アートワークス 様の導入事例

アートワークス

【業務内容】
オーダー家具製作、造作家具製作
【利用用途】
案件管理  進捗管理 見積もり管理 タイムカード
  • kintone担当は新入社員。
  • 理想と現実に向き合う対話を通じて「SUPERアナログ会社」を変えていく

兵庫県神戸市の有限会社アートワークスは、オーダーメイド家具を製造・販売している。
職場は、紙の書類やホワイトボードでの伝達が中心の社員いわく「SUPERアナログ会社」だった。
そんな状況から業務を効率化しようと、kintoneを使って2年で改革。この改革の中心にいたのは、2022年4月に入社したばかりの営業設計部・宗政伊織氏だった。
宗政氏は、一体どのように業務改革を進めたのか。その歩みを追っていく。

案件情報は紙ファイル、進捗管理はホワイトボード。最低限の情報しかわからない状態だった

アートワークスは、オーダーメイドの家具工房。顧客の要望をもとに、見積りや図面を作成し、製造、納品までを一気通貫で行う。社員構成は、見積りや図面を担当する営業設計部の2名と、それを形にする職人が5名、そして社長の計8名だ。職人の年齢層も30代中盤から50代前半と業界では比較的若い方だが、宗政氏の言葉を借りれば「SUPERアナログ会社」で、さまざまな課題を抱えていた。

案件情報や図面はすべて紙に記入し、案件ごとのクリアファイルに入れて管理していました。中身を見ないとどの案件のものかわからないため、探すのが大変でした。お客様にはリピーターが多いのですが『前にお願いした時の感じで…』などと言われても、パッとその情報が出せないのは不便でしたね。また新しい案件で『なんぼくらいでできる?』と聞かれたときに、過去の類似案件の情報が参考になるはずなのですが、すぐに探せないので即答できないという状況でした」

さらに職人は自分が担当する案件以外のファイルを見ないため、他の職人がいまどんな家具を作っているのか把握していなかった。

「通常は製作した職人が納品に立ち合うのですが、繁忙期には他の職人が納品を担当することもあります。でも、お互いの案件状況を共有できていなかったので、誰に立ち合いをお願いしていいかわからず、ストレスになっていたと思いますね

もうひとつ、課題となっていたのが、案件の進捗管理をホワイトボードで行っていたこと。案件ごとに付箋は1枚。受注日、依頼主のお名前、そして「棚」「テーブル」といった製作物の種類を書く。ホワイトボードには「製作中」「納品待ち」「納品済」という3つの欄を設け、進捗に合わせて付箋を移動させていたという。

ホワイトボードに付箋をつけて進捗管理

「同じ棚でも、素材・形・サイズがそれぞれ異なり、製作難易度や工数が変わってきます。でも付箋には『棚』としか書いていないので、それが伝わりません。進捗状況ももっと細かな工程があるのに共有できていない状況でした」

見積りや図面が確定して案件を割り振る際も、「こんな案件がいつ頃発生しそうだ」という情報共有ができていないため、職人にとってはいきなりポンと案件が降ってくる状況だったという。

課題解決のためにkintoneを導入。伴走パートナーの研修を通じて自社の課題にあったアプリを構築できた

代表取締役の大段奈保子氏は、この現状に課題を感じてkintone導入を検討する。とはいえ、同社でシステム導入は初めて。いきなり社員だけでアプリを構築するのは、簡単ではない。そこで利用したのが伴走サービスだった。kintoneを熟知した業務改善のプロである伴走パートナーが、会社ごとの課題に合わせて適切なアドバイスをし、kintoneの構築と運用を継続的にサポートしてくれるサービスだ。

株式会社Be Magical Solutionsの稲澤さんに伴走パートナーになっていただき、月1回の研修を受けながらkintone導入を進めました。最初の6回は基本研修。kintoneの基本機能を学ぶとともに、業務課題を洗い出し、『こうしたい』という要望を話し合いながら、案件管理アプリの外型を作りました。後半の応用研修では、 『gusuku Customine』(※アールスリーインスティテュートが提供するkintone連携サービス)などを使ってさらにアプリを作り込んでいきました。悩んだ時は、稲澤さんにヒントをもらえます。そんな伴走パートナーの存在は大きかったです。研修の時に持ってきてくださるお菓子も楽しみでした(笑)」

研修がスタートしたのは202110月。宗政氏は翌年4月からの入社で、最初は内定者としての参加だった。入社した頃には、案件管理アプリの大枠が出来上がり、紙やホワイトボードの管理から脱却。各案件の情報をアプリに集約し、進捗も一覧でわかるようになった。しかし職人メンバーはまったく見向きもしてくれなかったという。

案件管理アプリ

「まずは、職人にkintoneを使わない理由を、聞きに行きました。職人はスマホからkintoneを見るのですが、スマホからだと使いにくかったそうです。タブレットを持って行って、アプリ画面を見ながらヒアリングして、項目に色をつけたり、タブを切り替えで見やすくするなど、その場で直してというのを繰り返していましたね」

2つ目の対策は、kintoneは便利なものだとすり込むこと。具体的には週1回のミーティングで、案件管理アプリの一覧画面を社員全員で確認するようにした。kintone導入前にはわからなかった、商談中の案件の状況や、職人ごとの担当状況がひと目でわかる。スマートフォンから見られることも強調した。周りの状況がわからないとモヤモヤしがちだが、kintoneなら全体の状況が把握できて便利だと、このミーティングを通じて職人が実感していったのだ。

「3つ目は、kintoneと職人の距離を近づけるため、全員が絶対に使わなければならないアプリを作りました。それが『タイムカードアプリ』です。毎日kintoneを使う習慣をつけてもらいました。打刻漏れがなくなり、集計も楽になりました」

さらに、休暇・代休申請アプリも作った。周りに気がねなく気軽に申請でき、また1時間単位で申請できるようにしたため、かなり好評だった。有給休暇取得率は24%から68%にまで伸びたという。

kintoneが埋めるのは理想と現実の間。業務効率化が進み、今後は集客に向けたデータ活用にもチャレンジ

これらの取り組みの結果、アートワークスの情報共有はスムーズになった。宗政氏が案件を職人に伝えにいくと「kintone見たから知っているよ」と言われることもでてきて、うれしかったという。勢いに乗った宗政氏は、さらに業務改革を進める。次に作ったのが「概算見積アプリ」だ。製作する家具の材料やサイズを入れると、瞬時に大まかな見積りを計算できる。

「私たちの製品はすべてフルオーダーなので、案件ごとに見積りを計算しなければなりません。これまでは社長がすべての見積りを出していたのですが、大まかな金額なら誰でも出せるようになりました。見積り依頼が来ると返信に1~2日かかっていたところが、1時間ほどで返せるようになりました」

そのほか、材料発注アプリも構築。転記漏れや二重発注がなくなった。導入から2年で着々と業務改革が進むアートワークス。その中心にいる宗政氏は、これまでの歩みを振り返ってこんな言葉を口にする。

新卒で、まだ図面も満足に書けない私が、kintoneを通じていろいろな人から『ありがとう』と言ってもらえたことがうれしかったです。kintoneに詳しい人という社内での強みができたのも自信になりました

今後は、案件の進捗や納期をガントチャートで見せるアプリを開発したいとのこと。これは職人から上がってきた要望だという。

「もう1つ、私はSNS運用も担当しているのですが、お客様が当社を知った認知経路のデータが溜まってきています。これをkintoneの案件管理データと組み合わせて分析し、今後の集客につなげていきたいですね。見積りも早く返せるようになり、以前より案件が増えても対応できるようになったので」

研修の際、稲澤氏からはこんなことを言われた。「理想と現実の間が課題。その間をkintoneで埋めるんだよ」。当初、その課題は社内の業務改革だったが、いまや宗政氏の目線はマーケティング・集客へと広がっている。新入社員が伴走パートナーの協力を得ながら進めてきたアートワークスの業務改革。今後のさらなる展開から目が離せない。