エン・ジャパン 様の導入事例

エン・ジャパン

【業務内容】
人材採用・入社後活躍サービスの提供
【利用用途】
案件管理、CRM、ワークフロー、ナレッジ管理など
  • 年間2万6000時間の削減に貢献、業務改革の教育ツールとしても期待
  • チャンスロス解消に向け、情シスに頼る以外の選択肢を増やせるkintone

人材採用や入社後の活躍支援を手掛けているエン・ジャパン株式会社では、急激な事業成長を遂げる過程で組織変革や業務フローの変更が必要となり、従来Excelを中心に行ってきた実績管理を含めた業務基盤として、新たにkintoneを採用した。現在は、制作依頼発注のためのワークフローやデータ管理、そして広告効果の情報管理など600を超えるアプリを運用するまでに広がっている。そんなkintone採用の経緯について、事業推進統括部 事業管理部 部長 高橋 淳也氏および同部に所属する熊倉 彩杏氏、野間 将太郎氏、山 恵以子氏にお話を伺った。

【課題】事業拡大でExcelの運用が限界、情シスのリソース不足で現場での内製化を目指す

急激な事業拡大に対応すべく、分業化を推進するなど組織変革を進める

日本最大級の総合求人サイト「エン転職」をはじめとした社会人向け転職サービスや新卒・派遣の求人情報サイト、人事向けサービスなど、人材採用や入社後活躍の支援につながる各種支援を行うエン・ジャパン株式会社。HR Techプロダクトとして、採用ページの無料作成や応募者対応・選考プロセス管理といった、採用に欠かせない機能が備わった採用支援ツール「engage(エンゲージ)」など、企業の採用支援における強力な各種サービスを提供している。

 そんな同社では近年大規模な組織変革を進めてきたが、そのきっかけとなったのが、2014年に同社が手掛ける中心点なサービスであるエン転職のリニューアルだった。このリニューアルが転機となり、わずか5年間で売上が4倍にまで事業が急拡大することになるが、その過程で急激な事業拡張に対応できる組織づくりが求められたという。

そこで高橋氏が制作部にて業務改善に取り組むことになり、これまで社員が行ってきた業務の分業化を強力に押し進め、新たに採用したアシスタントを数多く抱える組織を作り上げたという。

組織づくりにおいて課題となっていったのが、営業アシスタントや外部パートナーのリソースを管理するキャパシティ管理だった。「当初はExcelにてメンバーそれぞれの空き状況を把握し、案件の割り振りなどをなんとか行っていましたが、ツールとして限界を迎えていたのです」と高橋氏。

「情報管理とタスク管理を個別に行っていましたが、重くなったExcelがなかなか開かず、最悪の場合はファイルが壊れてしまうケースもありました」と山 恵以子氏は当時を振り返る。

情報システム部門にExcel運用での課題について相談したところ、そもそもExcelで管理する限界を超えているとアドバイスを受けることに。「今ある道具に、過剰な無理をさせていたと理解しました。その状況を打開すべく、新たな道具探し、環境づくりに向けて動き出したのです」と高橋氏は振り返る。

事業推進統括部 事業管理部 部長 高橋 淳也氏

当時は情報システム部門のリソースは空きがない状況だった。「情シス部門は基幹システムの刷新などで手一杯の状況だったこともあり、サポートする余力が限られた状況でした。そんな環境下で当時の情シス部門の部長に相談し、SaaS活用のアイデアをいただいたのです」と高橋氏。そこで、営業が受注してきた案件に対して取材担当を自動で割り振れるよう、自分たちで「SaaSの予約システム」を導入するなど模索を続けていったという。

しかし、事業部門側が独自で業務に適したツールを入れ続けることに不安を感じていた高橋氏。「ツールごとに管理者が必要ですし、管理者が退職した途端に誰もカバーできなくなるリスクもあります。将来的な負の遺産を増やしてしまっているのではという思いから、用途に特化したパッケージ製品ではなく、いろんな業務に対して汎用的に活用できる製品のようなものがないかと探し始めたのです」。

事業推進統括部 事業管理部 山 恵以子氏

【選定】kintone導入は教育代、学びの環境が自社の最適な選択肢に

新たな環境づくりに向けて、メディアの情報を含めてSaaS製品を調査していくなかで注目したのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「最初は正直どんなものかもよく理解できていませんでしたが、伴走支援していただけるパートナーのサービスを含めても予算的に十分トライアルできる費用感でした。上長には「教育代でもあります」と説明したうえで、kintoneに過度な期待をかけず、まずはスモールスタートしました」と高橋氏。

kintone選択に大きく影響したのが、「自分たちで学んでいける教材」として導入・活用事例が数多くあったことだったという。「業務に必要なSaaSを学んで欲しいと言えば、おそらくメンバーは自ら学んでくれます。ただ、どんなに意欲があっても「学ぶための教材」がなければ難しい。事例や学びのコンテンツが豊富にあるこることも、kintoneに魅力を感じたポイントの1つでした」。また多くの事例があることで、市場への普及度合いが高く、すでに多くの顧客を通じてツールとしてのトライ&エラーが実施されていると判断。「kintone自体はまだまだ伸び盛りですが、システム的には安定フェーズに入っており、安心感が得られたことも大きいです。ツールだけでなく、内製化に向けた学びが得られるコミュニティの存在も、kintoneを評価する大きなポイントとなりました」と高橋氏は力説する。

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また、kintoneが持つUIであれば、“ITに詳しくないメンバー”にも教えられるという感覚を持ったという。「ユーザーとしてkintoneを使うメンバーには、最悪の場合「業務に必要だから」と強制的に入力してもらう方法をとれます。一方、運用は別です。中長期を考えたときに、自分たちでメンテナンスしていけるかどうかという視点は非常に大切です。kintoneを実操作し、これなら自分たちでやれると判断しました」。

【効果】工数削減や安心感の醸成など、現場の業務改善に威力を発揮するkintone

同社では、現在1000名以上がkintoneを活用している状況だ。導入当初は、コピーライターの実績管理アプリからスタートし、現在では900弱のアプリが登録され、日常的にはおよそ600アプリが日常業務に生かされている。「手始めに制作した実績管理アプリでは、kintoneのベーシックな使い方ながら、月間200時間ほどの工数削減を実現しています。パートナーの力を借りたものの、内製化の自信につながりました」と高橋氏。なお、社内ではJavaScriptは原則禁止などkintoneの開発指針を定めており、kintoneの標準UIで厳しい場合は、Webフォームから登録できるフォームブリッジや、ExcelライクなUIが活用できるkrewSheetをはじめとした各種プラグイン・連携サービスを積極的に活用している。

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ツールそのものは適材適所で使い分けを実施しており、何でもkintoneで実装しているわけではない。「12名で試行錯誤している状況であればExcelが使いやすい。人数が増えて運用が固まってくればkitnoneなどに移行するといった形で使い分けしています。我々にとってExcelは敵ではありません」と高橋氏。実際の使い分けについては、業務の複雑さがポイントだという。「たとえば、取材専任担当のディレクターのキャパシティ管理。取材時間前後も含めてうまく確保するなど、こだわりのある複雑な使い方が求められる場面では、その機能に長けた専門ツールを推奨しています」と、ツール選定の相談窓口となっている熊倉氏は説明する。

数多くあるkintoneアプリに関しては、大きく「1.ワークフロー+実績管理系」「2.データ管理系」「3.ナレッジ系」という3つのカテゴリに分類できるという。

 1つ目のワークフローに関しては、いわゆる申請・承認を中心とした仕組みではなく、主に社内発注業務に使われているアプリ群だ。営業担当者がアシスタントにお願いする申込作成依頼や、制作部に対する原稿作成依頼など、制作物に関連した依頼業務とともに、その進捗管理も同時に行うような活用方法が中心となる。日々アプリを作成している野間氏が最近手掛けたなかで反響の大きかったものは、アシスタントのリソース可視化と自動割り振りを実現したアプリだ。「アプリには、アシスタントのキャパシティの空き状況が事前に登録されています。営業担当者がアシスタントを指定せずに業務依頼を実施すると、業務を受けられるアシスタントへ自動的に依頼が割り当てられる。効率的なキャパシティ管理と、依頼に関するステータス管理が可能になっています」と野間氏。

事業推進統括部 事業管理部 熊倉 彩杏氏

事業推進統括部 事業管理部 野間 将太郎氏

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2つめのデータ管理系では、kintone内にデータを蓄積し、必要に応じて更新していくような情報管理に用いられているアプリだ。具体的には、CRMからkintoneにデータを投入し、プラグインのkrewSheetなどを活用して一覧画面から情報管理・更新できるように工夫されている。「企業情報や担当者情報など定期的にメンテナンスが必要なデータをシンプルに管理する用途に広く活用しています。またPVなどサイトに掲載した案件の効果を把握するために、日々のデータをCSVにてkintoneに取り込み、想定効果に達していない案件に関してアラートを出し、改善策を素早く打てるようにしています」と高橋氏。このデータ管理系アプリを業務に生かしている山氏は「外部ライターの情報管理や契約・解約のタスク管理を行うアプリを運用しています。以前は個別に情報を管理していましたが、今はkintoneで一元管理できています。重いExcelに比べてすぐにアプリが展開できますし、複数の業務をアプリにて一元管理できるようになったことはありがたいです」と説明する。

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3つめのナレッジ系は、顧客に有効だった営業手法などをkintone内に蓄積し、ナレッジが集約された“図書館”として利用者が閲覧、活用できるアプリだ。これをkViewerを使って「サイト」として営業現場に展開。IP制限をかけており、内部でしか閲覧できないようにしている。「ナレッジを蓄積共有する際には、WordPressなどのCMSを使いたくなりがちですが、環境を用意するだけでも大変です。kintoneであればすぐにナレッジ系のアプリやサイトが作成できるため、王道な活用方法の1つ。まさに速さは価値だと実感しています」と高橋氏は評価する。

 年間2万6000時間の削減を達成、業務改革のための教育ツールとしても活躍

kintoneを導入したことで、さまざまな業務改善が進んでおり、その波及効果も大きい。例えばコロナ禍における申請書のワークフローでは、従来紙の申込書で押印していたものをWeb化し、入力にはフォームブリッジ、kintone内の情報を見るためにkViewerを組み合わせて開発した結果、月間800時間もの工数削減に貢献している。高橋氏が在籍する企画部だけでも、2020年で見れば年間2万6000時間の削減を実現するなど、驚くべき効果を生み出している。また、2014年から5年で4倍の売上を創出するなど事業が急成長しているなか、kintoneがそれを下支えしている状況だ。

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kintoneが持つ最大の価値は、リソースが不足している情シスを待つことなく、自分たちでやりたいことを前に進めていけることだと高橋氏は力説する。「以前は情シスなど開発部門のリソースが空くのを待つしか方法がなく、チャンスロスが発生していました。また、頑張っている情シスのみなさんに無理をさせるのも心苦しかったです。今は、情シスに頼る選択肢以外に、簡易的ながらkintoneで仕組みが整備できるという選択肢を現場に提供できるようになっています」。専門領域に違いがあるだけで、基幹システムを担当する情シスと現場での内製開発は決して喧嘩するものではない。適材適所が大切だと指摘する。

システムを作る作法を学べるという観点では、業務変革の教育ツールとしてkintoneが大きく役立っているという。「社内の企画職向けにkintone研修プログラムを作成しています。簡単なアプリ制作からフォームを経由してデータを入力、編集するという一連の流れが理解できます。kintoneでシステムを学んだメンバーは、情シスとの共同プロジェクトでも適切な対話ができ、無理のない依頼ができます。まさにDX人材輩出の学びのツールとしても効果的です」と高橋氏は評価する。kintoneの魅力については、簡単にアプリが作成できる点だと熊倉氏は語る。「IT経験のない私でも、ドラッグ&ドロップで必要な管理項目がすぐに用意でき、クリック1つでフィールド追加も容易です。他のSaaSと比べて楽にアプリが作れることが何よりの魅力です」と評価する。

さらに、kintoneによって改善が進んでいくことが、社員に対して安心感を提供できる点も見逃せない。「改善が進まないと、会社に対する諦めのようなものが生じやすいです。kintone導入以降、現場主導で改善・改革が加速しています。そのことが積み重なることで安心感の醸成につながっています」。

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周辺システムとの連携も含め、kintoneの価値をさらに磨いていく

これまで業務改革における強力な武器としてkintoneを使い倒しており、プラグインも含めて使い方にも磨きをかけてきた。今後については、周辺システムとの連携を意識していきたいという。「購入した道具は使い切りたい。kintoneはこれからもフル活用し、活用度を磨き続けます。さらに、kintoneの可能性を広げるためにも、また蓄積されたデータを活用するためにも、外部連携を強化してきたい。」と高橋氏。現在データ投入などはCSVによる手作業で行っている部分も多いが、iPaaSRPAといったソリューションも視野に、周辺システムとの柔軟な連携が可能な仕組みづくりを模索し続けていきたいという。(20229月取材)