
ホクレン
- 【業務内容】
- JAグループ北海道における経済事業
- 【利用用途】
- 農薬請負散布業務の進捗管理、JAからの各種申請業務の受付



ホクレン農業協同組合連合会は、JAグループ北海道において経済事業を担う組織だ。2024年度の取扱高は1兆6,800億円に達し、北海道の農業を支える重要な役割を果たしている。全国の消費者へ農畜産物を供給する「販売事業」、生産者の営農活動を支える「購買事業」や「営農支援」が主たる業務である。
そんな同会は長期ビジョン「Vision2030」の達成に向け、デジタル技術を活用した抜本的な業務改革を推進している。多様なデジタルツールを適材適所で使い分ける戦略のなかで、kintoneは外部との連携が必要な業務で重宝されており、2025年現在、管理本部を含む全7事業本部のうち6本部・156課へと利用が拡大。職員の3分の1にあたる約600名が日常的に活用するまでに浸透した。
なかでもkintoneが価値を発揮しているのが、JA(農協)や取引先との連携業務だ。会外のメンバーを招待して情報共有できるゲストスペース機能を駆使して30もの組織とセキュアな情報共有環境を構築しているほか、外部連携機能を有するプラグインを通じて100以上の関係先ともつながっている。これにより電話やFAXなどアナログなやり取りが主だった外部とのコミュニケーションをデジタル化し、大幅に生産性を上げている。この業務改革を支えているのが、ICT推進部 デジタル推進課による伴走支援のもと、現場職員がアプリを構築する「市民開発」である。
今回は、DX推進を司る管理本部 ICT推進部 デジタル推進課 課長補佐 武田氏をはじめ、資材生活事業本部 肥料農薬部 農薬課 課長 近江氏、肥料農薬部 農薬課 戸部氏、資材生活企画課 岸田氏、旭川支所 生産資材課 小川氏に、kintone市民開発の舞台裏を中心に導入成果についてうかがった。
生産者の負担軽減や労働力不足の対策として、令和3年度に始動したドローンによる農薬の請負散布業務。しかし、この事業の拡大を阻んでいたのは、ホクレン、JA、散布業者の三者間で発生する「アナログな事務作業」であった。依頼内容はExcelに記載し共有していたが、修正のたびにファイルが複製され、どれが最新版か分からなくなる混乱や、一件の修正ごとに繰り返される電話連絡のリレーに現場は疲弊。さらに、古いフォーマットの混在による集計不備や、一件ずつ目視で行う請求書の突合作業に最大5〜6時間を要するなど、積み重なる膨大な事務負担が大きな経営課題となっていた。

資材生活事業本部 肥料農薬部
農薬課 課長 近江健太郎氏
「当初、私たちは事業のボトルネックを農薬請負散布業者のキャパシティにあると考えていました。しかし、実際に運用してみると、真の課題は自分たちの事務処理にありました。膨大な事務作業に圧倒された初年度の実績は700haでしたが、これが限界でした。このままではVision2030で掲げた10,000haの達成など到底無理だと途方に暮れていたのです」と近江氏は振り返る。
農薬請負散布業務における事務作業の効率化を図るため、農薬課の若手職員である戸部氏と小川氏は外部と共同編集ができるツールを求めて資材生活事業本部のDX推進担当である岸田氏に相談。ノーコードで開発ができ、ゲストスペースを活用することで外部と連携も可能になるkintoneの提案を受けて導入を決めた。
ホクレンにおける最初のkintone導入は2021年だった。畜産生産部とパールライス部の2部門からの「Word形式の日報をデータ化したい」という要望に対し、当時のICT推進課(デジタル推進課の前身)が国産ツールならではの分かりやすさと操作の簡便さがあるkintoneを提案。旭川支所の10名でkintoneの利用を開始。その後、両部内に展開され2023年には日報利用者は260名に拡大していた。
またkintoneの導入と同時期に、法改正により約5,000件の生乳生産者と契約を結ぶ必要が生じた。これをExcelとメール連絡で処理するのは大変なうえセキュリティ面でもリスクがある。そこでkintoneと連携可能なwebフォーム作成プラグインを利用して、JA・生産者が入力した情報をもとに契約書を生成できるアプリを作成。これが同会におけるkintoneの会外連携活用の実績となっていた。
「契約書作成業務での実績から、現場が外部との連携を必要とするシーンでのkintone活用に大きな手応えを感じていました。農薬請負散布業務はまさにこのケースだったのです」と、デジタル推進課の武田氏は語る。

管理本部 ICT推進部 デジタル推進課
課長補佐 武田展也氏

資材生活事業本部 肥料農薬部
農薬課 戸部剛太氏
戸部氏と小川氏はIT知識がゼロの状態からアプリ開発を始め、デジタル推進課の伴走支援を受けながらホクレン、JA、散布請負業者の3組織間で発生する農薬請負散布の受発注ができる高度なアプリを完成させた。
「kintoneの導入検討段階で岸田さんが『アプリの型』を作ってくれました。それを見た時に『これなら自分も開発できる!』と確信しました。そこから私たちの事業部の知識だけでは開発が難しい点を解決するためにデジタル推進課に通い、週1回の打ち合わせを4ヶ月継続。開発初心者の私たち2人でしたが、サイボウズが提供するコンテンツを頼りに手を動かし、分からない点はデジタル推進課に聞くというサイクルを繰り返しました。その結果、圃場マップの登録や農薬請負散布面積の自動計算、外部組織に対してはアプリ内の項目ごとに閲覧制限や編集制限もできるアプリを自分たちの手で完成させることができました。」と、アプリ開発当時を戸部氏は振り返る。
農薬請負散布アプリ。JA・請負散布業者・ホクレンが同じ情報をみながらチャットでやり取りが行われている。
農薬請負散布業務においては、外部組織と共同編集ができるゲストスペースを活用したことで、これまで1案件に対して5〜6個も作られていたExcelファイルは不要になり、1案件の情報を1つのレコードに集約。完全にExcelから脱却し、発注から報告までをkintone一つで行える体制が整った。また、かつては5〜6時間を要していた散布内容と請求書内容の突合作業も、わずか15分に短縮された。請求書アプリも開発し、農薬請負散布アプリと請求書アプリで散布情報を連携させることで情報の突合が不要になったのだ。結果、事業の成長へと直結。以前の運用では年間1,000haが管理の限界だったが、ミスなく3,000haを超える規模まで拡大し、最終目標である10,000haを目指す土台ができた。
農薬散布の状況把握ができるだけでなく、発注の傾向など様々な角度から分析もできるようになった。
「ITの知識がなくても、kintoneなら『こうしたい』と思ったことを自分の手ですぐに形にできます。触っているうちにどんどん楽しくなり、その使いやすさが現場の課題と噛み合ったことが、開発の大きな原動力になりました。今後はさらにマップ管理などの機能もブラッシュアップし、関係機関への支援をより強力なものにしていきたいと考えています。」と戸部氏は語る。
農薬請負散布アプリの開発に携わった小川氏は、その後、現場の最前線である支所へと異動した。本部で仕組みを作る立場から、実際にツールを利用する現場の一員となったことで、kintoneが持つ「現場を動かす力」を改めて実感している。
「農薬請負散布アプリを作った当初、説明会を開いた際は『現場で初めて使う皆さんに受け入れてもらえるだろうか』という不安もありました。しかし、支所に異動してみると、やり方さえ伝えれば皆すぐに使いこなせることが分かり、手応えを感じています。実際に使っていくことで、現場ならではの新しいアイデアもどんどん出てくるはずです。これからも現場の課題を積極的に見つけ出し、多角的な視点からJAの仕事を支援していきたいと考えています」と、小川氏は話す。
また、資材生活事業本部の施設課では、施設の修繕や新設を担う事業者約700社の「請負事業者登録」を2年に一度更新している。以前は、郵送で届く膨大な書類の確認、Excel転記や手計算による評価付け、さらには事業者への受理報告のメール作成送信まですべて手作業で行い、極めて高い事務負荷が課題となっていた。このアナログな一連の工程を刷新すべく、申請受付から評価の自動算出、そして受理報告までを一気通貫で自動化する仕組みをkintone、webフォーム作成プラグイン、外部への情報公開プラグインで構築した。
「以前は更新時期の1月から2月にかけて、職員2名が通常業務を止めてこの作業に忙殺されていました。現在、事業者が登録した内容と添付書類を、kintone 上でAIによって自動照合し、評価業務の自動算出や受理報告メールの自動作成・送信まで行う機能を実装しています。これにより、234時間の業務削減に成功しただけでなく、転記ミスや計算ミスも完全に排除できました。また、事業者も受付期間内であれば24時間いつでも登録内容の確認や変更することができるようになり、職員の問い合わせ対応も減少しました。物理的な書類管理の負担や、保管場所を巡る部署間の摩擦も解消され、現場の心理的な安全性と業務スピードの両立が実現しています」とDX推進担当の岸田氏は評価する。

旭川支所 生産資材課
小川夕希奈氏

資材生活事業本部
資材生活企画課 岸田 直也氏
デジタル推進課では「デジタルシフト相談会」を開催し、現場の課題を直接汲み取り課題に合う業務ツールを提案している。会外連携ニーズがある場合や、ITの知識がなくてもみずから市民開発できるツールとしてはkintone、会内限定業務かつ、ある程度ITの知識を必要とされる開発にはMicrosoft製品やRPAといったように、目的に応じて業務ツールを使い分けている。
「JAや取引先との連絡手段がFAXや電話、メールに依存していた中、『情報共有のコストを下げたい』という切実な声に対しkintoneを提案すると8割の部署が採用するほどの反響があります。外部連携を軸としたkintone活用がデジタルシフト相談会を通じて一気に広がっています」と武田氏。
またデジタル推進課は「グループ会社やJAの支援」という中期計画のもと、2025年度からグループ全体の業務改善サポートを開始。その起点となったのが「情報共有ポータル」アプリだ。同ポータルはホクレンからグループ会社への周知やDXに役立つ情報の発信を目的としており、グループ会社はポータル内の情報を閲覧したり、フォームから情報を送信したりできる。
「ポータルの周知のために全27社を回った際、複数社から具体的なDXの相談をいただきました。顧客向けマイページの構築や、支所と小麦貯蔵施設とのコミュニケーションアプリの開発などが進行中です。ポータルという窓口ができたことで、外部からも気軽に相談してもらえる体制が整いました。会内で培ったノウハウを広げ、グループ全体のDXを加速させていきたいです」と、武田氏は意気込む。
ホクレンは、会内業務に特化した既存ツールでは踏み込めなかった領域へkintoneで切り込み、JAや生産者といったパートナーとの繋がりをデジタルで強固なものにする構想を描いている。
「ホクレンは生産者をはじめ、JA、取引先があればこその組織です。外部と一緒に仕事をしなければ成り立たない組織だからこそ、コーポレートスローガンに掲げる『つくる人を幸せに、食べる人を笑顔に』を実現するために、情報共有の強力なツールとしてkintoneを活用していきたいと考えています。」と武田氏。ステークホルダーとの絆をkintoneで強化し、ホクレンは北海道農業のさらなる飛躍に貢献すべく邁進する。
(2025年11月 取材)
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