ATUMS 様の導入事例

ATUMS

【業務内容】
補助金の事務局運営
【利用用途】
プロジェクト管理
  • 「Excelやメールではここまで実現できなかった」
  • 自治体や複数企業がかかわるプロジェクト管理の機能をkintoneですべて実装

仙台市が2020年に推進した「仙台市地域企業デジタル化推進事業」における補助金の事務局運営を請け負った有限会社ATUMSでは、自治体や複数企業がかかわる本プロジェクトの進行・管理の基盤にkintoneを採用した。その経緯について、事務局運営を行った有限会社ATUMS 代表取締役社長 成田 新氏、運営担当 菅原 芳子氏およびシステム担当 水沢 光幸氏にお話を伺った。

【課題】仙台市が手掛けるデジタル化推進事業。補助金の事務局業務に挑戦することに

営業職の人材育成や組織開発を含めたコンサルティング事業をはじめ、人材派遣事業や宅配事業など多角的な事業を展開している有限会社ATUMS。スタッフや顧客、地域それぞれの幸せを永続的に追求し続ける「三方幸」を経営理念に据え、単なる営利追求にとらわれない理念の共有を重要視しながら、社会に対して新たな価値創造を続けている。

そんな同社がオフィスを構える宮城県仙台市は、公益財団法人仙台市産業振興事業団を中心に、デジタル化推進補助金に関する「仙台市地域企業デジタル化推進事業」を2020年に公募した。新型コロナウィルスを想定した「新しい生活様式」の実践や、労働人口減少などに対応するため、テレワークをはじめとしたITツール導入等に必要な経費の一部を補助することで、地域中小企業のデジタル化を推進させる狙いだ。補助金は5万円を下限、50万円を上限とし、本事業で指定するコンサルタントのコンサルティングを受けながら、業務のデジタル化やテレワーク導入に取り組む40の事業が対象となっていた。

この事業を推進するにあたり、申請対象となる事業の選定から、コンサルタントによるデジタル化推進サポート、そして報告書の納品までを行う事務局を設置することになっていた。「ちょうどこの頃、社内でもDXに関連した新たな事業の柱を創出していきたいと考えていました。そんな折、事務局運営に関する業務の入札があることを知り、ぜひ参加してみようと考えたのです」と成田氏は説明する。

代表取締役社長 成田 新氏

【選定】スピード感と手触り感が両立できるkintoneを選定

参加にあたって検討したのが、自治体担当者や補助金を申請する企業、そして事業を支援するコンサルタント含めた複数の関係者が情報共有できる仕組みづくりだった。「要件には含まれていませんが、自治体の担当者に対して各プロセスがきちんと把握できる環境が必要だと考えました。申請事業を支援するコンサルタントも含め、すべての関係者に対して状況がタイムリーに把握できる仕組みを検討したのです」と成田氏は語る。

そこで注目したのが、同社の業務基盤として長年利用してきたkintoneだった。事務局を円滑に運営していくためには、手触り感のある仕組みが必要でした。その意味でも、普段から使い慣れたkintoneが最適だと考えたのですと成田氏。実際に事務局が担う業務には、申請企業の募集から、事前相談の進捗、事業採択後の案件状況、報告書の作成までが含まれており、各プロセスの進捗管理や情報の一元化管理、関係者間でのコミュニケーション基盤として、kintoneがもつ機能をフル活用すれば十分実現できると考えたのだ。

公募から1か月ほどの短期間のうちに事務局業務の受注が決定したが、kintoneの存在は大きかったと分析する。「申請事業に対する相談先として豊富な実績を誇るコンサルタントが用意できたこともそうですが、kintoneを使った情報共有基盤の存在は大きなポイントだったはず」と成田氏は力説する。

システム担当 水沢 光幸氏

【効果】事務局の運営に必要な機能をすべてkintoneで実装

すぐに必要な情報が見つかる「情報の一元化」にこだわった

今回の仙台市地域企業デジタル化推進事業では、補助金申請に関連したセミナー募集から、申請に向けた事前相談、申請申込、採択された企業の進捗管理、そして終了後の事例作成までを事務局として請け負っており、半年間におよぶプロジェクトは無事に完了している。事務局を運営した同社のほか、自治体担当者やコンサルタントが所属する複数の企業など全関係者間における情報共有だけでなく、プロセス管理やコミュニケーションも含めてkintone内ですべて完結させることができた。

具体的な活用方法として、補助金申請をしたい企業の事前相談受付にはkintoneの拡張機能サービスである「フォームブリッジ」を組み合わせて使っている。申込者がフォームに入力すると、kintone内の「顧客管理アプリ」にも情報が自動登録される仕組みだ。この顧客管理アプリを中心にすべての情報を一元管理しており、案件ごとのステータスがシンプルに管理できるようになっている。

Webフォームの申請内容がリアルタイムでkintoneに反映される

顧客の基本情報から各フローの詳細情報まで1か所に集約した「顧客管理アプリ」
顧客にまつわる情報が全て把握できる

その後、採択された企業とのやりとりにはkintoneと連携可能なメール共有システム「メールワイズ」を利用し、「顧客管理アプリ」と紐付けてやりとりを管理している。企業に送信するメールも事前に文言のテンプレートを用意し、誰にでも正確な情報が伝えられるように工夫されている。「初めてkintoneを利用するコンサルタントも使いやすいよう、プロジェクトに必要な情報をすべて1つのアプリにまとめるようにしています」と水沢氏はアプリ作成のコツを披露する。

さらに、kintoneの「ポータル機能」や「グラフ機能」を活用し、関係者ごとに各ステータスの進捗状況が可視化できるようにしている点も工夫の1つだ。「その時点での問い合わせや申請状況などがパッとみてわかるようにしています。わざわざ個別のデータベースを展開せずとも必要な情報のみが把握できるようになっています。コンサルタント専用のスペースでは自身が担当する企業の情報だけが把握できるなど、必要な情報へのアクセスのしやすさにこだわりました」と水沢氏。申請状況はもちろん、申請に必要な書類一覧や書類提出の状況、コンサルタントの支援プロセス、補助金を活用してITツールを導入したことを示す実績書類の提出状況など、あらゆる情報が容易に可視化できるようになっている。

各関係者専用の情報共有場にワンクリックでアクセスできる「ポータル画面」

お問い合わせ数や進捗状況といった数字をリアルタイムでグラフ化

他にも、フォームブリッジを経由してセミナー参加者のアンケート結果を収集するアプリを用意するなど、事務局運営に必要な機能をすべてkintoneにて集約している。「申請企業ごとの進捗状況をタイムリーに把握し、申請書類の不備がないか確認することもそうですが、メールワイズにて申請企業やコンサルタントと連絡して履歴を残すなど、事務局として必要な機能をすべてkintoneにて実装しています。事務局の運営は初めての経験でしたが、kintoneのおかげで運用負担も大きく軽減できています」と菅原氏は評価する。

事務局運営担当 菅原 芳子氏

「もしkintoneがなかったら...」は想像したくない

本来であれば、自治体担当者からプロジェクトの進捗確認や報告業務といった連絡が頻繁に発生しがちだが、今回は自治体からの状況確認の連絡はほぼ発生していないという。「kintoneにアクセスしてもらえば、各プロジェクトの状況が自治体担当者からでも容易に把握できます。プロジェクトの状況がkintoneで見える化できたことが役立っています」と菅原氏。

また、kintoneで事業全体の進捗が把握できるようになったことで、関係者が集まる定例ミーティングではアジェンダだけ用意しておけば、会議内でkintone画面を見ながら会議が進められるなど、報告業務の負担も大きく軽減できている。「半年間という短い期間で補助金の申請、デジタル化の実施、そして実績報告までを行う必要がありましたが、会議の円滑な運営も含めkintoneがあったからこそタイトなスケジュールでもうまく事務局を運営することができました。想像したくないですが、もしExcelやメールでやっていたらおそらくここまで実現できなかったでしょう」と成田氏は語る。

kintoneのシステム開発を手掛けた水沢氏は、項目追加なども簡単で、さらに豊富に用意された拡張機能サービスをうまく活用することでシステムに詳しくなくとも最適な機能が実装できる点を高く評価する。また、他のkintoneユーザーが発信している動画などを参考に、自身で調べながら機能追加を行うなど、学びやすいコミュニティ環境があったことも大きな評価のポイントに挙げている。もともとエンジニアではありませんが、触りながら簡単にカスタマイズすることができています。知れば知るほど奥が深く、ある意味“沼”にはまっていく感覚があるほどと水沢氏。

水沢氏が活用したkintoneのコミュニティサイトの一例
ブログや動画など、豊富なコンテンツが揃っている

kintoneと挑戦したプロジェクトをベースに、新たな事業の柱も

同社として初めて委託された事務局運営に関する事業はすでに終了しているが、引き続き社内ではkintoneを積極的に活用しており、今後も新たなプロジェクトにおいて業務基盤が必要になれば、kintoneにて迅速に環境づくりを進めていきたいという。「標準機能はもちろん、さまざまな拡張機能サービスを試しながらkintoneが使いこなせるようになってきています。日々の業務改善なども含め、いろんな場面で活用していきたい」と水沢氏は語る。菅原氏も「社内の業務改善も含め、チームで相談しながらkintoneをさらに使いこなしていきたい。kintoneであれば、ある意味いかようにも作り変えることができる柔軟性が改めて認識できたので、やりたいことを実現していきたいです」と語る。

また、今回のプロジェクトをきっかけに、新たな事業の柱に育てていきたいと成田氏は意気込みを語る。「今回の実績をもとに、kintoneに関するコンサルティングも含め、新たな事業の柱にしていきたいと考えています。今後も同様の入札案件があれば、改めて挑戦してきたいですね」とさらなるkintoneの可能性に期待を寄せている。

(2021年4月 取材)