會澤高圧コンクリート
- 【業務内容】
- プレキャスト/プレストレストコンクリート事業、ΣBase事業(プレキャスト住宅基礎) 他
- 【利用用途】
- 販売・請求管理、オペレーション管理
會澤高圧コンクリート株式会社は、1935年に北海道静内町で創業し現在88年目を迎える総合コンクリートメーカーだ。国内に20事業所、12製品工場、11生コン工場、6つの海外拠点・ネットワークを持ち、社員数は640名にのぼる。そんな會澤高圧コンクリートで働く畑野 奈美氏は、現在一児の子育てをしながらプロジェクトリーダーとしてチームを牽引している。
畑野氏は今から8年前にkintoneと出会い、様々な業務改善の取り組みを実施。苦悩した末、その取り組みは全社展開へと広がりをみせている。今回はその8年間の軌跡を畑野氏に語っていただいた。
2012年に畑野氏が担当になったのは、大手ハウスメーカー向けにプレキャスト住宅基礎を製造・販売するプロジェクト。開発期間に3年もかけた期待の新規事業だった。新規事業へのモチベーションは高かったものの、割り当てられる人手は少なく、いざ運用が始まってみると図面設計と運用・請求関係などのオペレーションまで一連の業務をほぼ一人でこなさなければならない状況だった。目の前に山積するタスクを前に「とにかく気合と根性でやるしかなかった」と畑野氏は当時の状況を振り返る。
「社内の情報共有は基本的にExcelファイル、メール、電話を使ったコミュニケーションでした。業務の中心であるCADを使った設計のほか、予実管理、見積もりや請求書の作成、在庫管理、その他社内からの問い合わせ対応など、ひと通りの業務をほぼ一人でこなしていました。もちろん基本の勤務時間では終わるはずもなく、残業が続いていましたが、それでも気合と根性でなんとか乗り切っていました。しかしある時、とうとう体力も気力も限界を迎えてしまったのです」(畑野氏)
2014年のある日、上司が「kintoneっていう面白そうなツールがあるらしいよ」と薦めてきたことをきっかけに、畑野氏はkintoneの無料試用を開始。新システムに対する現場からの拒否反応や失敗への不安を抱えつつも「現状をなんとか改善しなければ。とにかくやってみよう」という気持ちでkintoneを使い始めた。
畑野氏の試行錯誤の甲斐もあり、kintone導入から約1ヶ月後には他部門のメンバーにもアプリを使ってもらえるようになったという。既存のExcelファイルをkintoneに読み込んでアプリ化するだけで常に最新情報を確認できるようになったため、社内からの電話、メールでの問い合わせが激減したほか、資料作成に費やしていた時間も大幅削減につながった。
「今までExcelで作っていた資料、電話やメールで逐一確認する必要があった情報など、本業以外のほとんどの仕事をkintoneアプリに載せ換えることに成功しました。バラバラだったExcelファイルの管理、電話・メールでの確認、対応が半分以下に減り、ひとまず目先の問題だった業務フローの改善は成功しました」
kintoneを導入したことで、資料作成の時間や問い合わせ対応時間の大幅削減に成功した畑野氏。しかしその頃から担当する物件数が急増し、いよいよ一人で対応するのは物理的に不可能という状況になってきた。そこで畑野氏はプレキャスト住宅基礎プロジェクトを手伝ってくれる仲間を探すため、勉強会を開いたり会議での呼びかけを行ったり、時には直接声を掛けて勧誘するなど地道なリクルーティング活動を始める。しかしなかなか思うような成果は上がらなかった。
「『CAD(設計用ツール)なんて使ったことないから無理』『こっちの仕事も手伝ってもらえるんだよね?』と芳しくない返答ばかり。皆それぞれの業務で手一杯のため、当然の結果でした。なかなか人手が増えない状況に時には落ち込む事もありましが、私は大学時代からこの業界の仕事に関心を抱いており、今の仕事が好きだからこそどうしても諦めたくないという気持ちがありました。そうして考え抜いた結果『 “すき間時間”わたしに下さい大作戦』を思いついたのです」
“すき間時間”というのは、例えば営業事務のメンバーは午前中や夕方の時間は忙しいが、午後に少し手が空く時間がある。経理メンバーは、月末月初は忙しいが、月の中頃は少し余裕がある、といったように「コア業務のすき間時間」に着目し、 空いた時間に業務を手伝ってもらうという作戦である。畑野氏のこの提案に応えてくれたのが、札幌支店の本橋顧問だ。「すき間時間程度なら、北見にいる営業事務の女性に協力してもらえるかもしれない」と、北見支店の石澤顧問に掛け合い、一人目の協力者と畑野氏を引き合わせてくれた。
「まさか離れた拠点、異なる部署の人の協力を得られるとは思いませんでした。これは社内でも初めてのケースだったと思います。紹介していただいた営業事務の女性はとても優秀な方で、得意分野である請求関係の業務をお願いしたら私の何倍も早く作業をこなしてくれました。ある日その方に『CADを使って少しだけ設計してみませんか?』と設計業務の一部を託してみたところ『私、この業務好きです 』と言っていただけたんです。触れたことのない業務にもチャレンジしてもらえたことや、彼女の新たな才能を見出せたことがとっても嬉しかったですね」
“すき間時間”わたしに下さい大作戦が功を奏し、徐々に畑野氏の仕事を手伝ってくれるメンバーが増え、担当する物件数も右肩上がりに増えていった。ようやくチームとして動き出してきたところで、畑野氏は再び課題に直面する。
「チームメンバーは全国各地に散らばっており、在宅勤務中心のメンバーも少なくありません。すると、各メンバーの手が空いている状況が正確に把握できないという問題が浮かび上がってきました。本当は手が空いているのに私が指示を出すまで待ち時間が発生している、という事が起きていたのです。せっかくすき間時間を貰っているのだから、最大限に活かせる方法は無いかと考えた結果、思いついたのが『お仕事ビュッフェ』です」
畑野氏は、手伝って欲しいタスクをすべてkintoneアプリに登録し、すき間時間の空き具合や得意分野によって好きなようにお仕事をピックアップしてもらう「お仕事ビュッフェ」形式を考案。こうすることで畑野氏はメンバーにタスクを割り振る手間を削減し、他のメンバーも指示を待たず自分の状況に合うタスクを選んで担当できるようになったのだ。
これらの取り組みにより、2018年、プレキャスト住宅基礎プロジェクトは事業へと成長した。始動直後はたった一人で実業務を担当していた畑野氏も、現在は10名のメンバーと一緒に仕事をしている。最もネックだった月の残業時間は、80時間/月からほぼ0時間/月まで削減成功。2020年には自身の産休・育休のため1年間の休暇を取得したが、その時にはすでに人員が減っても業務が回る環境が出来上がっていたので、問題なく事業が進んでいったという。
「“すき間時間”わたしに下さい大作戦」や「お仕事ビュッフェ」などユニークな取り組みで業務改革を実現してきた畑野氏。現在はその取り組みが社内的に注目を集め、kintone hiveでの発表は社長の目にも留まったという。
すでに十分な成果を上げてきた畑野氏だが、今後の展望についても意欲を見せる。
「いずれは自社だけでなく、運送会社や他社の工場など、お付き合いのある企業ともkintoneのスペースやアプリで情報共有していきたいと考えています。拠点や部署を越えて協力しあえることの価値が分かったからこそ、全社的に助け合える、良いものはシェアできるような仕組みづくりをしていきたいと強く感じるようになりました」
自らの手で改革を推し進めてきた畑野氏だからこそ言える、非常に力強い言葉だ。新たな困難を前にしても、きっと諦めずにチャレンジを続けていくだろう。
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