ダイドーグループホールディングス 様の導入事例

ダイドーグループホールディングス

【業務内容】
飲料・医薬品関連・食品事業
【利用用途】
ワークフロー、見積書管理、お客様からの声管理など、DX基盤として
  • ホームランを狙わず、小さな改善を重ねるバントが現場展開の秘訣に
  • DX推進に欠かせない業務プラットフォームとなるkintone

 飲料事業を中心に国内外で事業を展開するダイドーグループホールディングス株式会社では、中期経営計画2026における重要な経営課題の1つとして「DX推進とIT基盤の構築」を掲げており、そのための環境づくりにサイボウズのkintoneを活用している。その経緯について、代表取締役社長 髙松 富也氏、経営戦略部 ビジネスイノベーショングループ シニアマネージャー 竹重 美咲氏および同グループ マネージャー 堀井 昇平氏にお話を伺った。

【課題】自動販売機を中心とした飲料事業の業務改善が必要に

飲料事業の再成長に向けて、デジタル技術によるDXを強力に推進

 缶コーヒーを中心とした国内外での飲料事業を中心に、医薬品関連事業や食品事業を展開しているダイドーグループホールディングス株式会社。「お客さまの一番近い場所でお客さまの求めるものを販売する」ことを念頭に、飲料事業においては販売比率が8割を超える自動販売機を中心とした安定した収益基盤を武器に同社ならではのビジネスモデルを推進している。店舗の軒先に設置するアウトドアロケーションはもちろん、企業のオフィスや工場などのロケーションにも積極的に自動販売機を設置、現在は27万台を超える自動販売機を運用している状況だ。

 ライフスタイルの変化によって従来の自動販売機を中心とした飲料事業が厳しい経営環境にあるなか、飲料事業を再成長させていくために、デジタル化に向けた取り組みを加速させている。「自動販売機に通信機器を搭載し、新たな付加価値創出に向けたサービス提供の模索や、自動販売機に関するオペレーションの業務効率化など、IT技術を駆使したデジタル化による採算性の向上を図る取り組みも進めています」と語るのは、代表取締役社長 髙松 富也氏だ。

ダイドーグループホールディングス 代表取締役社長 髙松富也氏

 このチャレンジに向けて「中長期経営計画2026」で具体的なアプローチを策定しており、そのなかで重要な経営課題の一つに掲げているのが「DX推進とIT基盤の構築」だ。「理想的には、全社員が自分の抱える課題を解決する際にデジタルを使うことが当たり前の選択肢の1つとして考え、実行していけるDX人材を育てていきたい」と髙松氏は力説する。

【選定】ワークフローの刷新タイミングで、幅広い業務に活用できるkintoneに注目

 そんな環境づくりに向けて新たな組織体制を整備するなか、ちょうど社内で活用してきたワークフローシステムの刷新タイミングが訪れることに。「これまで使っていたワークフローツールでは、そもそも自身が申請したものがきちんと通っているかステータスが可視化できていないなどいくつか課題が顕在化していました。ワークフローツールを中心に新たなシステムへの移行を検討するなかで、高度なITスキルのない自分たちでも触って開発していけるノーコードツールに着目したのがきっかけです」と竹重氏は当時を振り返る。

ダイドーグループホールディングス株式会社 経営戦略部 ビジネスイノベーショングループ シニアマネージャー 竹重 美咲氏

 また、従来の課題を解決するだけではなく、他用途でも活用できるものが望まれたという。「ワークフローの課題解決と同時に、業務改善も可能なソリューションという視点で検討を進めていったのです」と堀井氏。社内ではOffice365が利用されていたものの、メールやスケジュール管理が活用の中心にあった。

ダイドーグループホールディングス株式会社 経営戦略部 ビジネスイノベーショングループ マネージャー 堀井 昇平氏

 そんな折に注目したのが、すでに一部の部署で導入され活用が進められていたkintoneだった。「kintoneであれば自分たちでアプリ開発が可能で、ワークフローを移行することができると考えたのです」と竹重氏。結果として、新たなワークフローの基盤とともに、DX推進に資するプラットフォームとして、kintoneの採用に踏み切ることになったのだ。

【効果】DX推進の強力なプラットフォームとしてグループ全体に広がるkintone

ホームランを狙わず、小さな改善を積み重ねるバントでいい

 DX推進に向けて、2022年1月に経営戦略部に「ビジネスイノベーショングループ」を設立。そして、ダイドードリンコ株式会社の本部系部署に、各部から選出した「DXエバンジェリスト」を配置し、業務プロセスの見直しとともに業務効率改善を進めている。現在は、kintoneもダイドードリンコを中心に展開しており、DXエバンジェリストを中心にkintoneアプリを開発、全国の営業拠点にいるメンバーが各種アプリを利用している。さらにシステムグループを通じて、kintoneのカスタマイズといった技術支援やノウハウの提供など、DX推進をサポートしている。利用者を統括する立場となるDX推進担当者は、今後全国の支店や営業部に拡大予定だ。

 kintoneの活用に向けては、DXエバンジェリストや現場の利用者向けに様々な取り組みを行っている。具体的には、kintone内にアプリの作り方に関する質問ができる「Q&Aアプリ」を用意し、ノウハウの蓄積を行ったり、DXエバンジェリストの「行動計画アプリ」を使って、課題やKPIを設定したうえでそれぞれの行動計画を管理しており、他部署の取り組み内容や状況が可視化できるような環境を整備している。

 さらには、DX推進に向けた情報発信にも積極的に取り組んでおり、全社員をDXに巻き込んでいけるよう、ポータルサイトでDXエバンジェリスト自ら作成したDX関連の情報を配信して社内の取り組みを積極的に紹介したり、社長の髙松氏自ら現場にてDX推進意識を醸成するべく、動画で発信したりといったことも行っている。

 現場の利用者へは「基本的な使い方については、これまでは仰々しく説明会を実施するやり方が中心でしたが、今回は使い方の動画を作成し、動画を見てもらいながら操作してもらうことで、kintoneに慣れてもらうように工夫しています」と竹重氏。

 アプリ開発については、プラグイン活用や一部カスタマイズも実施しているが、メンテナンス性を高めるためにもできるだけ基本機能を使うことを方針としている。「メンテナンスの観点はもちろん、ローンチまでにできるだけスピード感を持って行いたいため、こだわり過ぎないように意識しています。何かあればDXエバンジェリスト自ら簡単に修正してもらえるような形で進めています」と竹重氏。堀井氏も「エバンジェリストとは月1回のタイミングでミーティングを実施しますが、100点のホームランではなく、バントでもいいので小さな改善を積み重ねていこうと話をしています。アプリをしっかり作り込むのではなく、ある程度できたらみんなに使ってもらい、最適なものに改善していくアプローチを重視しています」と説明する。

DX推進体制の整備によって、400ほどのkintoneアプリの展開を実現

 kintoneを現場に根付かせていくためにさまざまな施策に取り組んだ結果、アプリ自体は400ほどがすでに開発・運用されており、kintone移行前のワークフローツールやExcelにて行っていた人事総務系の申請承認用途を中心に、kinotneアプリ化して運用している。

 具体的な例として挙げられるのが、1つが海外事業部における「見積作成アプリ」だ。従来はExcelにてタブを数多く開き、為替も考慮しながら2時間ほどかけて手作業で見積を作成していたが、現在はkintoneでマスタアプリを作成し、ルックアップの機能を使って情報を引っ張ってくるだけでわずか5分足らずで見積作成できるようになっている。「見積作成に多くの時間がかかっていましたが、今はボタン1つで言語変換はもちろん、社判や商品単価も自動的に付与された形で見積書をExcelに展開できるなど、ストレスなく短期間で見積が作れるようになっています。空いた時間は海外戦略を立案する時間に活用するなど、これまでできなかったことに時間が割けるようになったと好評です」と堀井氏。このアプリ作成はITのスキルを持たない海外事業部のDXエバンジェリストが作成したもので、システムグループの支援も得ながら3ヶ月ほどで作成に成功した好例だ。

 また、生産管理部門に関連した情報共有の場面でもkintoneが生かされている。消費者からの商品に関する問い合わせ情報や指摘内容に迅速に対応する品質管理のグループが生産管理部門内にあり、従来はExcelや実際の商品画像などをメールや電話で情報共有を行っていた。しかし、担当者以外に広く状況共有できず、1件対応するのに数時間を要していたという。これも、kintoneの「ご指摘品管理アプリ」によって多くのメンバーで情報共有できるようになり、従来に比べて半分の時間に短縮できるようになった。

「ご指摘品管理アプリ」のイメージ

 他にも、商品開発部門における情報共有基盤としてkintoneを活用するなど、さまざまな部署でkintoneが生かされている状況にある。

毎月170時間を超える業務効率化に貢献、現場のデジタルシフトに大きく貢献

 実際にDX推進における業務基盤としてkintoneを導入したことで、業務の効率化やスピードアップに大きく貢献している。「ワークフローはもちろん、Excelをファイルサーバにあげて情報共有や管理を行っていた業務をkintoneに置き換えることで、抜け漏れや誤入力のチェックなども不要になり時間を効率的に活用できるようになったのは間違いありません」と竹重氏は高く評価する。kintone含めたDXエバンジェリストのさまざまな取り組みを合算すると、2023年7月時点で毎月177時間あまりの時間削減につながっていると試算されている。

 また、kintoneがあるからこそ、高度なIT知識やプログラム開発スキルは有していないビジネスサイドの社員からも、現場の課題に対してデジタル技術を用いた解決策の提案が増えているなど、デジタルシフトに大きくkintoneが貢献していると髙松氏は評価する。kintoneの使い勝手については、髙松氏自ら日常的に活用しており、次々と新しいアプリが開発されている様子からも現場への広がりを実感しているという。「稟議決済の仕組みとしてkintoneに触れる機会はありますし、役員会や経営会議の資料共有がkintoneで行われています。すぐに効果が実感できることが現場にkintoneが広がっているポイントだと考えています」と髙松氏。

グループ全体への展開も視野に、付加価値創出のための仕組みにも活用したい

 現在は、ダイドードリンコを中心にDX推進の体制が整備されているが、その中心にあるのは本社部門だ。「今の取り組みを全国の営業部や支店にも積極的に広げていきたい」と竹重氏。そこで成功事例を数多く作ったうえでグループ全体に広げていく計画となっている。

 現在は社内の業務改善に資するkintone活用が中心だが、いずれは自動販売機関連の仕組みと連携させていきながら、付加価値創出のための仕組みについても踏み込んでいきたいという。「活用用途はどんどん広がっていることから順調に展開が進んでいます。次のチャレンジに向けて今後も積極的に活用していきたい」と今後について髙松氏に語っていただいた。(2023年7月取材)