北國銀行
- 【業務内容】
- 金融機関、コンサルティング
- 【利用用途】
- 住宅ローンの審査結果や状況確認などの情報共有、ファイル管理
石川県金沢市に本店を置く北國銀行では、個人向けのローンや資産運用の窓口となるマネープラザにおいて、住宅ローンに関する住宅メーカーとの情報共有基盤としてkintoneを採用、手続きの見える化や必要書類一覧などの情報提供を通じて業務の効率化を実現している。また、同行が手掛ける事業コンサルティングにおけるICT基盤の1つとしてkintoneを活用し、コンサルティング先の業務改革支援に役立てている。幅広い業務に活用するkintoneの位置づけについて、カスタマーサポート部 マネープラザ 松ヶ浦 久仁彦氏および同プラザ 山本 宏美氏、そしてコンサルティング部 コンサルティング課 大家 智子氏にお話を伺った。
1943年に加能合同銀行と加州銀行、能和銀行の3行が合併して誕生した株式会社北國銀行。「豊かな明日へ、信頼の架け橋を~ふれあいの輪を拡げ、地域と共に豊かな未来を築きます~」を企業理念に掲げ、地域のリーディングバンクとして地域から信頼を獲得している。また同行ではICTを活用した業務効率化への取り組みも積極的に進めており、基幹システムのオープン化に伴うペーパーレス化の推進や全面的なIT基盤システムのクラウド化など、金融機関としての先進的な取り組みが注目されている。これら社内での成功体験を地域に還元するべく、2018年には顧客の効率化を支援するコンサルティング部を設置するなど、地域経済の発展に貢献する活動にも積極的に取り組んでいる状況だ。
そんな北國銀行において、個人向けの住宅ローンや資産運用、ライフプランなどに関する相談受付の窓口となっているのがカスタマーサポート部にあるマネープラザだ。100名ほどの行員が在籍するマネープラザは、石川県を中心に北陸3県に9店舗を展開しており、同行で取り扱う住宅ローンの8割以上を担うなど、住宅ローンに関する中核的な部署となっている。100を超える住宅メーカーとの取引があり、メーカーの営業と円滑な情報共有が欠かせない。
これまで住宅メーカーとは、電話での確認や営業所に来店してもらったうえで紙の帳票をやり取りすることで情報共有を行ってきたが、業務負担が大きな課題となっていた。
「住宅メーカーを担当している10名ほどの行員が、100社合わせて400名ほどの担当者と日常的に情報のやり取りを行っています。頻繁に電話での問い合わせが発生するだけでなく、営業店での対応も含めると、業務的に大きな負担になっていたのです」と松ヶ浦氏は当時の状況について説明する。この状況を打開すべく、住宅メーカーとの間で顧客ごとの進捗情報が共有できるデータベースの仕組みを導入するアイデアを思い付いた松ヶ浦氏だが、本来依頼先となる行内のシステム部門が数多くのプロジェクトを抱えていたことで、業務改善に向けた基盤づくりをすぐにスタートすることが困難な状況だったという。
「限られたリソースの中で優先順位をつけてシステム開発が行われるため、課題を解決するためのシステム開発にいつから着手できるのか、道筋が見えない状況が続いていたのです」と説明する。
そんな折、顧客の業務改革を支援するコンサルティング部のICT支援の事例をふと耳にした松ヶ浦氏。実はこのICT支援の場面で多く採用されていたのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「相談した当初は、kintoneで何ができるのか全くイメージできていませんでしたが、現状の課題についてコンサルティング部に説明してみたところ、すぐに改善策に向けた図を示してくれた。情報共有基盤としてkintoneが役立つことが理解でき、暗闇の中に一筋の光が見えたのです」と松ヶ浦氏。
もともとコンサルティング部にてICT支援を中心に行っていた大家氏は、数年前にパートナー会社からkintoneの紹介を受けその汎用性に注目していた。
その後、県内の漆器メーカー13社と職人40人をつなぐ受発注システムをkintoneで開発するプロジェクトの要件定義及び導入支援を担当した。「kintoneが持つゲストスペースの機能を使えば、情報共有基盤が整備できると考えました。社内で運用している基幹システムやグループウェアのサブシステム的な位置づけでkintoneが活用できるのでは、と以前から考えており、相談を受けた段階ですぐに提案しました」と大家氏は語る。
そこで、相談後すぐに大家氏がアプリを試作し、同時に個人情報の取り扱いに関してリスク管理部門と相談しながらセキュリティ審査も実施。あわせて住宅メーカーに対して必要な機能をヒアリングすることに。その後、コンサルティング部から使い方のレクチャーを受けたうえで、マネープラザ内でアプリ改修を実施するまでに1か月あまり。そして住宅メーカーとの間で試行し、構想からわずか3か月という驚異的なスピードで住宅メーカーとの情報共有基盤を整備することに成功したのだ。
「通常であれば、一から要件定義してシステム開発していくような、期間の長いプロジェクトになっていたでしょう。今回相談してからわずか3か月後から運用をスタートしていますが、そのスピード感では導入できていなかったはずです」と松ヶ浦氏は驚きを隠せない。
当初は取引量が大きく、システム化に協力的な3社を皮切りにkintoneを使った情報共有基盤の運用を開始し、現在は20社ほどの住宅メーカーとの情報共有を実現している。新型コロナウイルス感染症の影響もあって住宅メーカーの関心が高いことから、2020年度中には30社ほどにまで拡大する計画だ。マネープラザに在籍する行員や住宅メーカーへの展開も含めて、25ライセンスにて運用を行っている。個人情報を取り扱う観点から、ライセンス費用は同行が負担したうえで住宅メーカーに付与しており、セキュリティに配慮された形で運用されている。
「費用が発生すると導入ハードルが上がってしまうだけでなく、住宅メーカーの営業担当者の行動までは制限できないため、住宅メーカー側のライセンスは我々の方が負担しています」と松ヶ浦氏は説明する。リスク管理部門と懸念事項を一つずつ解消していくことで、kintoneの運用が可能になっている状況だ。
具体的な活用に関しては、住宅ローンに関する審査結果や各種条件などが一覧で確認できる「審査結果連絡票アプリ」をはじめ、中間金の手続きなど住宅ローンの分割未実行残高や分割貸出期限などが確認できる「住宅ローン実行状況アプリ」、事前審査や本申込などの際に必要な書類がいつでも閲覧、印字でき、顧客に受け渡すことが可能な「必要書類一覧アプリ」などが用意されている。また、kintone画面上から同行のホームページ上にある来店予約へのリンクも設置されているなど、住宅メーカーの営業担当者に便利なつくりとなっている。
住宅メーカーとの円滑な情報共有が可能になったことで、いつでも必要な書類が入手しやすくなっているだけでなく、審査結果や融資途中の分割残高に関して確認するための電話連絡や結果の通知に関する紙での通知も不要になっている。「案件ごとの融資の状況について、住宅メーカーの経理担当の方も状況把握しやすくなり、営業担当者の不正防止にもつながると好評です」と山本氏。
住宅メーカーに負担を強いることなく、良好な関係を築いたまま効率化できていることが実感しているという。期待していた業務の効率化については、審査結果連絡や連絡書の持参、分割関連の問い合わせなどの負担が軽減したことで、30社に導入した場合に月間112時間の業務削減効果を見込んでいるという。
運用しているアプリは、最初に大家氏がサンプルを作成したえうで、手直しや機能追加などは全て山本氏が手掛けており、最終的にはマネープラザ内での完全な内製化を実現。プラグイン活用やJavaScriptでのカスタマイズは実施せず、全て標準機能だけで情報共有基盤が構築されている。「プログラミングやシステム開発の経験がないなかで、業務アプリの作成や改善を内製化することができました。山本の資質もありますが、誰にでも開発しやすく管理者の立場から見ても使い勝手がいい」と松ヶ浦氏は高く評価する。
実際にアプリの作成を行った山本氏は「サンプルが数多く用意されているためイメージしやすいだけでなく、直感的に作っていくことができ、全く知識のない私でも開発できました。ヘルプも充実しており、分からなければ参照するだけで答えにたどりつけるようになっています」と評価する。住宅メーカーを担当する行員の要望を聞きながら日々改善も実施するなど、自部署だけで改善まで実施できるのは大きな強みだと評価する。
「住宅メーカーの担当者から、審査結果などの書類を社内に展開したいので印刷できないかという要望を受けたことがありましたが、機能改善が即日できたことで大変驚かれました」と松ヶ浦氏。
また、審査結果連絡票についても、これまで住宅メーカー内で使っていた書類にできる限り近づけることを意識したという。あわせて、印刷時にうまく収まるように調整するなど、工夫を凝らしながら開発を進めたと力説する。「印刷する際にはWebブラウザごとにズレが生じてしまい、どうしたらいいのか悩む方もいるはずです。そんな疑問もすぐに解消できるよう、kintone内のヘルプへのリンクをつけるなど、できる限り使いやすいように工夫しています」と山本氏。
コンサルティング部でも顧客の業務改革に適した手段の1つとして製造業や小売業などさまざまな業種の顧客にkintoneを提案しており、すでに50社を超える企業に展開が進んでいる。経営戦略立案や経営強化、事業承継、ビジネスマッチング、M&Aなど企業が抱える課題に適した幅広いコンサルティング業務を手掛けており、なかでもICT推進が必要なものに関しては、大家氏含めたICT推進チームが他のチームと同行、kintoneが活躍できる場面で積極的に提案活動を行っている。
そんなkintoneの魅力については「要件定義書などを一から作っていく通常のシステム開発の場合、どうしても最終系がイメージしにくいものですが、kintoneは画面に触れながら開発していけます。お客さまによってはスマートフォンだけで情報共有するケースもありますが、kintoneであればモバイル環境でも利用できるなど、利便性の高さも大きなメリット。初期費用がおさえられるクラウドベースの仕組みだからこそ提案もしやすい」と大家氏。
行内の業務改善に生かしている松ヶ浦氏は「システム部にお願いせずとも自分の部署だけで運用していける点は大きい。kintoneの魅力は、特別な能力や知識も不要で、自分たちで改善要望にも対応できる使い勝手の部分に尽きます。最近では、他部署での課題を聞くと、kintoneを使って改善できるのではとアドバイスする機会も増えています。もはやkintone信者といっても過言ではありません」と語る。
今回のプロジェクトでは、取引のある住宅メーカーをターゲットに情報共有基盤を整備したが、まだ同行と取引のない企業に対して利便性の高さをアピールするなど、戦略的に取引先を増やすためのツールとしての活用も視野に入れている。また、取引先がkintoneに触れる機会が増えるため、同行が手掛けるICTコンサルティングのきっかけにもつながると松ヶ浦氏は期待を寄せている。
今後については、コンサルティング部の活動として行員全員がコンサルティングできるような体制づくりを目指しているという。顧客との取引において、データベースを活用すれば効率化できるという視点を常に持ってもらえるよう、行員全員にkintoneの活用イメージを醸成していきたい考えだ。「短期的なトレーニングとして、支店の行員にICTチームでの業務を体験してもらっており、そのカリキュラムの1つにkintoneの基本やアプリ開発を用意しています。その経験があれば、お客さまとの会話のなかで課題への具体的なヒアリングが可能になるはずですし、最終的にはICTチームのコンサルティング案件につながるような動きにつながればと期待しています」と大家氏。
北國銀行のICTコンサルティング事業部のイメージ図
またマネープラザでは、住宅ローンの中間金の支払といった分割実行に関する手続きに関して、kintoneから直接依頼できるようなアプリを用意するなど、さらなる効率化につながるアプリ開発を進めていきたいという。「マネープラザではローン以外にも資産運用の相談も受け付けており、他の部署も含めたコラボレーションも必要です。いろんな場面でkintoneを積極的に活用していきたい」と松ヶ浦氏。山本氏も「行内のペーパーレス化は進んでいますが、まだ社外とのやり取りではFAXなども多く利用しているケースも。少しでもkintoneで効率化できる場面があれば広げていきたい」と最後に語っていただいた。(2020年10月取材)
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