一関市役所
- 【業務内容】
- 自治体業務
- 【利用用途】
- インターネット上でのwebフォームを使った選挙事務募集、職員向けアンケート
岩手県一関市では、28年度から選挙事務に従事するスタッフの募集をweb上で行なっている。
背景には、同じく28年度からの選挙制度改正により、公職選挙の選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられたことがある。この制度改正を機に、新たに選挙権を持つ若い層にも選挙事務に積極的に関わってもらい、市政に関心を持ってほしいという思いがあった。そのため、従来の書類の郵送といった募集形式をwebフォームへ変更、インターネットに馴染みの深い若年層からの申し込み増を狙った。
その選挙事務スタッフへの応募をweb上で受け付ける仕組みに、kintoneが採用されている。今回は一関市役所 総務部 総務課 情報化推進係の 糸数 透氏にそのお話を伺った。
一関市は、岩手県の南に位置する人口約130,000人の市で、人口・面積ともに岩手県内で第2位の規模となっている。平成17年以降、計8市町村が合併し、現在の一関市を構成している。
2017年からの総務省の通達により、各自治体は庁内ネットワークを三層に分離している。これまで多くの自治体は、LGWAN(統合行政ネットワーク)接続系ネットワークと、インターネット接続系ネットワークを同一ネットワーク内に設置していたが、現在はこれらを分離することで、庁内業務や住民基本台帳に関わる情報のセキュリティを強固にしている。
そのため、普段の主な業務にはLGWAN環境を利用しているが、今回の選挙事務スタッフの募集に使用する仕組みは、インターネット上で利用できる必要があった。
「28年度の選挙制度改正後、若い人が市の行政に関心を持ってもらうためのきっかけの1つとして、選挙事務の仕事に関わっていただくのはどうかと考えました。ところが、こちらの募集をかけるのにあたり、これまでのように書面で申込書を持ってきてもらったり、もしくは郵送してもらったりというやり方ですと、なかなか応募が集まらないという現状がありました。」
実際に、kintone導入前の選挙事務スタッフ募集時の応募数は、数名程度にとどまっていたという。
「そこで、『web上のフォームでセキュアに申し込み受付する仕組みを作ることができないか』という要望が選挙管理委員会事務局からあがってきました。それによって対人で受付する時間や、郵送にかかるコストや煩雑さなど、そういったものを解消したい。また、若い人には馴染みの深いインターネット上で申し込みを完結させられることで、より気軽に応募できるようにしたいという期待がありました。」
普段はLGWAN環境の中でも使用できるオンプレミス型のシステムを使うことがほとんどだと語る糸数氏。しかし、地域市民もアクセスできるインターネット上でもセキュアに使えるサービスをとサイボウズの担当に相談したところ、kintoneを薦められたそうだ。
kintoneでは、100種類を超えるさまざまなクラウドサービスと連携し、機能拡張することができる。今回の選挙事務スタッフ募集アンケートの仕組みも、kintoneとフォームクリエイターというwebフォーム作成サービスと連携することで実現した。
まず、kintone上で応募者の氏名、住所などの情報を管理するアプリを作成する。その後、フォームクリエイターで申し込み用フォームを作成し、kintoneのAPIによってフォームとアプリを紐づける。このフォームはkintoneのアプリと同様、ドラッグ&ドロップで簡単に作成することが可能だ。
▼市のHPで公開されている、フォームクリエイターで作成したwebフォーム
▼フォームと紐付いたkintoneアプリに、情報が自動で取得される
フォームは市のHP等で公開され、kintoneユーザーでない地域市民が入力できるようになっている。フォームに情報が入力されると、自動的にkintoneアプリのレコードにも反映されるという仕組みだ。
「実際に導入を担当していた職員が最初に使ってみて、特に戸惑うことなく目的の機能を作成することができたようです。フォームクリエイターのwebフォームの作成や、kintoneアプリ紐付けも現場の担当者が行っています。連携というと難しそうに聞こえますが、実際は仕組みを作るのに大きな苦労はなかったと言えます。」
一関市役所では、これまでもデヂエやガルーンなどのサイボウズ製品を利用していたが、完全にLGWAN環境外で利用するクラウドサービスの導入の検討ははじめてだった。応募者や職員の個人情報をデータとして取り扱うことになるが、情報セキリュティに関する不安の声は庁内で上がらなかったのだろうか。
「これまでもサイボウズの製品を使わせていただいていたことや、サイボウズの脆弱性に対する取り組み方をHPなどで事前に把握していたため、セキュリティ対策に関しての信頼は厚かったです。これだけスマートフォンが普及している中、アナログな方法だけではなかなか若い人が行政に関わるきっかけを作ることは難しい。Webアンケートの仕組み作りをすぐに始められるだけの信頼基盤はありましたね。」
また、セキュリティを担保するため、運用面でも工夫をしていると糸数氏は語る。
「アプリの利用権限は、スタッフの募集に関わる一部の部署に限定した上で付与しています。また、kintoneのアクセス権機能なども使って、必要な項目以外は閲覧できないように設定しています。」
実際に選挙事務の募集にkintoneとフォームクリエイターによる仕組みを導入してからは、応募総数はこれまでの約10倍と大きく跳ね上がる。
「28年度7月から、webフォームでのスタッフ募集を開始しました。選挙事務の学生募集の際には、トータルで31人くらいの応募がありまして、そのうち27人はWeb上からの申し込みでした。申込書を郵送いただいていた頃は、3.4名の採用に留まっていましたが、webフォームでのアンケート集計の仕組みがkintoneで作成できたことにより、若い人からの応募のハードルがぐんと下がったと感じました。」
また、このアンケートの仕組みは、庁内で実施する職員向けアンケートにも応用することができた。
▼職員アンケートの入力フォーム
▼集められたアンケートは500件ほどになっている
庁内アンケートについては、セキュリティ強靭化対策が始まる以前はGoogle formでアンケート結果をCSV出力後、Excelでクロス集計する項目を選択、ピポットテーブルで集計していた。しかし2017年以降、セキュリティ強化のために自治体ネットワーク内でのGoogleやYahooが提供するサービスの利用を制限した。そのためGoogle formも使用ができなくなり、別の手段を検討していたところだった。
現在では、選挙事務スタッフ募集の仕組みと同様の方法で、kintoneアプリへアンケート結果を集約。一覧画面でクロス集計する項目を絞込み表示し、kintone上で自動集計したものをCSV出力することができるようになった。
「庁内アンケート業務については、CSV出力後のクロス集計業務の作業時間を、担当者トータルで10時間ほどを削減することができました。」
webフォームでの選挙事務スタッフ募集は、今後も引き続き取り組んで行く予定だという。今後の庁内外でのkintone活用について、糸数氏にその展望を聞いた。
「例えば市主催のイベントの参加申し込み管理に、今回の仕組みは相性が良いなと感じています。また、庁内の業務についても、全庁向けのアンケートは現在でもExcelで集計・管理を行っているので、そちらの業務の改善も可能だと考えています。」
最後に、糸数氏にとっての「kintoneとはなにか」を伺うと「時間やコストの制限を超えて、自由に意見や情報を集めることができるツールです。」と答えてくださった。
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