愛知県庁 様の導入事例

愛知県庁

【業務内容】
自治体業務
【利用用途】
助成金申請システム基盤
  • 飲食店への補助金給付業務の仕組みをわずか2週間で構築
  • 20,000件を超える補助金申請と数百人のスタッフの情報共有を円滑にするkintone

新型コロナウイルス感染症の拡大を可能な限り防ぐべく、時短要請に応じた飲食店を中心とした事業者に対して協力金を支払う取り組みが全国で行われており、愛知県でも感染防止対策協力金として飲食店への給付を行っている。給付に際し、事業者からの申請をもとに事務局での審査、協力金の振込まで一連の業務を行っており、電子申請から審査状況の管理、審査ステータスの開示、振込データの生成など各種情報を管理するための基盤としてサイボウズのkintoneが採用されている。その経緯について、経済産業局 産業部 産業振興課 次世代産業室 伊藤 雄亮氏、および同局中小企業部 商業流通課 宮原 佑太氏にお話を伺った。

【課題】当初に比べて5~6倍に膨らむ補助金申請件数にExcelでは対処できない

愛知県における産業振興を担う経済産業局の取り組み

日本のほぼ中央に位置し、大阪府に次いで全国第4位の人口規模を誇る愛知県。県庁所在地の名古屋を中心とした中京大都市圏を形成しており、全国有数の工業県として自動車など輸送機械を中心に製造業の比率が高い地域だ。名古屋城や豊国神社、桶狭間古戦場など数多くの武将が活躍した舞台として、著名な観光資源も豊富に有している。

そんな愛知県において、商工業の振興や産業科学の推進、企業立地の支援などの業務を行っているのが経済産業局だ。産業振興に向けた企画立案をはじめ自動車産業や地場産業の振興などを行う産業部と中小企業支援や市街地活性化などを行う中小企業部に分かれており、航空宇宙産業やロボット産業、健康長寿産業など次世代産業の育成やロボットの国際大会の推進、スタートアップ育成など、商工業の振興に向けたさまざまな活動を行っている。

飲食店への時短要請、そのための協力金給付に関する業務基盤が必要に

世界的に感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症への対策として、政府では緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を発令し、その都度飲食店に対する時短営業要請を行ってきた。時短営業要請に応じる飲食店に対しては、各自治体から協力金が給付される。愛知県でも、時短営業要請に応じた飲食店への感染防止対策協力金の給付業務を円滑に実施するため、県庁内でプロジェクトチームを結成。経済産業局を中心に体制づくりを進めてきた。

給付業務を開始した2020年5月当初は、申請者から郵送で必要書類をいただき、それらを市町村で分担して審査したうえで、市町村が銀行口座に協力金を支払う流れで給付業務を行ってきました。情報はExcelを中心に管理しながら給付業務を行っていました」と宮原氏は当時を振り返る。
当初は県と市町村で分担して申請を受け付けており、県の事務局で受け持つ1,500件ほどの申請数であればExcelでの管理でも運用が可能だったという。しかし、その後県内全ての申請を県の事務局で受け付ける体制へ切り替わることになり、従来のExcel管理では対応が難しいと判断。「県の事務局で全て対応する場合、20,000件を超える申請件数になることが見えていました。Excelではそこまで膨大な情報は管理しきれませんし、情報共有も正直難しい。事務局で審査を行う部隊はもちろん、相談を受け付ける窓口やコールセンターなど、複数のセクションで円滑に情報共有できる仕組みが求められたのです」と伊藤氏は語る。

経済産業局 産業部 産業振興課 次世代産業室 伊藤 雄亮氏

【選定】給付業務での活用実績と短期間での構築が可能なツールとしてkintoneが最適

わずか2週間で台帳管理していたExcelからの脱却を目指す

Excelに代わる新たな基盤が必要だったものの、国から指定された期日まではわずか数週間ほどしか残されていなかったという。そこで他の自治体での取り組み実績を踏まえたうえで速やかに事業者選定を行い、Excelで行っていた台帳管理を刷新することになったのだ。「株式会社セントラルソフトサービス(以下、CSS)の持つ実績を特に評価し、選定後にはすぐに環境構築を始めてもらいました。まずは、20,000件を超える情報を扱える台帳管理としてのデータベースを整備し、数百人規模のスタッフで情報共有が円滑にできる環境を整備することにしたのです」と伊藤氏。

そこで活用したのが、他の自治体で給付業務の稼働実績があったサイボウズのkintoneだった。実際に構築を請け負ったCSS内部でも複数のソリューションを検討したものの、構築までのリードタイムや社内的な実績、サイボウズとの協力体制も加味したうえでkintoneを選択。Excelで行っていた台帳管理をkintoneに移行し、さらに協力金支払いに必要な振込データの自動作成までのアプリを短期間のうちに完成させることに成功する。

電子申請も含めて新たな入札、kintoneが業務基盤として再び採用される

その後、協力金の給付を継続していくことになるが、年度が替わるタイミングで期間を確保し改めて中期的な利用を見据えた調達要件にてプロポーサル方式での調達を実施することに。このタイミングでは、従来の台帳管理含めた申請システムとともに電子申請が実施できる環境も要件に加わり、協力金の審査体制やコールセンター業務まで全体の業務請負も含めて選定を実施。そこで改めて事業者が決定し、システム面はCSSに構築を依頼すること、ツールも引き続きkintoneを採用することとなった。「今回の提案では、システムはもちろん、業務に必要な人材確保と体制運営まで含めて応札していただきました。ツールと人員体制の柔軟性などを評価した結果、給付業務を円滑に進められると判断しました」と宮原氏。

経済産業局 中小企業部 商業流通課 宮原 佑太氏

【効果】給付業務に必要な機能をkintoneにて実装、使い勝手の高さが魅力に

事業者からの電子申請から振込データ作成まで、一連の流れをアプリ化

現在は、kintone及び各種プラグインを活用して給付業務の基盤が整備されており、本庁の関係者や審査を行う事務局スタッフ、相談窓口スタッフ、コールセンターのオペレーター含め、500名ほどがkintoneを活用して情報共有を行っている。基本的な仕組みとしては、申請してきた事業者の詳細な情報が管理された台帳アプリを中心に審査状況のステータスが管理され、コールセンターへの架電履歴や窓口での対応状況を記録するアプリなどと連携しながら、事業者を中心とした情報が一元管理できるようになっている。なお、審査状況は、kintone連携サービスの「kViewer」を用いて事業者ごとに用意されているマイページにて公開している。

<台帳管理アプリの一覧から各申請の審査状況ステータスがすぐわかる>

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具体的には、kintone連携サービスの「フォームブリッジ」で作成されたWebフォームから事業者が申請を行うことでkintoneにレコードが登録される。そこから事務局側で審査を行い、内部的な承認フローを経て、審査が通った段階で振込データを別アプリにて作成、CSVにて銀行側に振込データを送付することで給付が必要な事業者に協力金が振り込まれる流れだ。全体の進捗状況や統計情報を作成する際には、kintone連携サービスの「krewData」を用いてバッチ処理にて集計を行い、日々の作業件数や段階別の支給額など事務所側で確認したい情報はkintone連携サービスの「krewDashboard」にて分かりやすく可視化している。特にkrewDataに関しては、大規模案件になると欠かすことのできないkintone内のデータを集計するツールとして、開発パートナーからの評価も高い。

<全体の申請件数や審査状況をkrewDashboardで見える化(画像はイメージ)>

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さらに、申請に関する窓口サポートを希望する場合の予約管理の仕組みを用意している。実際の窓口でのやり取りを記録することで台帳管理アプリと連動、コールセンターのオペレーターでも窓口での対応状況が把握できることで、事業者に対して一貫性のある電話対応が可能になっている。
台帳内では、過去の申請状況が事業者ごとに把握できるようになっています。過去の払込実績を見ることで、審査する際のスピードアップにも役立っています」と伊藤氏。なお、申請時には愛知県独自で定めた“ニューあいちスタンダード認証店”や“安全・安心宣言施設”などの申請状況を入力してもらい、県が持つデータベースと突合することで給付額の計算が正しいかどうか確認できるようになっている。

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複数セクションの情報連携を実現、事務局内部の工数削減に大きく寄与

kintoneにて環境を整備したことで、窓口やコールセンターなど複数のセクションが並行稼働しているなかでも連携が容易になり、個別に確認する手間が削減されるなど事務局内部の工数削減につながっていると評価する。「事務局は県庁とは違う出先機関に設置されていますが、kintoneの画面を見るだけで県庁との情報連携も容易です。物理的に離れた場所でも同じ情報が共有できるのは大きな魅力です」と伊藤氏。また、情報が一元管理できるようになったことで二重入力の防止につながったり、過去の審査情報を見て判断がぶれなくなるなど、情報が蓄積できるメリットも大きいという。「20,000件を超える膨大な量の申請が来ると、過去の申請書を探して確認するだけでも非常に手間がかかりますし、申請書を保管する場所も確保しなければなりません。kintoneであれば物理的な書類の保管場所も不要ですし、審査スピードの観点からもメリットが多い」と宮原氏は評価する。

<県の持つデータベースと突合し、kintoneで情報を一元管理できる>

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kintoneについては、インターフェースが分かりやすい点も大きな魅力だという。「感染状況に応じて協力金を支給するという性格上、現時点で1年以上にわたって業務を続けているため、内部スタッフが入れ替わることになります。そのため、とっつきやすく直感的で使いやすいことは重要です。電子申請する事業者の方にとっても使いやすいのではと思っています」と伊藤氏。
また、運用する中で審査を行うメンバーから項目追加などの要望も多く寄せられるが、細かい要望に対して素早く改修できる点も大きいという。「運用していく中では、最初に想定していたフォーマット以上にいろいろな要望が出てきますが、CSSさんには柔軟且つ即座に対応いただけています。すぐに改修・反映ができるので、業務も支障なく進められています」と宮原氏は評価する。

大規模な案件に際しての候補として期待、DX推進のツールとしての可能性も

現状の給付業務に関してはすでに必要な機能をkintoneで実装できているため、引き続き随時改善をしながら運用を続けていく予定だ。「次の活用シーンについて、まだ具体的に想定できていませんが、現状でも申請いただいた多くの事業者の方に対する円滑な業務基盤となっていることはリアルタイムに示していただけています。今後同様に多くの方に向けた大規模な業務が発生するようなことがあれば、kintoneが候補に挙がりうると思います」と今後の可能性について宮原氏に語っていただいた。(2022年2月取材)

【この事例の販売パートナー】
株式会社セントラルソフトサービス

TEL:0564-59-3221
お問合せ窓口:https://www.css-snet.co.jp/contact/

愛知県岡崎市に拠点を構え、地域に密着した40年の実績を誇る老舗ソフトウェアハウスです。
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