ケミカルグラウト
- 【業務内容】
- 地盤改良(地盤の改良、耐震補強、土壌浄化など)
- 【利用用途】
- 日報・報告書,施工仕様,数量表,トラブル対応,現場検索,フィードバック
地盤改良や建設基礎、構造物の耐久性向上など、地下に関するさまざまな工事を手掛けているケミカルグラウト株式会社では、施工現場の業務改善に関するプロジェクトを推進する過程で、現場の資料作成を効率化するべくkintoneを導入、まさに“業務の改良”をも成功させた。現場からの反発をワークショップで解消し、効果的な口コミで現場へ展開するなど、特徴的な業務改善に取り組んだ背景やkintone採用の経緯について、常務取締役 技術本部長 見坊 東光氏、同本部 技術開発部長 和田 忠輔氏、同部 小野 一樹氏、そして環境地盤改良本部 地盤改良部 第二課 大塚 綾菜氏にお話を伺った。
1963年(昭和38年)1月の創業以来、地盤改良工事や基礎工事など地下に関連した事業を手掛けているケミカルグラウト株式会社。「技術立社」を社是として環境配慮型のさまざまな技術を開発しており、「地下の総合エンジニアリング」企業として、社会基盤整備や民間の建設プロジェクト、歴史的建造物の保存における地下部分の工事を展開するなど、世界中の社会資本の基盤を支えている存在だ。
「ジェットグラウトと呼ばれる高圧噴射撹拌工法においては世界的な特許を数多く有しており、これら高度な技術力を武器に土木や建築業界への展開を積極的に行っています」と見坊氏は説明する。
そんな同社では、全国に展開する施工現場に管理者を派遣し、安全や品質、コストなどを管理する施工管理業務を行っている。「施工管理者は、昼間は現場の管理者として作業品質の確認や安全管理などフィールドワーカーとしての業務を現場でこなします。そして作業を終えた夕方には、事務所に戻って現場写真や伝票の整理、作業内容の記録などを行っています」と和田氏は説明する。
なかでも事務作業では、膨大な写真の整理や日々発生した現場の状況などをExcelにまとめることが必要になるため、どうしても多くの時間がかかってしまう。少しでも効率化するため、Excelでマクロを組むといったことも現場ごとに行われており、結果として属人化したExcelが数多く生まれていたという。
しかも、3か月から長くても1年ほどで担当現場が変わることになるため、属人化したExcelを新たな担当者が触ることになり、それに慣れるだけでも大変な労力となり、結果として事務作業の負担が大きなものになっていた。「ちょうど働き方改革が叫ばれていた時期とも重なり、現場の事務作業を効率化する仕組みを検討することになったのです」と小野氏は当時を振り返る。
そこで第一弾として取り組んだのが、工事の状況を示す手書きの黒板をタブレット画面に電子的に表示し、写真を撮影することでリアルタイムにクラウドへ転送、自動的に写真が整理できる工事現場専用のアプリの導入だった。「この仕組みを導入することで、従来行っていた作業時間の8割を削減できたのです」と小野氏。
そして、その結果を受けて業務改善の第二弾として取り組んだのが、属人化したExcelによる資料作成の効率化だった。
新たな業務改善に着手した小野氏だが、そこで大きな壁が立ちふさがる。長時間労働の是正に向けて属人化したExcelの書式を統一することを検討したところ、現場からは否定的な声が挙がったのだ。「実際には“ひな形の統一は無理”、“書式が異なること自体は困っていない”といった意見が多く寄せられてしまい、実は現場ごとにバラバラな書式でもさほど困っていないという声が少なくなかったのです」と小野氏。現場からの思わぬ反発から改善の方向性を見失いかけた小野氏だが、そこで現場が本当に困っていることが何なのかを把握するべく、新たな手法を取り入れることに。それが、現場の方を集めて開催したワークショップだった。
そんなワークショップで明らかになったのが、情報の検索や共有といった、情報活用に関する要望だった。「地下に関連した工事は特に、どんな状況だったら成功するのか、はたまたどんな条件なら失敗しやすいのかといった貴重な情報が現場担当者の感覚によるところが少なくありません。それら貴重な情報は、実は各現場において(大学ノートに作成する)日誌内に記載されていることが多く、またExcel内に情報があっても、現場担当者のPC内に保管されてしまうとノウハウが共有されず、他の現場に生かすことが難しい。その部分が大きな課題だったことが分かったのです」と小野氏。
そこで、情報活用を前提とした新たな基盤を検討するなかで目に留まったのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「システム部門ではない我々だからこそ、サーバ管理が不要のクラウドサービスが適していると考えていました。初めて見たとき、自分たちでアプリ作成が可能なことに強い衝撃を受けたのです」と小野氏。
しかも、事前に要件を固めずとも、アジャイル的なアプローチでシステム構築できることに魅力を感じたという。特に、これまで現場で使いやすいようにExcelが運用されていたため、本社側で仕様を固めてしまうと反発を招く恐れもあった。「説明する場を開くにも、全国各地を動き回る現場担当者を簡単に集めるわけにもいきません。集めたところで“ここが使いにくい”という意見が一気に出てしまうことも想定されました」。だからこそ、現場の要求にすぐに応えてあげられるよう、自分たちで少しずつ改善できるkintoneが同社にとって最適だと考えたのだ。
また、kintoneのディベロッパーが提供する月額課金の伴走型システム開発が、現場の要望を聞きながら改善していく同社のアプローチにマッチしたことも大きなポイントの1つだ。「初期に大きな投資がかからないため上司を説得しやすく、現場に対しても“何かあってもすぐに改善できる”と説明したほうが受け入れられやすい」と和田氏は力説する。
小野氏も「kintoneであれば、現場で使いながら改善に向けてブラッシュアップできるようになります。数年間かけて100%に近づけていく、そんなステップが必要だと考えたのです」と説明する。まさに柔軟なプラットフォームであるkintoneだからこそだと評価する。
今回の導入については、展開の仕方や現場への広げ方に工夫が施されている。まずはkintoneに慣れてもらうべく、現場でのタブレット普及率が一番高く、全工事の4割を占めるジェットグラウトを手掛けている地盤改良部から運用をスタートさせた。
そして、普段距離の離れた現場にいる担当者にも使ってもらえるよう、大塚氏が問い合わせ窓口となり、何かあればいつでも相談できる体制を整えたことも現場への浸透に大きく役立っているという。実は、現場へうまく展開していくために、ITに長けた数人の人材をテストランの対象として運用してもらい、現場にkintoneのファンを増やしていくという仕掛けも。「実際に慣れた人が次の現場に赴任した段階で、同じ部署の人に口コミで使いやすさを全力で伝えてもらい、全体的に広めていきました」と説明する。
現場からの反発を解消するためのワークショップから口コミによる現場への浸透まで、現場への展開に向けて工夫したことで、今では業務改善の基盤としてkintoneが現場に根付いている。
現在は、社員のおよそ半数にあたる150名ほどが日報アプリを中心にkintoneを活用しており、ジェットグラウトの運用に必要な200にも及ぶ管理項目を事前にフォーマットとして用意。現場が立ち上がった時点で大塚氏が各現場の施工仕様を入力し、現場では人員や配車、燃料、材料、排泥、作業内容、練上量といったカテゴリごとに必要な情報の入力を日々行っている。また、入力された情報をうまく抽出することで、現場でのノウハウやトラブル情報の一覧などがまとまって閲覧できるだけでなく、プラグインを活用して提出書類の帳票も出力できる。改善要望がフィードバックできるアプリも個別に作成している状況だ。
地盤改良部以外では、安全環境部が行っている各施工現場の定期的なパトロール時に情報参照するための安管(安全管理)アプリがあり、このアプリは小野氏自らで作成したものだ。「これからパトロールに向かう現場の状況をグラフ化することで事前に現場の傾向を把握しておき、重点的にチェックする部分を検討する際に利用しています。自分でも簡単にアプリの作成、改修ができるのは本当にありがたい」と小野氏は評価する。
今回kintoneを導入したことで、隙間時間にタブレットで日々の記録を登録できるようになり、年間24日ほどの工数削減に寄与。結果として長時間労働の解消につながり、今では若手社員の離職率も導入後3年ほど0%をキープしている状況だ。同時に、業務の効率化によって本来注力すべき現場管理に時間を割くことができるようになり、これまで以上に安全や品質に対してきめ細かに管理できるようになっている。
情報共有という面でも、以前は現場から必要な情報を探して欲しいという要望が大塚氏のもとに多く寄せられていたが、自ら検索できるようになったことで問い合わせ自体が大きく減っている。現場で入力した数字の修正も本社側で気づけばすぐに修正できるため、ケアレスミスの撲滅にも大いに役立っているという。「入力が必要な項目がシステムで制御されているなど、使いやすいと評判です。稼働当初は質問が殺到すると考えていましたが、ほとんど問い合わせもなく運用できています」と大塚氏。
なお、今回月額課金型のシステム開発を手掛けるディベロッパーとして株式会社ミューチュアル・グロースが参画し、ワークショップの開催やアプリ開発支援を行っている。テストランのタイミングでは、「いいね」プラグインなどを導入したうえで現場からの反応を確認、必要に応じて改修を行い現場に適したアプリの開発を行っている状況だ。「現場の運用で分からないことがあれば、現場に同行いただいて実際に見てもらうなど、親身になって対応いただきました。我々のニーズを的確にくみ取っていただき、感謝しています。他の部署へ展開する際にも、ぜひご協力いただければと思います」と高く評価する。
今後は、現状の日報アプリに加えて、工程表アプリや現場で使う機械を管理する物品管理アプリなど、主にExcelを用いて現場で管理されている情報をkintoneに集約し、情報共有基盤として活用の幅を広げていきたい考えだ。また、工事課長などの上長は複数の現場を把握する必要があり、なかには指示を出す場面も当然出てくる。そこで、日報内の状況を見ながらコメント機能を使って指示を出すなど、コミュニケーションのツールとしても活用していきたいという。さらに、APIを活用して新たな現場が立ち上がった段階でBoxなどにストレージを自動的に用意するなど、外部との連携も行っていきたいと和田氏。「国土交通省が建設現場におけるICT活用を進める“i-Construction”を推し進めていくためにも、kintoneを幅広く活用していきたい」と力説する。
また将来的には、現場業務だけではなく、情報共有基盤であるkintoneをさらに活用し、営業情報や物品管理、経理精算といった、全社的な効率化にも取り組んでいきたいと最後に語っていただいた。(2019年6月取材)
本記事に使用しているイメージは、技術本部 技術開発部 小野 一樹 氏が2019年6月20日「kintone hive tokyo vol.9」にご登壇された時の講演資料から抜粋しています。詳しくはこちら。
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