ティー・ケイ・オー ひだまりの郷南前川
- 【業務内容】
- 介護、デイサービス
- 【利用用途】
- 顧客管理、データ集計、名簿管理、勤怠管理
通所介護・総合事業通所型サービスを提供しているデイサービスセンターひだまりの郷 南前川では、自立支援に向けた仕組みづくりとスタッフ間での情報共有を加速させるべく、kintoneによる業務基盤を構築した。
その仕組み構築の最前線で活躍する、生活相談員や介護支援専門員など複数の肩書を持つ主任の清水信貴氏に、kintone導入の背景や仕組みづくりにかける思いなどについて詳しく伺った。
川口市上青木にて長年地域医療を担っている上靑木中央醫院が介護サービスの1つとして手掛けている、有限会社ティー・ケイ・オーが運営しているデイサービスセンターひだまりの郷南前川。2003年の開所以来、自立支援に重点を置いた通所介護・総合事業通所型サービスを提供しており、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師など専門スタッフの支援を中心とした、維持期におけるリハビリテーションに力を入れている。
そんな同施設には250名を超える利用者が登録し、日常生活上の支援や生活機能訓練など各サービスを受けるために日々通っているが、実は2018年には3年に1度の介護保険に関する改正があり、施設運用の大きな変革が求められていた。
「自立支援をこれまで以上に重視する姿勢が国から示されており、そのための仕組みづくりに着手する必要があったのです」と語るのは、生活相談員や介護支援専門員など複数の肩書を持つ主任の清水信貴氏だ。
そのための仕組みとして検討したのが、自立のための自己選択型デイサービスだった。「朝の送迎車の中で当日の予定を利用者自身に選択してもらうことで、自立につなげていこうと考えたのです。」と清水氏。
ただし、送迎車の車中で事前にメニューを提示、選択して、その日のメニューに組み込むようなシステムは世の中に存在していない。「最初はExcelも考えましたが、スタッフに情報共有するだけでも難しく、現実的ではありませんでした。そこで新たな仕組みを作るべく動き出したのです」と清水氏は経緯を語る。もちろん、施設内では紙やExcelで行われている既存業務も数多くあり、重複入力やデータの利活用に関しても課題が顕在化していた。
「介護業界においては、担当する方々への情報共有は非常に大切ですが、その情報を利活用するところまでは意識が向いていない。その意識を持ってもらうことで利用者を知るきっかけにもしてもらいたいと考えました」と同じく生活相談員の鈴木一滋氏(現 介護医療院ひだまりの郷 主任)は説明する。
新たな仕組みを検討するなかで注目したのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「以前同じグループの病院に勤めていたときに、利用者の急増で負担の大きくなった情報管理の手間を軽減するべく、kitnoneを活用した経験があったのです」と清水氏。
しかし、同施設にはそもそもExcelで管理されたシステムすら存在しておらず、業務フローも含めていちから設計していく必要があった。手ごろな価格感とプログラム経験のない清水氏自らでもアプリが構築できるkintoneであれば、十分仕組みが整備できると考えたという。
清水氏が赴任してからわずか半年後という短期間のうちに仕組みを稼働させる必要があったことも、kintone選択の大きな要因の1つ。
「短期間での立ち上げだけに、以前使っていたkintoneで構築することは当初から念頭にありました。きちんと業務に適したパッケージがあればいざ知らず、まだ世の中に存在していない仕組みも作っていかなければなりません。経験のあるkintoneでないと短納期での開発には間に合わないと考えたのです」。
現在では、施設内で働く多くのスタッフがkintoneを活用しており、情報管理や報告共有、業務効率化、集計関連など60を超える豊富なアプリが日々の業務に利用されている。実際にはプラグインを駆使したアプリ開発もしており、住所を入力すれば該当する地図が表示される「住所/緯度経度変換プラグイン」をはじめ、50を超える様々なプラグインを積極的に活用。「私自身プログラムが書けないため非常に重宝しています。プラグインがなければ開発することは難しかった」とその有用性について力説する。
①ケアマネジャーと利用者情報を紐づけて管理する「名刺管理アプリ」
いくつか具体的な活用を紹介すると、施設を利用者に紹介するケアマネージャや利用者自身の情報を管理するアプリでは、全体で500名ほどが登録、管理されている。
以前はExcelですべて管理されていたが、今では利用者の名前や住所はもちろん、利用経緯や医療機関名、ADL状況などが詳細に登録されている。
*ADL(Activities of daily living):日常生活活動度。人が生活を送るために行う活動の能力のことである。基本的ADLとは移動、階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などの基本的な日常生活活動度を示す。
②手書きのジェノグラムデータを管理できる「利用者カルテ」
文字や絵の手書き入力を実現する「手書き2プラグイン」を利用した家族構成を示すジェノグラムは、「利用者カルテ」と呼ばれるアプリ内で管理されている。
③利用者の状況を記録する「報告・連絡・相談アプリ」
また、これまで手書きのノートに記載されていた利用者の状況を記録する仕組みもkintoneの報告・連絡・相談アプリに集約。
食事や休みなど報告内容のカテゴリを選択することで必要な情報にアクセスしやすくなり、報告内容と利用者カルテを紐づけることで、利用者別の報告内容がその場で確認できる形となっている。
④自己選択型デイサービスを実現する、自立支援の仕組み
当初の目的だった、送迎時に利用者の希望を聞いて予定を決める仕組みも実装済みだ。
アプリに当日の予定を聞いて入力すると、スケジュール管理のアプリに情報が飛び、そのスケジュールを印刷して利用者が所持することで、どのスタッフでも利用者ごとの予定がその場で見える化できるようになっている。
⑤日々の活動の可視化を実現する、kintone&Tableau連携
また、kintoneとTableauを連携させることで、日々の利用状況を見える化し、利用者の家族に情報共有する環境も整備し始めている。
「施設内で日々何を行っているのかをグラフを使ってご家族に分かりやすく伝えることで、家族内での会話の糸口になったらうれしいですね。現状は本人とご家族だけに見せていますが、いずれは介護サービスのプランを作成するケアマネージャにも共有し、利用者のリハビリ向上にも役立ててもらいたい」と清水氏。
これらアプリを運用に乗せるためには、ITに詳しくないスタッフであっても使いこなせる工夫が必要だ。「アプリへのショートカット専用のアイコンを用意したり、音声入力でタイピングが苦手な人をフォローしたりなど、全員が利用できる環境を整備しています。QRコードにて入力画面を表示するなど、入力できない人を1人でも取りこぼさないよう工夫しています」。
今では不満よりも改善の意見が現場から上がってくるようになったことがうれしいと清水氏。「現場が困っていれば、すぐに改善に向けたアプリを作りますとお伝えできています。現場との信頼関係が醸成できる、これは本当に素晴らしいですし、自分のやりがいにもつながります」。
kintoneを導入したことで、業務改善の効果も表れている。「バイタル記載の時間が半減できただけでなく、リハビリの実施状況の記録では、以前は3人で1人30分かけて行っていたのを、今では30分で3人分の情報が1人で入力できるようになっています」と清水氏。
また施設外からアクセスできるクラウドサービスだけに、子供の急な発熱でも自宅にて作業できる環境が整備できた点も、働き方改革という観点では大きな一歩だという。現場を見る鈴木氏も「担当者や看護師など入力する人が増えたことで、様々な情報が数多く集まってきます。その情報があれば、担当するケアマネージャから連絡が来ても、すぐに状況報告できるようになりました」と評価する。
今後については、介護医療院や訪問介護事業所など、同院が手掛けている複数の介護・看護サービスを連携し、利用者を中心に情報が紐づくような環境づくりに取り組みたいと清水氏は語る。
「複数の施設やサービスを横断的に利用している方もいらっしゃいます。デイサービスで起こったことはほかの施設にもきちんと共有するべき。グループ全体のサービス向上に貢献するためにも、情報が共有できるような基盤をkintoneで構築したい」。また、ケアプランを立案するケアマネージャにもkintone上の情報を共有でき、介護サービスの質向上につながるような環境づくりにも貢献したいと清水氏は語る。
さらに、同院が展開する地域包括支援センターなどにkintoneを展開し、例えば震災時に役立つよう独居高齢者の自宅をマッピングするといった、地域の課題解決にもkintoneを役立てたいと意欲的に語っていただいた。
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