愛媛バス
- 【業務内容】
- バスツアー手配、貸切バス、団体旅行の手配など
- 【利用用途】
- 受注管理
愛媛県西条市に拠点を置く愛媛バス株式会社は、自社独自のバスツアーの展開や、貸切バス・団体旅行の手配など、バス会社としてだけでなく旅行会社としての機能も併せ持つバス事業者だ。魅力的なバスツアーや団体旅行で利用者からの好評を博している一方で、紙ベースのアナログな受注管理、営業マンの個人プレーによる業務の属人化などにより、顧客や業者からのクレームも頻発していたという。
そんな状況を改善するため、2015年に社内改革に乗り出した森川 由貴氏。数々の壁を乗り越え、大きな成果を出すまでにはさまざまな学びがあったという。今回は森川氏に、kintone導入にまつわる苦悩やその先に得られた喜びなど、自身の経験を語っていただいた。
2015年当時、愛媛バスの受注管理はすべて手書きのノートで管理していた。しかし走り書きの文字がうまく読み取れず、情報としての精度が欠けていた。時にはノートへの記入すら無く、営業マンの頭の中にしか情報が無いといったケースもあったそうだ。すると、顧客とのアポイントメントを失念してしまったり、旅行案件に関する確認の問い合わせに対して、愛媛バス内でも確認が取れなかったりと問題が多発し、顧客や業者からのクレームが頻発していたという。
「当時、弊社の営業マンの中には自分の仕事は自分が一人でこなさなければいけない、という意識が根強くありました。そのせいで周りに頼ることができず、一生懸命に仕事をすればするほどクレームが増えるという悪循環に陥っていました。私はこの状況をいち早く改善しなければという危機感を抱き、2015年、社内改革に踏み出しました」(森川氏)
しかし1988年の創業以来、長年続いてきたやり方をそう簡単に変えることはできない。森川氏は2015年から2018年の約3年間をかけて社内の仕事の流れを観察し、問題点をひとつずつ洗い出していった。
愛媛バス 森川氏
まずは具体的に発生した現場の問題に対してメスを入れ、次に業務の根本的な解決をはかるためにバラバラだった紙やシステムでの業務管理を一本化することにした。この時すでに森川氏の中では成功のイメージがわき、軌道に乗れば必ず上手くいくという確信があった。しかし、実際にkintoneを現場に導入するまでには数多くの壁が立ちはだかったそうだ。
まずは社内の情報共有のやり方に問題があると考えた森川氏。伊予銀行主催のセミナーに参加し、初めてkintoneに出会った。「kintone 導入相談カフェ(※ 導入相談カフェは、2022年6月より「キントーン相談窓口」に名称が変更になりました)」でサイボウズ社員とも直接会話をし、このツールなら自社でも使えるかもしれないという期待を持ったという。
続いて社長の森川 和俊氏とともに社内の業務を俯瞰し、現状どんなシステムやツールが使われているのかをひとつひとつ洗い出していった。まとめられそうな業務をまとめてkintoneに乗せかえるためだ。導入までのスケジュールも完璧に立て、計画は順調に思えた。しかしいざ現場にkintoneを展開した時、森川氏はある現実を目の当たりにして愕然とした。
「現場の社員たちは、社長に言われたから仕方なく新しいシステムを使っているような状況だったのです。なぜkintoneが必要なのか、なぜこの作業が必要なのかということが伝わっていなかった。やる必要性を感じていなかったのです。これでは以前の状況と変わりません。いったん構築したkintoneの計画を白紙に戻し、社員を集めて問題解決会議を開きました」
問題解決会議では、まず自分以外の周りにいる社員がどんな仕事をしているのか、どんなことで困っているのかという内容を一人一人紙に書き出していった。その結果、みな「周りの仕事を分かっているようで、全く分かっていなかった」という事実が浮き彫りになった。今まで個人プレーで業務をこなしていた社員たちが改めて顔を合わせて議論を交わし、会社で起きている問題を自分ごと化していった。愛媛バスの中に仲間を思いやる風土ができはじめた瞬間だった。
「会議で出た問題を深掘りし、社員たちに『やっぱり情報共有は必要なことなんだ』という自覚を持ってもらうことに成功しました。そこでようやく、社内改革に社員たちを巻き込むことに成功したのです。kintoneプロジェクトに何名かの社員も加わってもらい、一緒に社内の業務改善に取り組んでくれました」
ここで最後の壁として立ちはだかったのは「ノー・ルール問題」だ。営業メンバーたちは今まで個人プレーで自由に業務を遂行していたため、社内にルールというものが存在しなかった。そのため、kintoneプロジェクトのメンバーは年上の社員たちにkintoneのルールを教育しなければいけない状況も発生したという。しかし「相手を想う情報共有」という目標に向かってチームが結束し、根気よく教育を続け、初めてチームでこの壁を乗り越えることができた。
さまざまな壁を乗り越えてkintone導入を果たした愛媛バス。一番の問題だった案件管理は、一つのアプリで案件の入口から出口までを網羅できるように設計した。アプリの設計の際、森川氏は次のような点に留意しつつ構築したという。
「アプリの上から下に向かって業務の流れに合わせて設計したり、時系列でグルーピングしたりするなど、kintoneを入力するメンバーにもなるべく分かりやすく、使いやすくなるように工夫をしました。ところがkintoneを使っていくうちに現場から『こんな機能も実装してほしい』という要望が上がってくるようになりました。しかしその要望を安易に組み込むのではなく、kintoneを使った業務の流れを徹底的に観察し、本当に必要な改修かどうかを見極めました。ゆくゆくは他アプリとの連携を見越していたので、無闇に機能を増やしてしまうと後々の連携に支障が出るケースもあります。私はこの方法で、他アプリとの連携もかなりスムーズに構築することができました」
こうしてkintoneアプリで案件を社員同士できめ細かく共有できるようになり、顧客からのクレームはほぼゼロにまで減らすことができたという。さらに各業務で利用していた他システムの一部をkintoneにまとめたことで、今期必要だった他システムの更新費用500万円が削減できたというから驚きだ。愛媛バスではkintoneのライトコースを契約中だが、森川氏は「ライトコースでもできることが本当にたくさんある。社内の業務改善に悩む人がいたら、まずはkintoneのライトコースを使ってみて欲しい」と熱く語ってくれた。
しかしこれらの定量的な効果だけでなく、社員たちの間にあたたかなチームワークが生まれたことが何よりの効果だったと語る森川氏。
「例えばある営業マンが案件を受注すると、kintone上で『おめでとう!』の声が溢れるんです。個人プレーで業務をこなしていた時代から考えると信じられない変化です。自然に社員間でコミュニケーションが生まれ、そして結束が生まれました。また近頃は職人気質のバス乗務員にもkintoneの存在が広がっています。乗務日報をkintone上で共有するようになり、乗務員たちも自分たちの日報の情報がしっかりと共有され、より良いサービスの提供に活かされていることでモチベーションが上がっているようです」
2015年に社内改革に乗り出した森川氏。この成功にいたるまで、約6年の歳月を費やしてきた。決して簡単ではなかったこのkintone導入と社内改革の道のりについて「相手を信じ、想う心があったから続けられた」と語る。森川氏のこの想いこそが社員たちの心を動かし、愛媛バスに「相手を想う情報共有」という文化を根付かせた一番の原動力なのかもしれない。
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