双葉工芸印刷 様の導入事例

双葉工芸印刷

【業務内容】
印刷物、販促物の企画制作及びデジタル媒体の企画制作など
【利用用途】
一連の印刷業務における情報の一元管理
  • アナログなノウハウが数多く残る印刷業界の現場を変える
  • 作業書のデジタル化を中心とした情報共有基盤をkintoneで整備

長年印刷を中心に事業を展開してきた双葉工芸印刷株式会社では、これまで作業書といった情報を紙で記載し、その情報をもとに組版やCTPプレートでの製版、プレス処理など各印刷工程における作業を行ってきたが、作業書のデジタル化とともに打合せ記録など紙の書類をスキャニングすることで情報を紐づけ、kintone上で一元管理を実現している。印刷工程における情報のデジタル化にkintoneを採用した経緯について、常務取締役 兼 営業本部長 依田 裕氏、事業開発室 室長 杉村 陽一郎氏、およびプリプレス課 課長 藤井 健太郎氏にお話を伺った。

【課題】印刷業界に蔓延するアナログな運用からの脱却を目指す

業界特注の仕組みでは吸収できない現場のノウハウ

1958年に前身となる有明印刷所を創業、半世紀以上にわたって印刷業界で実績を積み上げてきた双葉工芸印刷株式会社。POPやディスプレイ、カタログ、パンフレットといった幅広い印刷物を手掛けるだけでなく、厚紙をはじめとした特殊紙への印刷を得意としており、立体物なども含めた“もの創り”を通じて販促物の企画制作やデジタル媒体の企画制作、各種イベントブースの企画運営など印刷以外の事業も展開。販売促進に関連した企画提案などの上流工程から最終的な印刷物に至るまで、顧客の要望に応じた幅広い事業を手掛けている。

「印刷設備を所有している我々だけに、最終的には印刷物を扱うことになりますが、今では企画提案から関わることで総合的なプロデュースも含めたビジネス展開を行っています。印刷物を含めた付加価値のあるコンテンツづくりにも積極的に取り組んでいる状況です」と説明するのは、営業部門を統括する依田氏だ。

常務取締役 兼 営業本部長 依田 裕氏

これまで印刷業界では、印刷プロセスごとに組織や協力企業が異なる形の分業体制で1つの印刷物を制作してきたが、デジタル化の大きな潮流のなかで、企業内で印刷プロセスを完結させる動きが加速。印刷工程を管理する基幹システムを導入し、社内の業務フローが運用されてきた経緯がある。しかし、業界特有の基幹システムや工程管理システムでは、現場ならではのノウハウ部分がうまく吸収できず、紙をベースにしたアナログな情報伝達で運用せざるを得ないケースが続いていたという。「市販の仕組みでは、例えば作業書内にメモ書きされたノウハウのデジタル化や紙で受け渡された関連資料の紐づけなど、現場独自の運用をシステム化する柔軟性がなかったのです」と藤井氏は説明する。そのため、大量に保管された紙の作業書内にノウハウが残されたままになり、リピートが発生した時には紙の情報を探し出しだす必要があるなど、運用管理の面でも課題が顕在化していたという。

アナログに慣れた現場からの抵抗も懸念

また、現場担当者は長年紙媒体で運用してきたこともあり、デジタル化しようとしてもPC入力に対して心理的なハードルもあったという。「手書きしてきた情報をPCに入力するというだけでも、慣れるまで多くの時間が必要で、現場からの抵抗も懸念されていたのです」と藤井氏。システム化するためには、現場の運用を大きく変えることなくデジタルの運用に移行できる手立てが必要だったのだ。

紙での情報伝達が続くなか、販促物提案など新たな事業領域の開拓を行っている杉村氏も新たな仕組みの必要性を感じていたという。「特に基幹システムの情報は印刷に関わるものが中心で、イベントやWebページ作成など直接印刷しない商売に関する情報が入ってきません。さまざまな角度から提案する我々の部署だけに、営業側にある“紙に落ちていない情報”をうまく活用できる環境が必要だと考えていたのです」

そんな課題を解消すべくデジタル化に向けた取り組みを検討していた折、ちょうど東京に営業事務所を新たに新設することになり、営業部門と工場部門の情報を橋渡しできる情報基盤の整備を前向きに進めることになったのだ。

【選定】紙の情報をスキャンでデジタル化、その格納先として選ばれたkintone

スキャン以外にもさまざまな情報の一元管理が可能な基盤づくりにkintoneを選択

現場に使ってもらえる仕組みを模索するなかで検討したのが、基幹システムから出てくる紙の作業書を、現場に設置されたコピー機を使ってスキャンしたうえでPDF化、その情報を共有するという仕組みだった。「アナログなものをアナログのままデジタル化するというアプローチであれば、社内のあらゆる部署が参加しやすいと考えたのです」。そこで提案されたのが、現状の帳票をそのままデータとして取り込むことができる富士ゼロックス株式会社の「スキャン to kintone」であり、サイボウズが提供する「kintone」だった。

「最初に提案されたときは、kintoneが我々の業務にどう役立つのか分からない部分が多かったのが正直な印象でした。当初はスキャンしたデータをPDF化してサーバー上に格納することも検討したものの、案件ごとに発生する各種情報を紐づけて一元管理したい、プリプレスやCTPが手作業で描いている仕様情報を入力して管理したいなど、我々の要望を一気に相談することに。そこで、柔軟性が高く必要な機能が実装しやすいkintoneが提案されたのです」と藤井氏。また、全社で一気にシステム化すると現場によっては難色を示すところも当然出てくることも予想されたため、まずはデジタルに慣れているプリプレスやCTPの部門からスタートすることに。「他の部門は強制ではなく、後からいつでも参加できるような形にしようと考えたのです」と藤井氏は当時を振り返る。

プリプレス課 課長 藤井 健太郎氏

現場として否定できないイメージしやすい運用

実は、「スキャン to kintone」による複合機でのスキャンとkintoneへのレコード格納までのフローが、説明したその場でイメージしやすかったことも大きかったという。「私を含めてアナログ的な発想を持っている人間が多く、QRコードを使うなど複雑なプロセスが介在するとついていくのが大変ですが、今回はすんなりと運用がイメージできました。現場はスキャンして作番を入力するだけで、自動的にkintoneという器にあっという間に情報が格納される。そんなシンプルで便利な仕組みを目の当たりにし、営業メンバーも否定しようがなかったのが正直なところです」と依田氏。

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kintoneがどういうものか最初から説明するよりも、実際の運用が想起できる形で組み合わせて現場に説明した藤井氏の作戦勝ちだったわけだ。

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他にも、社内システムがクラウド化に向かうための試金石として、kintoneに対して藤井氏は興味を持ったという。「自社のサーバーで管理しているなかで最も恐れているのは、何かの拍子にデータが飛んでしまうこと。そうならないためにもデータ保全は必要ですが、ここ数年でクラウドサービスが大きく広がり、多くの企業がクラウドサービスを積極的に活用している現状を見ても、自前で持ち続けるよりもクラウドのほうが信じられる、むしろクラウドを選択すべきだと考えたのです」

【効果】アナログな印刷工程のプロセスをデジタル化、見える化を実現

スキャンされた各種情報と入力された作業内容を紐づけて一元管理

現状は、「作業表」と呼ばれるアプリを中心に、プリプレス課およびCTP課のメンバーが主に利用しており、営業や進行管理を行う工務課、実際に印刷を行う印刷課などはいつでも参加できるよう、情報登録できる領域がkintone上に用意されている。「基幹システムで案件ごとに振り出される作番を基本として、営業の提案資料や打ち合わせメモ、印刷物の配送伝票といった、各工程で作番に関連した紙の情報をスキャンするだけ。全て作業表に紐づけて情報が集約できるようになっています。ただ、情報登録できる場所を用意しただけで、強制参加ではありません。今はそれでいいと思っています」と藤井氏は説明する。最初から運用を固めずとも、自由に改変できるkintoneだからこそ、柔軟な運用が可能になっていると評価も高い。なお、作業表以外には、従業員マスターや顧客リスト、製版料金、料金表の価格マスターといった、マスター系のアプリが作成されている。

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主に利用するプリプレス課では、得意先情報はもちろん、Adobe Photoshopで行った色の補正といった顧客とのやり取りで発生した情報をkintoneに入力し、全て記録として残せるようにしている。また、組版に必要な印刷物の絵面をスキャンして情報量を軽くしたデータをはじめ、手書きの設計図や展開図、基幹システムから出力される作業内容に関連した情報などを全てスキャンしている。

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CTP課では、従来手書きの作業書、具体的には印刷に必要な刷版となるCTPプレートの並べ方をはじめ、サイズや色数、版数といった各種情報をすべてkintoneに入力している。印刷機の番号や印刷日付などの情報も管理されており、印刷精度を示す尺度の1つである線数なども残しておくことで、案件のリピート時に前回と同じクオリティの印刷ができるようになっている。また、印刷時に色の濃淡を調整するトーンカーブなどノウハウの部分もデータ化できるようになっており、過去の情報を見ることで見積作成も迅速に行うことが可能だ。入稿日や修正履歴といった顧客とのやり取りも含めて情報を残すことができるようになっている。kintone導入前は紙で管理していた過去データの紛失が頻発し、再校を繰り返せざるを得ない状況が少なくなかったという。kintoneによって過去データを容易に参照できるようになったことで、再校を行う必要がなくなり、版ロスの削減につながっているのだ。

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紙の削減とノウハウのデジタル化に成功、損紙や損版など見えづらいコストも可視化

kintoneによる情報基盤を整備したことで、これまでCTP課が作成していた手書きの帳票が全てkintoneへの入力に代わり、記入漏れを減らしながら紙自体の削減が可能になり、1日あたり1時間程度の作業時間短縮にもつながっているという。「普段は2か月で1000件を超える案件があり、1つの案件ごとにそれぞれノウハウが紙に書き込まれていたのです。この情報が全てデジタル化でき、リピートが発生した際にはその情報を探す手間も大幅に削減できます。おそらく本格的に効果が表れるのは、リピートが発生する半年後あたりからだと考えています」と依田氏。

今では、kintone内に蓄積された情報をグラフ化し、顧客別の状況や月次の処理状況なども可視化できるようになっている。「従来は紙の帳票や基幹システムを見直す必要がありましたが、今ではkintoneの集計機能で容易に見える化できるようになりました」と藤井氏は高く評価する。可視化をさらに進めれば、印刷工程の途中で行った修正や作業ミスなどによって発生する損紙や損版の状況もその場で把握できるようになるなど、コストに影響する部分も数字で見えてくるようになる。「印刷の仕事は納期優先の仕事が多く、途中のプロセスでどの程度無駄なコストが発生しているのかが把握しにくい場面も。その部分が可視化できるようになれば、業務における無駄を改善するための活動にも着手できます」と大いに期待しているという。

期待を持っているという意味では、事業開発を行うために印刷業務以外のさまざまな顧客情報が必要となる部署にいる杉村氏も同様だ。「CRMに関わるような情報が紐づいてくれば、得意先のやりたいこと、向かっている方向性などが把握できるようになることも。kintoneによって営業側の情報が共有化されることで、さまざまな情報がまとめて確認できるようになるのは魅力的」と今後の展開について期待を寄せている。

事業開発室 室長 杉村 陽一郎氏

なお、今回帳票のスキャンからkintoneでの情報基盤整備に関して、提案からアプリ開発までを手掛けたのが富士ゼロックス千葉株式会社だ。「これまでオフィスがらみの商売が中心でしたが、サーバーも含めたさまざまな提案にご協力いただくことができました。提案ももちろんですが、ノウハウを持った多くの事業者とのパイプ役としての活動にも感謝しています」と藤井氏は評価する。

印刷工程を一気通貫で管理する基盤へ

今後は、工務課が担当する印刷工程の進行管理プロセスをkintone上で管理できるような予定表アプリを作成する計画となっており、その後は営業が持つ顧客管理の情報や印刷課の作業状況を入力していくことで、営業から印刷までの全てのプロセスをkintone上で管理、可視化できるよう拡張していく予定だ。「営業の情報からプリプレスでのデータ処理、CTPが行った刷版の処理、印刷物の仕上がり状況など、モニターを通じて進捗が可視化できるように持っていきたい」と藤井氏に語っていただいた。

(2019年6月取材)

※本事例は2020年時点の情報であり、文中の「富士ゼロックス千葉株式会社」は、現在「富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 千葉支社」へ社名変更しています。

【この事例の販売パートナー】
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 千葉支社

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