アソビュー 様の導入事例

アソビュー

【業務内容】
日本全国の「あそび」を紹介するサイト「asoview!(アソビュー)」の運営など
【利用用途】
顧客管理、案件管理
  • kintoneを使ってサポートチームの生産性を1ヶ月半で2.9倍に向上
  • 壊れかけた社内のkintoneを復活させるために必要だった
  • 「たった1つの大切なこと」

2011年に東京都で創業したアソビュー株式会社。北海道から沖繩まで日本全国の「あそび」を紹介しているサイト「asoview!(アソビュー)」では、サイトからオンライン予約やチケット購入ができるほか、“体験”を贈ることができる「asoview!GIFT」は、いま特に注目が集まるサービスだ。
そんなアソビュー社内で「プロ雑用」と呼ばれ、社内の業務フロー整備を行っている小林信也氏。同社に導入されていたkintoneは、ある時期から管理者不在の無法地帯状態となっていたが、業務のボトルネックを根本から解消することによってkintoneを有用なシステムへと復活させることに成功した。今回はkintone復活劇の裏側や社内浸透のコツについて、小林氏に詳しいお話をうかがった。

「kintoneは使いづらいから使いたくない」マイナスからはじまったkintone改革

アソビューにkintoneが導入されたのは2016年5月。導入当初は前任担当者が指揮をとってサポート部門の顧客管理や案件管理のアプリを作り始めたという。しかし運用が始まってしばらくした頃に前任担当者が退職し、kintoneは徐々に混乱状態へと陥っていった。

「kintoneは誰でも簡単に作れるからこそ、コントロールする人の存在がとても重要です。指揮をとる人がいなくなると、今まで使っていたアプリから必要な項目が勝手に消されていたり、逆に不要な項目が追加されてごちゃごちゃになっていったり…といった事態が勃発し始めました。次第にkintoneは使いにくいシステムになり、現場からはとうとう『kintoneはもう使いたくない』という声が噴出しました。その頃にはkintoneに登録すべき情報を他のツールで管理しはじめるメンバーも居たほどです。経営陣からも『kintoneに登録されている情報を見ても状況を把握できない』とまで言われていましたね」(小林氏)

次第にkintoneは社内であまり活用されなくなっていく。そんな状況を打開すべく白羽の矢が立ったのが、小林氏だった。その頃まだkintoneとは関わりのない業務にあたっていた小林氏は、当時を振り返ってこう語る。

「kintoneは蓋を開けてみると想像以上にカオスでしたね(笑)。生半可にアプリを修正するのではなく、業務フローから考え直すなど徹底的な改革が必要だと感じました」(小林氏)

サポートチームの生産性がわずか1ヶ月半で2.9倍向上
徹底的に「目的にこだわる」ことで、kintoneのアプリが業務に無くてはならない存在に

小林氏が当時の上長から「kintoneの改善」を任命されたのは2017年の後半。手始めにまず何をしたかというと「kintoneを知るための勉強」だったという。

「まずはkintoneが何者なのかを徹底的に調べました。特に他社事例は何本も読み込みましたね。サイボウズが主催するCybozu Daysも2日間通しで足を運び、セミナーやワークショップに参加してkintoneについて学びました。やり方さえ間違えなければちゃんと使えるシステムだと分かったので、そこから2018年の前半にかけて社内kintone改革に取り組みました」(小林氏)

そこからは小林氏が手腕を発揮し、トントン拍子に改善への道筋が立てられていく。その際、常に念頭に置いていたのは「目的にこだわる」ということだった。

アソビュー株式会社 小林 信也 氏

「目的にこだわるというと『当たり前だろ!』と思われるかもしれません。でも、kintoneを導入したけどイマイチ浸透しない、使われない…という事態が起きているとしたら、間違いなく目的がブレている、もしくはズレている証拠です。私たちの会社には“ワクワクをすべての人に”というミッションがあります。では、そのミッションを達成するために、現場の社員は何をしなければいけないのか?それをするためには、何が必要なのか?なぜkintoneを使う必要があるのか?それらを順序立てて考えて、目的を明確にすることにこだわりました」(小林氏)

その信念はアプリの設計にもよく表れている。たとえばサポートチームが使うCustomerService(顧客対応)アプリを例に見てみよう。メンバーが顧客から受電した際の行動を元に、必要な項目を上から順番に配置している。受電中に入力が必要なものはアプリの上の方に、受電後に編集するものは下の方に置くなど、配置ひとつを見ても業務の流れにしっかりと沿う形で設計されているのが分かる。また、入力項目もなるべく「数字を入れるだけ」「選択式にして選ぶだけ」など、入力の際のストレスも最小限に留められている。

業務の流れにあわせてアプリが設計されている

「このアプリの設計の際には、何度も現場のマネージャーやリーダーを集めてレビューをしました。また専用の資料を作って“目的を達成するためのビジョン”を説明し、なんのためにそのアプリを使うのかということをしつこいくらい説明しました。kintoneに入力するのは現場のメンバーですが、そこから上がってきた数字や結果を見るのはマネージャーやリーダーの仕事です。アプリを使ってどんな結果を得たいのか、というのも目的にこだわる上では重要なポイントでした」(小林氏)

小林氏によるkintone改革が始まってから1.5ヶ月後には、目に見えて成果が出てきた。サポートチームは今までは1件あたり30分ほどの対応工数がかかっていたところ、CustomerService(顧客対応)アプリを導入してからは1件あたり10分以内で対応が完了するようになったという。さらに以前まで発生していた案件の引き継ぎ漏れは0件まで減少し、結果サポート部門の生産性が2.9倍まで向上した。

この成果を出すまでに、小林氏は現場のメンバーに対してほとんどアプリの使い方を説明していないというから驚きだ。それほど業務の流れとkintoneの設計がマッチしているということだろう。

全社的にデータ入力を徹底することで見えてきた“成果”
マネジメント層の意識改革にも貢献

業務の流れにマッチしたシステムに生まれ変わり、サポートチームの生産性向上に一役買ったkintone。その影響は数値でみえる範囲にとどまらず、副次的効果をもたらしたという。

「現場メンバーには、とにかくkintoneに入力することを徹底させました。その代わりに、少しでも使いにくいと感じる部分はすぐに改良し、常に使いやすい、入力しやすいシステムの提供を心がけました。」(小林氏)

kintoneに蓄積されたデータから出た数値を現場のメンバーに共有することで「データを登録することの意義」が全社的にも浸透していった。現在はkintoneやその他のシステムに入力を徹底する文化が定着し、今まで以上にデータを活用する風土ができたという。

現場のメンバーが使いやすいシステムであれば活用されるのは当然だ。そして溜まったデータが有用なものであれば、マネジメント層が注目するのも当然のことである。それは全て「目的、つまり理想の実現のために何をすればいいのか」という点にこだわった小林氏が思い描いたストーリーそのものであろう。

この取り組みをきっかけに、当時は一部の社員のみに付与していたkintoneのアカウントを全メンバーに拡大し、全社的なシステムへと生まれ変わった。現在はワークフローや日報アプリなどの整備を行い、とくにこれまで個人間のやり取りだった定型業務をkintoneでアプリ化することに取り組んでいるという。また、今後は他のツールとの連携も視野に、アプリの内容のブラッシュアップも検討しているそうだ。

「kintoneは、例えるならDIYツールのようなもの。何を作りたいのか、何を実現したいのかという目的をはっきりさせないと、いくら目の前に素材とツールがあっても組み立てるのは難しいです。目的にこだわることで、今まで「使えない」存在だったkintoneを、便利に使えるシステムに変えることができました」(小林氏)

目的にこだわるというのは当たり前のようで、我々がつい見落としがちなことなのかもしれない。今回、小林氏のお話で改めて多くのことに気づかせて頂いた。今後アソビューでkintoneがどのような成長を遂げるのか、非常に楽しみである。

kintone AWARD 2019での講演内容はこちら