広浦 様の導入事例

広浦

【業務内容】
酒蔵向け温度計「kojimori」の開発、販売
【利用用途】
顧客管理、販売した製品などの情報管理、問い合わせ管理など
  • 平均年齢63歳、たった5人の会社で最先端のIT技術に挑戦。「最少の人数で最大の仕事をする」ために必須だったkintone

株式会社広浦(以下、広浦)は、元は石灰石や高純度硅石、テラゾ砕石など石を取り扱う『石屋』だった。しかし今から9年前、現社長の意向で石屋からIT企業へと事業転換をした。従業員は全部で5名、平均年齢は63歳。主に地酒造りの酒蔵向けにスマホで見える温度計「kojimori」の開発、販売している。対象ユーザーは日本酒の造り手である「杜氏」。大吟醸を作る過程で、杜氏たちは2日2晩、付きっきりで麹の温度や様子を見守らなければならない。従来であれば2時間おきに2日間、温度を確認しなければならないが「kojimori」は温度計と、データをインターネットに送るセンサゲートウェイの組み合わせで構成されているので、スマートフォンからも随時温度を確認できるのだ。「酒造りの腕には自信があるけれど、ITはどちらかというと苦手」という杜氏たちが多い。広浦では、現場の匠の役に立てる製品開発と、顧客の気持ちに寄り添ったサービスの提供に注力しているそうだ。
そんな広浦では、なんと70歳になる事務の女性がkintoneを便利に使いこなしているという。今回はkintoneの導入に至った背景から活用方法まで、スタッフの方々にお話を伺った。

手書きの「かんばんシート」に限界…当人しか分からない情報が多く、情報を探し出すのに多くの時間を要していた

kintone導入以前、広浦では機器構成や設定情報はExcel、商品出荷までの情報を「かんばんシート」と呼ばれる紙に手書きで記載し、管理していた。紙を採用した理由は、Excelの操作に慣れていない経理社員の参加が必要だったからだという。しかしこの方法だと、顧客からの問い合わせやトラブルが発生した際に、膨大な紙の帳票から該当する案件のかんばんシートを探し出さなければならず、すぐに対応ができなかったそうだ。

また、手書きのかんばんシートの運用だと、売上表にも同じ情報を転記したり、宅急便の伝票に転記したりと、何度も同じ情報を手書きしなければいけない手間が発生していた。この作業に多くの時間を要していたことを問題視した社長が、新たなツールを探し始めたそうだ。

現場からの声に後押しされて、新たなツールの導入を決意。年齢や職種を問わずに使えるツールはkintoneだけだった

非効率な手書きの「かんばんシート」に、とうとう現場から「何とかしてほしい」という声が上がった。広浦氏が過去にLotus Notesを扱う仕事に携わっていた経験から『新たなツールを導入するならカード型データベースシステムが良さそうだ』というイメージだけはあったという。

しかし実際にツールを使うのは、現場で働く60代~70代の従業員たち。多機能なシステムは使いこなす自信が無かったため、とにかく分かりやすくて自分に必要な機能をカスタマイズできるようなものを探していたそうだ。kintone導入当初のことを赤間氏は次のように語った。

「実をいうと、kintone導入したばかりの頃、私達もそこまで戸惑うことはありませんでした。それだけ手書きによるコストの方が大きかったですし、私と遠藤は元々ExcelWordなんかも使っていたので。むしろ使いやすい、分かりやすい、という印象でした。どちらかというと事務の女性たちの方が馴染みにくかったのではないかと思います」(赤間氏)

「もちろん、今まで全て手書きだったものをパソコンで打ち込まなければならないことに最初は少し抵抗がありました。でも、まずはやってみて、使いにくいと思ったところはどんどん社長に相談しました。そうしたら社長がkintoneのアプリを改善してくれて、どんどん使いやすくなっていって。慣れてきたらとても便利で、今ではうちの会社にもすっかり馴染んでいますよ」(永田氏)

株式会社広浦 永田氏

株式会社広浦 庄司氏

約1週間かかっていた売上の集計もボタン1つで見られるように
「1人1人の仕事範囲が広い中小企業にとってkintoneは最適なツール」

kintone導入後、A4用紙に手書きで記入していた「かんばんシート」は、全てkintoneのアプリに移行した。元々事務の女性たちがExcelだと使いこなすのが難しいという背景から紙を採用していたが、kintoneではどうだったのだろうか。

「私はkintoneの入力画面を紙に印刷して、どこに何を入力すればいいのか書き込んでいます。自分なりのマニュアルのようなものですね。kintoneは決まったところに必要な情報を入れるだけなので、難しい事は何もありませんでした」(永田氏)

また、kintoneの検索性により社内の情報を担当者以外もすぐに探し出せるようになったことが、社内全体にとって大きなメリットになったという。

「今までは担当者しか情報を把握できていないケースがほとんどでした。なので、その担当者が休んでしまうと必要な情報がすぐに引き出せなかったのです。しかしkintoneは探したい会社名などキーワードを入力するだけで、必要な情報が即座に取り出せます。以前に比べて、夏休みなどの長期休暇を取る時も安心して休めるようになりました」(遠藤氏)

その他、毎年1年間の売上を分野ごとに計算し、報告としてまとめるために紙の帳票からひとつひとつ情報を集めて集計していたそうだ。この作業は他のルーチン作業も抱えながら大体5日~1週間ほどかかっていた。しかし現在は売上もkintoneに集約しているため、ボタンひとつで集計ができるほか、現状の売上集計なども見たい時にいつでも見ることができるようになったという。

「私たちはたった5人という人数で会社のすべての業務をこなさなければなりません。11人の仕事の範囲も広く、数も多いです。だからこそ、日々発生する転記作業や紙の帳票から情報を探し出す作業が削減できることが非常に重要なのです。最小の人数で最大の仕事をするために、kintoneはすごく役に立っていますよ」(永田氏)

「経営者視点でみると、社内のメンバーたちの手間が大きく削減できたのはもちろんのこと、『いま会社で何が起きているのか』というのがリアルタイムに、整理された状態で見られるというのはとてもありがたい効果です」(広浦氏)

永田氏による独自のマニュアル。kintoneの画面を紙に印刷し、入力するべき場所にマークをしている。

最後に、代表取締役社長の広浦氏はkintoneについて次のように評してくれた。

「私たちは平均年齢63歳をよしとはしていません。中高年になると「忘れる」「思い込む」「常識が先に出て、前提の違いも深く考えなくなる」「文書作成に完璧を求めるか、手を付けなくなる」「いろいろめんどくさい」…やはり思い当たることばかりです。しかし私たちはお客様に恵まれました。星の数ほどある業者の中から、ITの素人同然でスタートした私たちを選んでくれました。「重宝しているよ」と声をかけてくれる杜氏さんの言葉は、なによりも励みになります。そんなお客様のためにも、しっかりサポートしてゆかなければなりません。優秀な方たちに引き継いでもらいたい。しかし、引き継ぐ流れは自分たちで作っていくしかありません。kintoneは、そんな手作りの「会社のデジタル化」に付き合ってくれる、柔軟性あるやさしいプラットフォームだと思います」(広浦氏)

もともとは手書きの「かんばんシート」の移行から始まったkintone活用だが、今ではお客さまからいただいたお褒めの言葉を書き留めておくアプリを作り自分たちの強みを共有しているほか、お中元やお歳暮の管理などもkintoneで行っているそうだ。今後も広浦では、より質の高い顧客サポートを実現するためにkintoneが活用されていくだろう。

株式会社広浦 赤間氏、遠藤氏