与えられるような情報基盤を整備するプロジェクトをスタートさせることになる。「震災特需で仕事が増えるなか、体力のある今だからこそ将来に対して次の一手を打っておく必要があると考えたのです」と家村氏。
そこで、業務プロセス管理が可能な仕組みを検討することになるが、そこで課題となったのが導入のコストだった。「営業のプロセスから改善していくことを念頭に、外出中でも状況が把握できるようクラウド系のCRM系サービスを中心に検討しました。しかし、我々のような規模ではコスト的に合わないものが多いだけでなく、事業変化に合わせてアレンジしていくたびに相当のコストが必要なものも。改善に向けたPDCAを回していくこと自体が厳しいものばかりでした」と家村氏。
そんな状況のなかで家村氏の目に留まったのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「中小企業向けの働き方改革に関するセミナーで偶然紹介されたのがkintoneでした。その場で簡単に業務アプリを作り込むデモを見て、これは使えそうだと思い立ったのです」。そこで、サイボウズにて開催されている東京の無料セミナーにすぐに申し込みを行い、実際にkintoneに触れたうえで検討した家村氏。
「コストで見ても他社に比べてイニシャルで4分の1程度、月額の利用料でも10分の1ほど。工場の設備など売上を直接増やす手段になる仕組みであればコストが高くても構いませんが、我々はモノ作りが基本。費用対効果的に厳しいものが多いなかで、サイボウズは我々から見てもコストパフォーマンスが圧倒的に良かった」と家村氏は評価する。
次に、普段から取引のある大塚商会に相談してみたところ、客先で業務アプリを開発してくれる訪問開発サービスを使うことで、kintone自体の導入がスムーズに行えると提案を受けたという。「社内に専門家がいないため、実際の開発から導入を支援してくれるプロフェッショナルの存在はとてもありがたかった」と家村氏。また、専門家が訪問した時に現場と相談しながら進められる点も高く評価した。
「打ち合わせの段階で現場の担当者が会議室に集まり、自分たちの使いやすいよう要望を出してもらいました。完成した後も改善要望を聞きながら柔軟に変更できていますし、結果として現場にも受け入れやすい仕組みを構築することができました」と家村氏。
現在は、kintoneによって社員全員が情報共有できるようになっており、先行して営業系のプロセス管理や情報管理を中心に業務アプリケーションが展開されている。具体的には、顧客担当マスターや案件ごとの収支が見える化できる案件管理アプリを中心に運用が進められており、シンプルインプット・マルチアウトプットによって二重入力にならないよう工夫が施されている。
案件受注が確定したあとのモノづくりに関する進捗管理に生かせる製造部進捗管理アプリや部門ごとのスペースなどはこれから具体的に運用していく計画だ。「製造部進捗管理で納期が近づくとkintone上にアラートが表示されるように作っています。営業部のスペースでも、インフラ関連や建具関連といったカテゴリごとの売上状況を示すなど、売上状況が見える化できるように作り込んでいます」。なお、実際のアプリ開発は大塚商会の担当者が訪問してその場で行ったうえで、日々の業務改善は家村氏も含めて社内で実施している状況だ。
「製造部進捗管理」アプリのアラート通知
「製造部進捗管理」アプリのレコード一覧画面
営業部のスペース
よく利用している案件管理アプリでは、案件ごとの見積金額から粗利金額、粗利率などが一覧で可視化できるようになっており、利益率が一定の閾値を超えた場合は赤く表示されるよう工夫されている。「見える化といえば、一覧画面でたくさんの情報を表示してしまいがちですが、これでは実際の課題には気づきにくい。色分けをすることで、誰にでも課題に気づけるようになる」と家村氏はそのポイントを説明する。
「案件管理」アプリのレコード一覧画面
また案件登録されると、顧客担当マスター画面から顧客に紐づいた案件だけが表示可能となるようアプリ間の連携が行われている。「“この案件は予算が厳しい”といったことに気づくことができます。その原因をしっかり分析したうえで改善活動につなげることも可能です」と家村氏。
「顧客担当マスター」アプリのレコード詳細画面
顧客担当マスターのなかには、社名や住所、担当者、締め日など一般的な顧客情報が入力されているだけでなく、顧客担当者の役割についても管理が行われている。「発注者の決定に対してアドバイスする人もいれば、我々の製品を社内に広めてくれる人もいます。営業だけが感覚的に把握していたものを可視化することで、お客さまとやり取りする可能性のある総務部や製造部などにも、その人の属性を知っておいてもらいたい。小さな企業だけに、一人の失敗が大きく影響することもあるのです」と家村氏。
また、顧客担当マスターには詳細に項目が設定されているが、その内容を埋めていくという意識を持つことで、より深く相手を知るきっかけにもなるという。「この業界では親密度が大きく営業活動に影響します。項目が空欄であれば、きちんと訪問時に確認するといった意識づけが可能になるなど、より親密度を高めていくことにつながるはずです」と家村氏。将来的には、埋まっていない項目を色づけすることで、さらに気づきやすい環境にしていきたいと家村氏は意気込みを語る。
今回kintoneによって営業プロセスの管理を行ったことで、納期回答が迅速になっただけでなく、営業進捗の把握や目標達成状況の可視、案件ごとの収支管理の実現、顧客を深く理解することによる戦略的な顧客対応の実現など、さまざまな効果が生まれていると家村氏は評価する。「定量的に見れば、外注比率を70%削減でき、営業利益を大きく増加させることができました。これまでのプロセスを見える化することで、現場からは周りに“見られちゃう”ことになるわけです。その影響もあって、これまで以上にしっかりと数字が管理できるようになりました」と家村氏。
また今ではkintone上にリアルタイムな数字が反映されており、改善に向けたPDCAサイクルを高速にすることも可能となっている。「紙による帳票では、1か月前から今日までの情報が印刷されているだけで、それはすでに過去の情報。kintoneであれば、今日の数字が明日改善できるようになるのです」と家村氏はその効果を力説する。なお、同一案件で複数の取引先が競合する場合には、担当者が異なっても整合性の取れた見積が出せるようになるため、kintoneは現場からも好評だという。
現状は営業以外のポータルはまだ運用が始まっておらず、各部署にとって見える化させたい情報があれば気づきにつなげていきたい考えだ。「後からアレンジできるのはkintoneの大きな魅力の1つ」。また、社員全員がスマートフォンに変わった段階で、日報も含めて外部からkintoneが利用できる環境を整備していきたいという。
さらに製造部進捗管理アプリでは、切断や加工といった各プロセスの進捗状況に加え、作業ごとの工数をしっかり管理することで、見積時の加工費が適正だったかどうかのフォードバックにも使っていきたいという。他にも、現在検討を進めている海外の事業についても、クラウド環境の利便性を生かして業務基盤として活用していきたいと今後について語っていただいた。
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