事業概要Francfrancを展開する株式会社BALS
株式会社バルスはFrancfrancをはじめとする6ブランドで、インテリアや雑貨の小売販売事業を展開している。デザイン性の高いインテリアや雑貨は、若い女性を中心に支持を集めており、国内外で200店近くの店舗を出店している。
同社では、発注済みの商品がいつどのくらい納品されるかを管理するために、「kintone」を導入した。急速にビジネス環境が変化する中、既存の基幹システムでは対応できない業務フローを「kintone」がカバーしている。
「kintone」導入までの経緯や活用メリットについて、管理本部 情報システムチーム マネージャー 鈴木将人氏、同チームの忽那一賢氏にお聞きした。
導入のきっかけ店舗運営における納期の重要性
Francfrancの店舗では、新商品の納入時期を確実に把握することが、販売戦略の要となっている。
「Francfrancは、商品開発のスピードが早いブランドです。週に何点もの新しい商品が店頭に並び、そのたびに売り場替えを行います。ビジュアルを重視して雑貨類を盛り付けるので、展開プランを前もって考えておかなければなりません。そのため、各店舗に新商品がいつ入ってくるかという情報をスピーディーに提供することが非常に重要だと思っています。」(鈴木氏)
ところが、数年前から新商品の納期をタイムリーに伝えることが難しくなっていた。背景には、SPA型(製造小売型)へのビジネスモデルの転換がある。プライベートブランドの比率が急速に増え、商品企画や製造など、自社で管理する領域が広がったのだ。10年前から利用している基幹システムは、ナショナルブランドの販売を前提として設計されているため、新たな業務フローには対応していない。すぐに基幹システムを改修することもできず、ビジネス環境の変化によって必要となった発注済みの商品が納品されるまでの管理は、Excelで行うようになった。しかし、Excelを使った発注残管理は、複数のメンバー間の情報共有が難しく、スピード感のある対応ができていなかった。
情報システムチーム
マネージャー 鈴木将人氏
導入前の課題~導入効果わずか2週間で発注残管理システムを構築
暫定的にExcelで行っていた発注残管理は、まず購買部門の担当者が、発注した商品の情報をExcelに追加して、発注先の商社にメールで送付する。商社からは、納期回答が追記されたExcelが送られてくるというフローだった。しかし、8,000点もの商品情報を取り扱うExcelシートの受け渡しは、その煩雑さから週に一度が限度。商品開発や製造の遅延に気がつくまでに、最大で一週間掛かっていた。
また、業務の属人化も、納期の把握を難しくしていた。同社では、取り扱う商品を10のカテゴリーに分けており、カテゴリーごとに購買担当者がいる。取引先と連絡を取り合うメールには、他のカテゴリーの担当者もCCとして宛先に入っているが、担当外の案件の経緯は追いづらい。そのため、担当者が不在のときは、問い合わせがあっても正確な納期を伝えることが難しかった。
「kintone」を利用した業務フローに変更してからは、リアルタイムで納期や発注状況を把握できるようになった。現在、「kintone」を使っているのは同社の購買部門と、取引先の商社の担当者。同じデータを「kintone」で共有するようになり、発注内容と納期を毎日更新している。
「納期が明確になることによって、店舗へのアナウンスもより正確になります。店舗でも、情報を早く把握することができるようになったので、展開プランを練る時間ができていると感じています。」(忽那氏)
導入の決め手「kintone」を選んだ4つの理由
①低コスト
「もともと、発注残管理ができるパッケージを探していた」という忽那氏。しかし、パッケージの場合、納品後の在庫の管理など、運用中の基幹システムと重複する機能まで含まれており、何千万円にも上る初期投資が必要になることがわかった。
また、同社では、システムチームはたった4名で約2,000人の従業員が日々利用するシステムを支えている。少数精鋭のチームのため開発部門は持たず、システム開発は外注している。そういった事情から、柔軟に対応できる面でメリットがあるスクラッチ開発も、コスト高になってしまう。
これらと比較して、「kintone」は、初期費用がかからず、社内で業務アプリを構築できることが決め手の一つとなった。
②すぐに業務を改善できるスピード
これまで発注残管理に利用していたExcelを、短期間で移行できることも「kintone」の強み。クラウドサービスのため、サーバーマシンの設置などハードウェアを用意する必要がない。さらに、アプリの作成も短期間で行えた。
「パッケージのシステムを入れると、カットオーバーまで早くても3ヶ月、遅くて1年?1年半掛かってしまいます。また、スクラッチの場合は、パッケージ以上に 時間がかかります。『kintone』アプリは2日で作成でき、データの流し込みや各種連携を含めても、2週間くらいでリリースできました。」(忽那氏)
情報システムチーム
忽那一賢氏
③基幹システムと連携できる
「kintone」で作成した納品管理アプリの利便性をさらに高めるために行ったのが、基幹システムと「kintone」の連携だった。商品コードを入力すると、基幹システムにある商品マスターのデータを参照して、商品名や価格といった情報を自動的に「kintone」アプリに反映する仕組みや、「kintone」のデータを、集計用に前日との変更箇所に色をつけたExcelシート形式で出力する仕組みを構築。利用者の負担やミスを減らしている。
また、付加情報の共有によって、思わぬ効果も現れた。
「マスター連携をすることによって、注力商品やそれぞれの商品の販売時期など、発注書にはない情報まで取引先に伝えられるようになりました。販売計画に合わせた、きめ細かい対応をお願いできています。」(忽那氏)
システム連携の仕組みには、データ連携ソフトウェア「DataSpider」の「kintoneアダプタ」を利用して、コストや構築期間を低減している。
DataSpider とは?
DataSpiderは、アプレッソが開発・販売するデータ連携ソフトウェアです。システムの接続方法やフォーマットの違いを意識することなく、素早く簡単に「つなぐ」ことができるGUIによるノンプログラミングの開発環境を提供しています。DataSpiderの「kintoneアダプタ」はDataSpiderがもつアダプタと組み合わせることで、「kintone」と様々なデータベース、プラットフォームとの連携を可能にします。
http://group.cybozu.jp/news/13041801.html
④企業間で使える
発注残管理は、取引先の商社との情報共有が必要な業務。取引先の商社の担当者にも「kintone」のアカウントを渡し、納品情報の更新を行っている。
「企業間でリアルタイムに情報を更新できる環境がクラウド上にあることも、『kintone』でなければいけないところです。」(忽那氏)
今後の展望「kintone」で店舗の業務をサポートしたい
現在は本社の調達の部門だけで、「kintone」を利用しているバルス。今後は、百数十ある店舗と本社のコミュニケーションツールとして「kintone」を利用する展望があるという。
「小売をやっていると、Excelに頼っている業務がたくさんあります。それを『kintone』アプリに置き換えれば、私がシステムチームに来てから今まで、もう10年間ぐらい改善されていなかった業務を変えることができます。」(鈴木氏)
「ビジネス環境の変化に大きく左右される業務システムの構築は、時間をかけて大規模に開発するより、スピード感をもってリリースすることが重要です。そのことがユーザーの満足度にもつながります。お客さまがより良い買いものをしていただくために、店舗のスタッフが十分に働ける環境を最大限サポートすることがシステムチームに課せられた最大のミッション。それを、ユーザーの声に応えながら、トライ&エラーを繰り返して開発できる『kintone』で実現したい。」(忽那氏)
(2014年1月取材)