事業概要素材・製法にこだわった高品質ウィッグ「ジュリア・オージェ」を中国で販売
日本では、オーダーメイドのかつらや、育毛サービスなどで約50年の歴史があるアートネイチャー。2011年から進出した中国では、女性向けのウィッグ「ジュリア・オージェ」の販売を中心に事業を展開し、2014年4月現在、中国全土で10の百貨店に店舗を構える。
会員数が増える中、日本発のきめ細かいサービスを、中国でも取り入れるために導入したのがCRM(顧客関係管理システム)としての「kintone」(キントーン)だった。
「kintone」の導入効果や今後の展望について、董事 総経理の廣松幸一氏、管理部 部長の白井弦氏にお話をうかがった。
導入前の課題本部でコントロールのできない顧客管理に危機感
中国に進出した当初、同社では日本円で1万円以下のおしゃれ用ウィッグを中心に販売していた。しかし、翌2012年頃からは戦略を変更し、薄毛に悩む顧客を対象としたウィッグの取り扱いを開始。2013年には主力商品を「ジュリア・オージェ」に移行した。日本でも販売されている「ジュリア・オージェ」は、機能性にもファッション性にも優れた既成品のウィッグで、中国進出当時に販売していたものと比べると高価格帯の商品。その分、アフターサービスも高い品質を求められるようになった。
「当社は、ご購入から1年間12回のメンテナンスを無料でできるという形でお客様に商品をご提供しています。以前はそういったサービスは提供していなかったため、踏み込んだお客様の管理が、それほど必要ありませんでした。」(白井氏)
それまでと提供サービスが大きく変わり、名前や住所、電話番号、来店記録などの顧客情報を管理することの重要性が増した。差し迫って顧客情報の管理が必要になったため、始めは店舗ごとに、紙やExcelで顧客情報の管理をしていた。しかしながら、会員数や店舗の増加によって、こうした顧客管理の手法を続けることは、次第に難しくなっていった。
「管理の仕方が統一できておらず、あるお店は紙で、またあるお店はExcelで管理しているという状況に、危機感を覚えました。」(白井氏)
さらに、店舗ごとの顧客管理のままでは、顧客への情報提供や、来店のない顧客へのアプローチなど、新たな取り組みを行うことが難しかった。こうした顧客情報を基盤にした戦略的な施策を行うためにも、顧客管理のシステム化は不可欠だった。
「お客様の管理、在庫の管理、それから売上げの管理。当社は販売会社ですので、この三つの管理が重要です。ヘビーユーザーをどれだけ作っていくかということが、安定した売上げにつながるため、今後は特に、お客様の管理に力を入れたいと思っています。そこで、顧客管理をシステム化したいと考えました。」(廣松氏)
董事 総経理
廣松幸一氏
導入効果顧客管理システムがサービス向上の鍵
現在、「kintone」はCRM(顧客関係管理システム)として、中国の全店舗で利用されている。顧客の来店があると、店舗のスタッフは、カウンセリングの様子や購入履歴、アフターサービスの記録を「kintone」に登録している。 全店舗で統一して、必要な情報を管理することによって、日本品質のきめ細かなサービスを中国でも提供できるようになった。
「中国の事業は、日本からも非常に期待されています。日本でやっているお客様の管理を、中国でもしっかりやっていきたい。お客様との信頼関係を深めることによって、店舗に定期的にご来店いただき、商品をご購入いただくことを目指さなければいけないと思っています。その中でCRM(顧客関係管理システム)としての『kintone』が、必要不可欠です。」(白井氏)
また、毎日の売上げや来店者数、試着数などの本部への報告も、メールから「kintone」で作った日報アプリに切り替えた。本部では、レポート機能を使うことによって、店舗毎の売上状況を表やグラフで視覚的に把握できるようになった。また、報告を見た経営層から店舗への指示も、「kintone」のコメント欄で行っている。店舗では、前日の報告に対しての経営層からの指示を確認して、その日のアクションを起こす。
「今までは全てメールにExcelを添付していました。誤送信による情報漏洩のリスクがあったのですが、『kintone』を利用して、情報を守り、そして共有方法をしっかりと固めることができました。」(白井氏)
「kintone」の日報アプリによって、経営層と現場のコミュニケーションが密に
導入の決め手「kintone」なら商慣習や言語の違いを乗り越えられる
①できるだけ早く顧客管理を実現したい
「kintone」の導入を担当した白井氏は、「オーダーメイドでシステムを作るという選択肢は最初からなかった」と語る。 その理由はコストと時間の2点。できるだけ早く導入できて、できるだけ早く効果を上げられるサービスを探す中で、カットオーバーまでの期間が短い「kintone」が選定された。
②中国人スタッフにも使いやすいサービス
日本と中国では、商慣習や言語が異なる。そのため、日本のシステムをそのまま導入するのではなく、現地の状況に合わせて簡単にアプリケーションが作れる「kintone」が選ばれた。また、中国のアートネイチャーの店舗で、実際に接客を行うのは中国人のスタッフ。直感的に操作できるインターフェイスに加えて、日英中の言語切り替えの機能が搭載されているため、中国人のユーザーが抵抗なく操作できたことも評価された。
「中国国内で最適なサービスを探していました。実際にCRM(顧客関係管理システム)を使うのは中国人のスタッフです。簡単で、取り扱いやすくて、壁が全くないものが良かった。」(白井氏)
管理部 部長
白井弦氏
③「kintone」は日本の情報システム部門に相談して導入
顧客情報を扱うため、セキュリティ面については日本の情報システム部門でも慎重に検討された。
「今回システムを導入するにあたり、日本の本部と相談しました。その結果、現地に最適なものを利用するということで、最終的に、『kintone』を導入することになりました。」(廣松氏)
今後の展望お客様に最高のサービスを届けたい
中国に進出して3年になるアートネイチャー。「kintone」でシステム化に成功した顧客情報を足掛かりに、今後は、品質の高いアフターサービスを仕組み化することを目指しているという。
「例えば『一ヶ月後に必ずお客様に電話をして、使用状況を確認する』といったアフターサービスや、『新製品発売やプロモーションのご案内』などの積極的なアプローチを体系的に行いたいと思っています。それができれば、全てのお店で平均したサービスがお客様に提供できます。当社は、中国で事業を開始して、今年の4月で3年になりました。中国で成功していくためには、最高のサービスをお客様に提供することが非常に重要です。今後『kintone』を最大限に活用して、お客様に最高のサービスを提供し、中国での事業を進めていきたいと思っています。」(廣松氏) (2014年3月取材)